レーチェの勘
玄関の段差に腰掛けていると、子猫達が体をこすりつけてきた。
「なんだなんだ、お前達……」
急に甘え出す子猫達に戸惑う。まるでそれが「魚卵を食わせろ」と訴えているように思えてきた。
子猫達の頭を撫でてやり、立ち上がって宿舎を後にしようとした。
ドアを開けると、そこにレーチェが待ち構えていた。
「おわっ、冒険に行ったんじゃなかったのか」
「少し気になる事がありまして。先ほどの話、新しい転移門には何がありますの?」
ちょっと険しい表情をしているレーチェ。どうやら俺の態度から違和感を覚えていたらしい。
「ああ、まあね。そこには俺が居た世界の建物があるらしくて」
「あなたが居た世界の……? それ、本当ですの」
「いや、同じ世界の物ではないという話だが、行ってみないと分からん」
「そうですの……。それにしても、その転移門の調査を何よりも優先するだなんて、きっと何か意味があるのでしょうね」
「まあなぁ……混沌の研究をしていた大地らしいから」
うっかりその言葉を口にしてしまった。
如何せんレーチェには隠し事をしておけない俺だった。
「混沌の──それ、重大な事のように思えますわ」
「神々もだからこそ、俺に直接依頼してきたんだろう」
「やはり神様からの指示でしたか」
転移門に関わる事なら、管理局か神からの依頼だと推測していたのだろう。レーチェでなければ管理局からの依頼だとしか考えないはずだ。
俺と神様の繋がりがあるなど、多くの人は知らない事だ。
「新しい転移門先で何が待っているかは分かりませんが、あなたと冒険に出られるというのは嬉しい事ですわ。それに、あなたの居た世界の物とは違うかもしれませんが、あなたがどのような世界に居たのか、少しでも知る事の出来る機会だと思うと、なんだかわくわくしますわね」
彼女の陽気な言葉に俺は笑った。
「ははは……そうか。だが危険な所かも分からんから、用心して行くようにしないとな。まずはその前に、今日の冒険をしっかりしてな」
「ええ、それでは行ってまいりますわ」
今度こそ彼女を送り出し、俺はその背中を見送った。
そうして空を見上げて深呼吸すると、鍛冶屋に向かって行った。
今度の冒険に備えて、いくつか道具を拵えておこうと考えながら……
日曜日に最終話を投稿します。




