新たな冒険へ
報せはすぐに届けられた。
神々が働き掛けたお陰で、神殿や管理局が持っている神結晶が集められ、新たな転移門が開通したのだ。
転移門が開通する前日に旅団に報せがあったので、俺は旅団長としてリトキスにレオシェルド、さらにアウシェーヴィアとキャスティを主要な調査隊に任じ。
ダリアとラピスとフレジア、それにエウラとカムイにユナとメイにも、何かあった時の補助役として、転移門の前で待機してもらう事にした。
「できれば一緒に調査に行きたいんですが、まあ仕方ないですね」
などとカムイは言い、ユナとメイの二人は団長の判断に従うと言った。
彼女らもだいぶ、評価の高い旅団の冒険者としての自覚が芽生えてきたようだ。
* * * * *
転移門が開放される当日。管理局からやって来たのは、数名の職員とヴォージェスだった。
「よぉ、オーディスワイア。調子はどうだ?」
「悪くないですね。黒獅子と呼ばれたヴォージェスさんが後方に控えていると思えば、気楽なもんですよ」
俺がそう答えると、彼は豪快に笑ってみせた。
「支援は任せろ。全面的に管理局が後援するし、偵察機を何台も飛ばして、管理局の人間が常に監視する体制を取らせる。危険になったらすぐに撤退できるようにな」
他の旅団にも声を掛けるつもりだと話すヴォージェス。
「だがまずはお前達だ。"金色狼の三勇士"と呼ばれていたその力、思う存分示してもらおう」
「そう呼ばれていたのはずっと前の話ですがね」
玄関先でそんな話をしていた俺の背後に、レーチェが装備を整えて立っていた。階段からアウシェーヴィアとキャスティも降りて来る。
宿舎の庭に入って来たのはリゼミラとアディーディンク。二人ともすでに冒険に出る準備をしており、気合いも十分といった雰囲気を漂わせていた。
「準備万端といったところか」
レオシェルドは朝の軽い運動をしてから、さっさと一人で外に出て行ってしまう。あの冷静沈着な男も、血が騒いでいるのだろうか。
ヴォージェスは「先に行っている」と言い残すと、職員らと共に拠点から出て行った。
「というか準備早過ぎ。俺も準備して行くわ。先に転移門広場に向かっていてくれ」
そう言うと俺は自室に戻って装備を身に着ける事にした。
魔法の大剣や防具を身に着けて廊下に出ると、玄関の前でライムと子猫達が待っていた。
「おう、どした?」
玄関から表に出ようとすると、子猫達は「ニャァニャァ」と声を掛けてくる。
何かを感じ取っていたらしい猫達を置いて庭に出ると、そこでは庭で訓練する旅団員達が待っていて、「団長、気をつけて」と見送ってくれた。
ドアを閉めた時、ドアの隙間から白い影がするりと抜け出て来た。それは白猫のライムだった。
「おいおい、どうした。大丈夫だから家の中に戻れ」
そう言ってドアを開けたが、彼女は宿舎の中に戻ろうとしない。
俺は仕方なしに歩き出し、拠点の玄関を開けて外に出た。足下を見ると白猫の姿はなく、ドアを閉めて門の上を見上げると、そこにライムが座っていた。
「見送ってくれるのか」
「ニャァ──」
もしかするとライムは、俺が武装して出掛ける度に怪我をして帰って来るので、心配しているのかもしれない。
「はは……大丈夫だから、お前は宿舎で待っていろよ」
「ゥニャァ~~」
どこか不安げな鳴き声で答えるライム。
俺は彼女に手を振ると、大通りに向かって歩き出した。
転移門広場は何やら騒々しかった。
冒険者は自分の目的地に向かって転移門を潜るはずが、何故か広場のある一角の周りに集まっていた。
そこにあるのは新しく開いた転移門であり、その側には管理局の職員が偵察機や映像鏡面などを準備していた。
そこへ俺が近づいて行くと、集まっていた冒険者達が道を開けてくれ、その中の何人かから、こんな声が聴かれた。
「三勇士だ……。"金色狼の三勇士"がそろったぞ」
そうした周囲のざわめきを聴きながら、転移門の前に待っている仲間の所へ近づいて行く。
「待たせた」
転移門の前でレーチェが微笑んだ。
思えば彼女と冒険に出るのは初めてだ。
その隣に立つ懐かしい人影。リゼミラとアディーディンク。レオシェルドにアウシェーヴィアとキャスティが待ちきれないといった様子で手を上げた。
リトキスはいつもと変わらぬ落ち着いた様子で微笑んでいた。
「よし、行こう」
転移門の前に立ち、俺達は新たな探索へ向かうのだ。
フォロスハートの為に得られる物を求めて。
俺が冒険者としてこのような仕事に抜擢されるとは。
思えば神々によってずいぶんと翻弄されてきた人生だった。たぶん、これからもそれは変わらないだろう。
そういう運命だったと諦めて、俺は転移門の光の中に足を踏み入れた。
背後から喝采が聴こえる。その声が俺の背中を力強く押してくれる。
今の俺には頼もしい仲間と、想いを通わせた大切な人が居る。
どんな困難が待っていようと、彼女となら。
そう思うだけで、不思議と俺の中に力が漲ってくるのを感じた。
転移門を潜り抜けた先で、レーチェが俺の手を握った。
石の柱に囲まれた転移門の先に、懐かしい風景が見えていた。
それは遠くてはっきりとは見えなかったが、どうやら高層建造物群に似た物らしい。
「あれが……」
レーチェが呟く。彼女は続く言葉を飲み込んだようだった。
あまりに奇妙な物が乱立する光景に、仲間達は唖然として遠くを見つめていた。
「行こう」
俺は覚悟を決め、青空の下にある灰色の高い建物に狙いをつけ、歩き出した。
『錬金鍛冶師の冒険のその後』 ~ 完 ~
中途半端なところで終わったと感じるかもしれませんが、彼らの冒険(オーディスワイアにとっては再開)は続きます。
新たな展開を迎えたところで「冒険のその後」は終幕です。
長い間お付き合いくださった読者の皆様。ありがとうございました。
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また別の物語でお会いしましょう。




