魔法戦士カーリアの受難
午後になると初仕事から帰って来たカーリアたち四名。
話を聞くと、どうやら初戦の「沼大蛇」にカーリアの剣による攻撃は当たらず。次の「悪鬼猿」の数匹の群れには、何とか一体の敵を斬り付け倒したが、彼女は二体の悪鬼猿に挟まれて数回の攻撃を受ける羽目になったらしい。
三戦目の「甲殻蜘蛛」には少女の剣は、硬い甲殻に阻まれて損害を与える事はできなかった。カムイは「攻撃魔法を!」と声を掛け、カーリアは炎の弾を数発撃ち出して攻撃すると、これを撃破したという。
「う──ん、まだ戦い慣れていないせいもあると思いますが、生き物を殺す事に躊躇いがあるんじゃないかな」
そう小声で俺に話すカムイ。
カーリアは冒険に出る前から緊張していたが、ここはゆっくりと慣らしていくしかないだろうとカムイに言って、カーリアに初めての冒険はどうだったかと尋ねる。
「……ごめんなさい、全然思ったようにできなかった……」
革鎧を身に着け、戦士風の格好をした彼女が意気消沈して言うので、俺は少し考えた後、彼女にこう言った。
「まずは仲間の戦い方を見て学ぶか、訓練をし直すかだが──、生き物を殺す事に抵抗があるのはここに居る皆が同じだぞ。それでもやらなければ自分や、あるいは仲間がやられるから戦うんだ。覚悟を持て」
やや厳しい口調で言うと少女は項垂れて、「はい」と元気なく答える。
「もしくは剣をきっぱりと諦めて、魔法使いに専念するかだな。俺から見てもカーリアは魔法使いの方が合っていると思うし」
カーリアは迷っているようだった。自分のやりたい事か、はたまた自分の活躍が仲間の力になる事のどちらを選ぶべきか、──彼女は決断しかねている様子だ。
「分かった、こうしよう。当分は仲間の後方で魔法使いとして援護をしながら、前衛の戦い方を学べ。その間も剣の訓練と魔法の訓練も同時にやってもらう。それでも半年以内に戦士として使えないようであれば、戦士の道は諦めてもらう」
彼女には攻撃する覚悟もそうだが、怪我を負う覚悟も足りていないのだ。今まで街の中でぬくぬくと過ごしていた少女が、少し身体を鍛えたところで、命を奪い合う戦いを当たり前の様に、こなせる訳では無い。俺は改めてその事を思い知らされた。
カーリアにはもっと、剣の技術と覚悟を学べる相手が必要なのかも知れない。エウラやカムイの様な若手ではなく、もっと経験を積んできた(死線を潜り抜けて来た様な)猛者の指導が必要なのだと思われた。




