剣士レクトの特訓と魔法の剣の製作
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それから数日は冒険と休暇を交互に作ってカーリアを極力、剣士の技術と戦士としての覚悟を身に付ける事に、集中するようにしてやった。少年剣士レクトが宣言した通り、彼の訓練はかなり厳しいものだったらしい。カムイやエウラ達も、カーリアの訓練の邪魔にならない程度に参加していたが、彼らでさえその手荒い訓練──木剣での戦闘訓練など──の厳しさ、レクトの強さに驚いたようだ。
「さすがにあの若さで名前が知れ渡るくらいの冒険者って感じですね。俺なんかまるで相手になりませんでしたよ」
カムイは首と腕にちょっとした痣を拵えていた。エウラもレクトには苦戦したらしい。
カーリアも女だからと手加減はされない。防具を身に着けていたとしても、鋭く重い一撃を受けて少女も体中に痣を作っているようだ。──もちろん確認した訳ではないが。
「どうだ、カーリア。剣士の訓練は」
「べ、べつに。大丈夫です──!」
彼女なりの強がりだったのだろう。数日後にレクトが冒険に行く前に鍛冶場に来て(作ってやった牙象王の籠手を身に着け)、何故カーリアを剣士として鍛えるのかと尋ねてきた。
「正直、彼女は剣士には向いていないと思います。怪我を負う覚悟などは身についてきましたが、決定的に筋力が無い。彼女は魔法が得意らしいので、そちらに転向すべきではないですか?」
少年の意見に賛成する言葉を口にした後に、俺はこう言った。
「確かに彼女の才能を考えれば剣士より魔法使いだろう。しかし彼女が剣士としての道を目指したいという気持ちがあるのなら、それを尊重してやりたいとも思う──それに、俺には少し考えもあってね」
少年は納得していない様子だったが「わかりました」と受け入れてくれ、そのまま冒険へと向かって行く。
俺は依頼を受けた仕事を済ませると、新しい剣を作る為の準備を始めた……
大量の精霊石と鉄鉱石などを購入し、まずはそれらを錬成して精霊結晶を作り出す。鉱石類は延べ棒に作り変える。
これらを使って作るのは、魔法に親和性の高い剣だ。いわばユナに作ってやった腕輪に掛けられた、「四大精霊の加護」に似た性能を持つ「魔法の剣」というところだ。──ただ、これを造るのは簡単な事では無い。
なにしろ新しい技術分野の開拓を意味するものだからだ。今までの魔法剣士は「魔法も使える剣士」でしかなかったが、俺がカーリアになって欲しいのは「魔剣士」とでも言うべき、新しい職種なのである。
この武器はその為の触媒ともなる剣であるのだ。
俺は大量の金属の延べ棒と精霊結晶などを前に、新たなる錬金術の道を模索しに、実験という長い旅に出た。




