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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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新たな冒険へ

 しらせはすぐに届けられた。


 神々が働き掛けたお陰で、神殿や管理局が持っている神結晶が集められ、新たな転移門が開通したのだ。


 転移門が開通する前日に旅団に報せがあったので、俺は旅団長としてリトキスにレオシェルド、さらにアウシェーヴィアとキャスティを主要な調査隊に任じ。

 ダリアとラピスとフレジア、それにエウラとカムイにユナとメイにも、何かあった時の補助サポート役として、転移門の前で待機してもらう事にした。


「できれば一緒に調査に行きたいんですが、まあ仕方ないですね」

 などとカムイは言い、ユナとメイの二人は団長の判断に従うと言った。

 彼女らもだいぶ、評価の高い旅団の冒険者としての自覚が芽生えてきたようだ。



 * * * * *



 転移門が開放される当日。管理局からやって来たのは、数名の職員とヴォージェスだった。


「よぉ、オーディスワイア。調子はどうだ?」

「悪くないですね。黒獅子と呼ばれたヴォージェスさんが後方に控えていると思えば、気楽なもんですよ」

 俺がそう答えると、彼は豪快に笑ってみせた。

「支援は任せろ。全面的に管理局が後援バックアップするし、偵察機を何台も飛ばして、管理局の人間が常に監視する体制を取らせる。危険になったらすぐに撤退できるようにな」

 他の旅団にも声を掛けるつもりだと話すヴォージェス。


「だがまずはお前達だ。"金色こんじき狼の三勇士"と呼ばれていたその力、思う存分示してもらおう」

「そう呼ばれていたのはずっと前の話ですがね」

 玄関先でそんな話をしていた俺の背後に、レーチェが装備を整えて立っていた。階段からアウシェーヴィアとキャスティも降りて来る。


 宿舎の庭に入って来たのはリゼミラとアディーディンク。二人ともすでに冒険に出る準備をしており、気合いも十分といった雰囲気を漂わせていた。


「準備万端といったところか」

 レオシェルドは朝の軽い運動をしてから、さっさと一人で外に出て行ってしまう。あの冷静沈着な男も、血が騒いでいるのだろうか。

 ヴォージェスは「先に行っている」と言い残すと、職員らと共に拠点から出て行った。


「というか準備早過ぎ。俺も準備して行くわ。先に転移門広場に向かっていてくれ」

 そう言うと俺は自室に戻って装備を身に着ける事にした。


 魔法の大剣や防具を身に着けて廊下に出ると、玄関の前でライムと子猫達が待っていた。

「おう、どした?」

 玄関から表に出ようとすると、子猫達は「ニャァニャァ」と声を掛けてくる。

 何かを感じ取っていたらしい猫達を置いて庭に出ると、そこでは庭で訓練する旅団員達が待っていて、「団長、気をつけて」と見送ってくれた。


 ドアを閉めた時、ドアの隙間から白い影がするりと抜け出て来た。それは白猫のライムだった。


「おいおい、どうした。大丈夫だから家の中に戻れ」

 そう言ってドアを開けたが、彼女は宿舎の中に戻ろうとしない。

 俺は仕方なしに歩き出し、拠点の玄関を開けて外に出た。足下を見ると白猫の姿はなく、ドアを閉めて門の上を見上げると、そこにライムが座っていた。

「見送ってくれるのか」

「ニャァ──」

 もしかするとライムは、俺が武装して出掛ける度に怪我をして帰って来るので、心配しているのかもしれない。


「はは……大丈夫だから、お前は宿舎で待っていろよ」

「ゥニャァ~~」

 どこか不安げな鳴き声で答えるライム。

 俺は彼女に手を振ると、大通りに向かって歩き出した。




 転移門広場は何やら騒々しかった。

 冒険者は自分の目的地に向かって転移門をくぐるはずが、何故か広場のある一角の周りに集まっていた。

 そこにあるのは新しく開いた転移門であり、そのそばには管理局の職員が偵察機や映像鏡面スクリーンなどを準備していた。


 そこへ俺が近づいて行くと、集まっていた冒険者達が道を開けてくれ、その中の何人かから、こんな声が聴かれた。


「三勇士だ……。"金色狼の三勇士"がそろったぞ」

 そうした周囲のざわめきを聴きながら、転移門の前に待っている仲間の所へ近づいて行く。


「待たせた」

 転移門の前でレーチェが微笑ほほえんだ。

 思えば彼女と冒険に出るのは初めてだ。

 その隣に立つ懐かしい人影。リゼミラとアディーディンク。レオシェルドにアウシェーヴィアとキャスティが待ちきれないといった様子で手を上げた。

 リトキスはいつもと変わらぬ落ち着いた様子で微笑んでいた。



「よし、行こう」

 転移門の前に立ち、俺達は新たな探索へ向かうのだ。

 フォロスハートの為に得られる物を求めて。


 俺が冒険者としてこのような仕事に抜擢ばってきされるとは。

 思えば神々によってずいぶんと翻弄ほんろうされてきた人生だった。たぶん、これからもそれは変わらないだろう。

 そういう運命だったとあきらめて、俺は転移門の光の中に足を踏み入れた。


 背後から喝采かっさいが聴こえる。その声が俺の背中を力強く押してくれる。

 今の俺には頼もしい仲間と、想いを通わせた大切な人が居る。

 どんな困難が待っていようと、彼女となら。

 そう思うだけで、不思議と俺の中に力がみなぎってくるのを感じた。




 転移門を潜り抜けた先で、レーチェが俺の手を握った。

 石の柱に囲まれた転移門の先に、懐かしい風景が見えていた。

 それは遠くてはっきりとは見えなかったが、どうやら高層建造物ビル群に似た物らしい。


「あれが……」


 レーチェがつぶやく。彼女は続く言葉を飲み込んだようだった。

 あまりに奇妙な物が乱立する光景に、仲間達は唖然として遠くを見つめていた。


「行こう」


 俺は覚悟を決め、青空の下にある灰色の高い建物に狙いをつけ、歩き出した。





     『錬金鍛冶師の冒険のその後』 ~ 完 ~

中途半端なところで終わったと感じるかもしれませんが、彼らの冒険(オーディスワイアにとっては再開)は続きます。

新たな展開を迎えたところで「冒険のその後」は終幕です。


長い間お付き合いくださった読者の皆様。ありがとうございました。

感想などいただけるとうれしいです。

本作に対するコメント(反省やらコンセプトやら)を活動報告にあげる予定ですので、そちらに目を通してもらえれば。お気に入りユーザ登録などもお気軽に。



また別の物語でお会いしましょう。

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