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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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平穏で忙しい

 その日から俺の日常は、いつも以上に忙しくなっていった。

 鍛冶仕事だけでも一日に数人が俺を指名して、難易度の高い錬成強化を求めたり、魔法の武器の作製を依頼してきたり。

 中には他の都市から来た錬金鍛冶師が、魔法の武器の造り方を教えて欲しいと言って来る事さえあった。


 そうした忙しさを抱えながらも、旅団長として様々な実務をこなしたり、仲間の訓練や相談に付き合ったりしながら、日々を過ごしていた。




「優先順位を決めましょう」

 執務室で事務作業をしている時にレーチェに相談すると、そう助言を受けた。

「旅団の事、鍛冶屋の事、管理局からの依頼、神騎兵シュルトヴァーレンの事、神殿からの依頼や神様からの頼み事。そういったものをいっぺんに片づけられる訳がありません」

「まあそうだが。だが神様や神殿の依頼でも、緊急性を有しない場合だってあるからな」

「それでしたら、緊急性を第一に考えるべきでしょう。──緊急性となると、フォロスハートの維持に問題が起こるような、そんな事でしょうか」


「そうだな。──後は、レーチェの事とかかな」

「それは後でも構いませんわ」

「俺にとっては、フォロスハートと同じくらい大切なものなんだ」

 そんな風に告げると彼女は片目を閉じ、まんざらでもないような顔をして頬を赤らめた。

「そう言っていただけるのは、素直に嬉しいのですが……」

 彼女は咳払せきばらいをして取りつくろって見せる。


「と、ともかく。片づけなければならない事でも、人に頼める事は人に頼み、あなたにしか出来ない事を優先して取り組む……。それが一番の解決策でしょう」

「俺にしか出来ない事、か────」

 やはり錬金鍛冶職人としての仕事だろうか。そこには鍛冶屋の事だけでなく、神騎兵の武装についてなど、多くの事柄に関する技術的な問題に関わってくるだろう。


 事務作業を終えると、俺はそのまま考え込んだ。

 もちろん現在の自分は、錬金鍛冶師としての仕事がある。

 けれどもフォロスハートの為に自分が出来る事は、他にもあるように思われた。


 地球で得た知識。そこには科学だけでなく、魔術の知識もあった。俺が向こうで得た魔術や錬金術の知識は未熟なものに過ぎないが、それらを応用すればもしかすると、フォロスハートを守る技術発展に繋がるかもしれない。

「う──ん」

 出来ればこちらの人々だけで新たな発明や技術開発をして欲しいが、そうも言ってられない部分もあるだろう。


 この混沌こんとんに囲まれた世界で生き続ける為に。

 神騎兵から頼まれた事もある。

 まずは彼ら"戦う者共"の為に取り組もうかと考えた。

「ちょっと管理局に行って来る」

 俺はそう言って立ち上がった。

 レーチェはうなずき、俺を送り出してくれた。

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