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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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研鑽の日々

 また鍛冶屋に依頼が入った。

 精霊魔女マシェナマーデァ旅団のミーシアから魔法の武器について聞いた、という冒険者が二人やって来て、魔法の武器造って欲しいと言ってきたのだ。

 その二人は風属性魔法の使い手で、一つの属性なら必要素材や価格が割安だと聞いて、「オーディス錬金鍛冶工房」に話を持って来たのだと語った。


「風属性の短剣を」

「風属性の槍を」

 そう言ってきた二人の要望を聞き、刃や柄に使う素材などを決め、強化する性能についても相談を重ね、それを書き留めた。

 必要素材や制作費を用意していたふたりは、どうやらシャルファーにある旅団の冒険者らしい。


 精霊魔女旅団の女冒険者と、別の旅団の男の冒険者である二人。この二人は旧知の仲らしく、昔から切磋琢磨せっさたくましてきたのだ。

 仲が悪い訳ではないが、どちらも相手に先を越されたくないと考え、素材や資金を掻き集めて来たようだった。

 この二人は魔法が得意だった為、魔法の武器を使ったミーシアから強く勧められたらしい。


一段ワンランク上の冒険者になれる」といった言葉を使って、ミーシアは二人に決断させたのだった。

「分かった。両方とも徒弟に任せるのでいいか?」

「できればオーディスワイアさんにお願いしたいんですが、高いんですよね?」

「それなりにな」

 そう言いながら壁に架かった制作費に関する一覧表を指し示す。


「それに単属性の武器なら徒弟のケベルでも十分な物が造れるぞ。失敗も少ないし。──もし失敗して素材を失っても、失った分の代金は支払わなくていいという活動キャンペーン中だから、お得だぞ」

 短剣を依頼してきた女の方は初めからケベルに頼むつもりだったようで、話はすぐに決まったが、槍を依頼した男の方は悩みながらも、せっかくだからと俺に魔法の槍を造って欲しいと訴えたのだった。


「分かった。それでは俺が槍を打つとしよう」

 まだ上級に成り立ての彼には高額と感じられる製作依頼費だったようで、決断にはかなりの思い切りが必要だったらしく、「お願いします」と言ってきた表情には鬼気迫るものが表れていた。



 素材を集めると俺とケベルはそれぞれの炉の前に座り、金属を打つところから始めた。

 二人の依頼人は旅団に頼んで碧銀鉄鋼クレリスアルムを用意してきていた。シャルファーの上級転移門から手に入る希少金属。延べ棒三本分の鉱石を集めるのも大変だったろう。

 男の方は二本は自力で集めていた鉱石を延べ棒にしたらしいが、もう一本は旅団長に頼んで譲ってもらったと話した。


 失敗を想定して、鍛冶屋に供給する分の延べ棒や素材を負担するのが常だ。失敗しなければその分が鍛冶屋に入る為、こちらも全力で鍛冶仕事に打ち込む事になる。

 槍の穂先は碧銀鉄鋼のみで造り、柄の部分は碧銀鉄鋼と黒銀鉄鋼グラズアルドの合金を使う。

 柄を作るにしては難しい注文だが、幸い錬金台での加工が可能な構成だ。


 柄の部分には穂先の部分との魔力回路の繋がりを持たせればいいだけで、魔法の武器としての効力は、刃の部分にだけ集中すればいい。

 こうして穂先の部分から造り始めたのだが、その様子を依頼主は見守りたいということなので、そばで観察されながらの作業となった。



 時間はそんなに掛からなかった。

 鍛造するのは槍の穂先だけなので、短剣とそれほど変わらない長さだ。ただ幅が広く、厚さも必要という依頼だったので、そこには注力した。出来上がった物を研いで見せると、若い男の冒険者は破顔はがんして何度もうなずいていた。

 柄の部分を作り、錬成強化をいくつか行うと、刃をおおう革の覆い(カバー)を作って全ての工程が無事に終了した。


「ありがとうございました!」


 冒険者の若者は終始にっこにこで帰って行った。

 ケベルの方も少し前に終わったらしく、依頼書の写しに書いた武装鑑定内容を見せてくれた。

「うん、いいじゃないか。これなら依頼主も喜んでいただろう」

「はい」

 ケベルも単属性の魔法の武器を造る自信になった様子だ。


 実際、他の鍛冶師では失敗も多いらしいから、ケベルはそこらの鍛冶師よりもかなり能力センスがいいと思う。

「これなら二属性武器も、ケベルに任せられそうだな」

 俺は徒弟の肩を叩き、後片づけに入った。

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