旅団員推薦状の合否
カーリアの父親アザビは娘を都市管理局に連れて行き、旅団の推薦状を貰えるか試験を受けさせる事にした。俺は彼女がもう、その資格を獲得できると考え約束の日より一年以上も早いが、試験を受けるよう勧めたのだ。
カーリアは実に真面目に直向きに、毎日の訓練に取り組んでおり、背丈こそそれほど変わってはいなかったが、筋力や体力、魔力量など全ての面で基準を越えていると判断できた。
「大丈夫でしょうか、少し心配ですね」
ユナが鍛冶場のテーブル席に座ってそう言う。──彼女とリーファ、カムイの三人は今日を(冒険に出ない)休みの日として、宿舎の片付けや鍛冶場の手伝いをしてくれているのだ。
「いつも通りにやれば問題は無い。それに旅団員の推薦状なんて形式だけの物で、そんな物を取ろうとする奴は中央都市に住むボンボンくらいのものだぞ。厳しい基準を設定している訳でも無いんだ、大丈夫だよ」
彼女は「確かに」と納得した様子だ。彼女もそんな物を取ろうと思った事は一度もあるまい。むしろ管理局が自分の力を誇示したいが為に、「旅団員推薦状」などという馬鹿馬鹿しい物を作ったのだとさえ思える。
昼前にカーリアは鍛冶場にやって来た。彼女は試験を受けた感想を「こんなものか」と言うに留めた。うちの旅団でやった戦闘訓練や基礎訓練の方が厳しかったと言い、試験は楽勝だと応えたが、合否は二日後に管理局まで取りに来いと言われたのだそうだ。
「もったい付けやがって。大体、管理局の連中が冒険や旅団の何を知っていると言うんだ? 二日後に取りに来い? あいつら、歩くのも億劫なほどに体力が無いんじゃないだろうな」
俺が悪態を吐くと「まぁまぁ」とユナが落ち着くように言う。
「これでカーリアさんも『黒き錬金鍛冶の旅団』の仲間入りですね」
「いや? うちで雇うとは言ってないが」
「ぇええええぇっ⁉」
ユナとカーリアが同時に叫んだ。俺が冗談だと言うと彼女らは、ほっとしたり怒ったりしてそれぞれの感情を露にする。
そして二日後にカーリアは父親と共に管理局に向かい、旅団員推薦状を受け取って鍛冶場にやって来たのだ。
「娘をよろしくお願いします」
と頭を下げるアザビ。
俺は「承りました」と応えて、カーリアから推薦状と旅団員登録書を受け取り、それを管理局に今日中に届けに行く事を約束したのである。
やっとカーリアが正式加入。
しかし彼女の苦難はこれからだった……




