決意と相談
「うっし」
義足を付けると気持ちが落ち着いてきた。
ラホルスとミーナヴァルズが示した事は、フォロスハートにとってはもちろん、それ以上にこの世界にとって変革を齎すような内容だった。
もし二柱の神が言っていた事が正しいとするなら、だが。
「混沌の発生源を特定できる……?」
仮にそれが判明したら、混沌を除去し、世界を取り戻す事が出来るのだろうか?
とてもそう簡単にはいかないと思うが、もしかすると「混沌研究都市」の調査で何かが見つかるなら……
「いや、待て。そもそもおかしいんだ。今回の大地の話は」
もし転移門が繋がったとして、混沌に対抗する技術を持っていたらしい都市から人が消えているのは何故だ? 食料が尽きたとかなら、死体が残されているだろう。もし死体が見つかっていたのなら、ラホルスがその事を説明しているはずだ。
そしてミーナヴァルズは都市には「混沌の魔物」が居るかもしれない、と言っていた。彼女の外部世界への視野は、四大神の中でも最も広いとされている。
何しろ焔日などの力を発現させているのは彼女なのだ。混沌の領域に最も接している彼女の報告には信憑性が感じられた。
だからこそ今回の調査というのは、今までの転移門とは違うのだ。
高層建造物を建てるほどの科学力を持っていた人々が住んでいた大地。しかも混沌の研究をしていたという。
さらには神騎兵でも倒した事のない巨大混沌蟲の核を調べていたとするなら、その大地に住む人々はあの巨大な怪物を討伐したという事だ。
そんな人々がその都市から姿を消して、どこへ行ったというのだろうか。
高い技術力を持つなら、例え都市が混沌の魔物に襲撃されても、撃退する方法があったと推測するのは容易い。
にも拘わらず、都市から人が居なくなるなど、考えられない事だ。
「行って確かめるしかないか……」
建物などに戦いの痕跡などがあれば、なんらかの襲撃者が居たという証明になる。
そうした事を調べるのもそうだが、混沌に関する技術力や解析力。そうした情報を手に入れる事も必要だ。
巨大混沌蟲を倒した兵器があれば、それを手本にして新たな武器を作り出す事も出来るようになるかもしれない。
俺は寝台から体を起こすと廊下に出ようとし、朝の決まり事をこなそうとドアノブに手を掛けた時には、俺は一つの決断を心に下していた。
朝の打ち合わせでその事を話す訳にはいかなかった。まだ管理局から発表されてもいない情報であるし、転移門が開くかどうかも確定していないからだ。
あくまで精神世界で二柱の神から聞いた話は、彼らが考える「可能性」の話だった。
だがそれでも、俺には話しておく相手が居た。レーチェとリゼミラとアディーディンクに声を掛けると、少し話をしようと言って応接室に呼び出した。
「なんなのさ急に。珍しいね」
自宅で朝食を食べて来たリゼミラ。彼女はすでに冒険に出る格好をしていた。カムイやレンネルと共に上級難度の転移門に付き添うと言った。
アディーディンクも久し振りに妻と冒険に出るらしく、昔とあまり代わり映えのない姿で椅子に座った。
「うん、これはまだ決まった事じゃないんだが、もしかすると近々、新しい転移門が開くかもしれない」
「へえ」
「どういう事ですの?」
三人はそれぞれ不思議そうな顔をして、互いの顔に視線を送っていた。
「あくまで未定の事だが、もし転移門が開いたら、俺がそこへ調査に向かわなければならなくなりそうだ」
そう説明するとリゼミラは体を前に乗り出して、真剣に聞く体勢に入った。
「そうなった時、何よりも優先して、その転移門で繋がった大地の調査をしなければならない。そこで、リゼミラとアディーディンクとレーチェには一緒に調査に行って欲しい」
「いいよ」と即座にリゼミラが答えると、アディーも頷いた。
「私もいいですわ」
レーチェも冒険に出る格好をしていたが、最近はもうあの螺旋髪ではなく、緩やかな波打つ金髪を下ろしただけの髪型だった。
「そうか。良かった」
「三勇士の再結成だね」
「レーチェ以外にも数名に加わってもらおうと考えている。だが、この話はまだするなよ」
そう念を押すと、三人がそれぞれの返事をしながら頷いた。
「楽しみだね、新しい転移門か」
「今回のはちょっと──というか、かなり特殊な大地だぞ。今までと同じように考えていたら危ないかもしれん。危険だと思ったらすぐに撤退するからな」
なんでそんな事まで分かるのか、といった顔をしている三人を冒険に送り出すと、誰も居なくなった玄関に座り込み、これからの事についてもう一度整理しようと考え込んだ。
残り2話。
金曜日に1話。日曜日に最終話を投稿します!




