神々の指令
残すところ(今回の話を含め)あと5話です。
今月中に最終話まで投稿できると思います。
夜になって寝台で横になると、俺はすぐに眠りに就いた。
眠ると意識が引き寄せられ、精神世界に入ったのを感じた。
横になっていたのは草原の上。
青々とした草の上から起き上がると、周囲を見回す。
そこにはいくつかの白い岩があり、横になっていた俺を囲むようにして配置されている。
一つの岩の上に小鳥が数羽乗っていて、俺が体を起こしても逃げようとしない。
白や青や黄や緑など、色とりどりの羽を持つ小鳥達が「キュロロロロ」「ピュ──ィ、ピュ──ィ」「チッチチチチ」と鳴き声を上げてこちらを窺っていた。
「神様は来てないのか」
白い岩の一つに腰掛けて小鳥に尋ねてみたが、彼らからは返事がない。
きょろきょろと辺りを見回したり、俺の動きに注意を払うくらいで、岩の上から動こうともしなかった。
「おいで」
と指を差し出すと、一羽の淡紅色羽を持った小鳥が指に飛び乗った。
まん丸な目をした明るい色の鳥は、首を傾げるような動きをしながら、俺の顔を見ているようだった。
指を近づけると小鳥は指先に小さな嘴をすりつけ、ちょんちょんと指を小突いてから白い岩の上に戻って行った。
「すまぬ。待たせたか」
横から声がしてそちらを向くと、火の女神ミーナヴァルズが立っていた。真紅の薄衣を身に着けた女神は、腕に金の腕輪を嵌め、小麦色の肌を見せつけるような切り込み入りの長いスカートを履いて現れた。
「というか、まだやつは来ておらぬのか」
「他の神様方も来るのですか?」
「まあ我とラホルスだけだが、今回の物事についてラホルスの力も借りたのでな。というのもそれは以前にも話した、変わった大地についての話なんじゃが」
そう女神が話し始めた時、一陣の風と共に大型の鳥が飛んで来て、白い岩の一つに着地した。
それは色鮮やかな七色の羽を身に纏う首の長い鳥で、見るからに神々しい姿をしていた。──間違いなく風の神ラホルスだ。
「やあ、遅れてすまない。いまのところは大丈夫のようだ」
大丈夫? いったいなんの事だろう、そう思っていると、女神が説明を始めた。
「異形の建造物が建っている大地について話したのを憶えているか?」
「ええ、うっすらと。ただその大地は離れて行ってしまったと聞いた覚えが」
「そうなんだ。ところが急に我々の認識可能領域に入って来てね。どうやら円形を描いて移動しているらしいんだ。まるでフォロスハートの周辺を大きく回転しているみたいにね」
風の神ラホルスは鳥の姿のまま喋っている。
「それでその建物が、どうやら君の──織田西歩が暮らしていた世界の建造物に、良く似ているようなんだ」
「え」
「じゃが、我らにはおまえの居た世界の物なのか、その確証が得られない。おまえの記憶の中にあった『びる』という建物に似ていると我は思うのじゃが、しかしそうなると……」
「俺の居た世界、地球も混沌に飲まれてしまった……と?」
「うむ」とミーナヴァルズは頷いたが、大きな鳥のラホルスは違う意見を持っているようだった。
「いや、私はそうは思わないな。確かにオーディスワイアの記憶の中にある建物との類似点はあるが、同じ建造物とは私には思えない。それにオーディスワイアの世界には"混沌"は存在していないはずだ」
「ええ、『混沌』という概念はありましたが、混沌というものが実在していた訳ではありません。──少なくとも自分の知る限りでは。……ところで」
俺は先ほどラホルス神が言っていた「いまのところは大丈夫のよう」とはなんの事かと尋ねた。
「ああ、それは今、私達が協力し合って、その大地との繋がりをなんとか維持している状態なんだ。転移門を繋げるには、こちらの力が及ぶ範囲になくてはならないからね。
それで管理局や神殿に働き掛けて、新しい神結晶を捻出させているところさ」
「転移門を開くには大きな神結晶が必要じゃが、今回は四大神が協力していくつかの神結晶を使い、相互補助をしながらなんとかあの大地に転移門を開こうとしておるのじゃ」
「なんでそんなにその大地に固執するんですか? その大地が俺の居た世界の断片だったとしても、フォロスハートに恩恵があるとは限りませんよ」
「それなんだ。私がその大地で発見した物が、オーディスワイアの居た世界とは違うと推測した理由なんだ」
ラホルスは片方の翼を力強く上げて、自分の主張を訴えるように宣言した。
「あの大地には、混沌の研究をしていたと思しき施設があるんだ」
第七章で出た異形の建造物の話。




