カーリア、剣士の訓練を受ける
午後になり冒険から帰って来た旅団の面々。レーチェやリーファが怪我をしたと聞いたが、すでに傷も回復魔法で消え、二人は無事だと言う。
「鱗族の戦士、結構手強いですわね。鋭い槍捌きでしたわ」
「あの固体は『蜥蜴族の王』ですよ! 強いに決まっているじゃないですか!」
レーチェの言葉に大きな声を上げたのはユナであった、まさか少女はレーチェが知らずに戦っていたとは思わなかったのだ。
「あ、あら、そうでしたの。『王』と付くから王冠でも被っているのかと思っていたものですから、──でも私達の敵ではありませんわね」
この女……槍で危うく脇腹を貫かれそうになったというのに、派手に吹かしやがる。
俺は呆れ半分で彼女の言葉を受け流し、「ともかく無事で良かった」とリーファにも声を掛け、肝心のカーリアを呼んで今日はどうだったかを尋ねた。
「うん……後方からなら敵の動きや仲間の動きが良く分かるけど。──魔法で敵を攻撃するのは大分コツが分かってきたと思う」
「そうか、なら良かった」
俺は椅子にどっかりと腰掛けると、カーリアに剣士としての基礎を教えてくれる講師を招いたと言い、これからやって来るから覚悟をしておけと告げる。
「か、覚悟……?」
少女は不安そうに言うが、探索に行く事はとても厳しいものだと言って、それに打ち勝つには自身の弱さを克服する事からだと彼女を励ます。
しばらくすると、レクトが革の胸当てや籠手を身に着けてやって来た。俺はカーリアを紹介してから旅団の面々を紹介していった。
「この少年は『蒼髪の天女旅団』の剣士レクトだ。今日からしばらくの間カーリアの剣の先生として来て貰う。では皆は、彼を旅団宿舎まで案内してくれ」
そう言うとカムイと、その馴染みの面子が声を上げた。
「え!『蒼髪の天女旅団』のレクトって、結構前から耳にする若手の有望株ですよ⁉ いつの間にそんな人物と……?」
「彼は籠手を作って欲しいと仕事を依頼して来たんだよ。せっかく彼が時間を作って講師を引き受けてくれたんだ、お前らも彼から盗めるものを全て盗んで来い」
そう声を掛けて仲間達を送り出すと、まずは溜まっていた鍛冶仕事を片づける事にする。




