オントの来店
休日が過ぎ去って、俺は鍛冶屋に旅団の活動にと、再び慌ただしい日々に戻った。
フレイマの拠点を購入したという報告が届き、ユナ達もフレイマの旅団と協力して活動しているそうだ。
「朱き陽炎の旅団」の旅団長アブサウドからも手紙が届き、拠点の購入と、ユナとメイの活躍を聞けて良かったという報告を受けた。
鍛冶屋の仕事は忙しくなってきた。
魔法の武器の作製依頼が数件きて、単属性の魔法の剣はケベルにやらせ、複数の属性を付与する魔法の剣には、俺が作製するようにしてなんとか依頼に応える事が出来た。
そんなある日、片腕の冒険者オントが鍛冶屋にやって来た。
「おや、お久し振り。その後どうですか」
「ええ、改めて戦い方を見直して、小手先の技から大技への連携など、敵によって対応を変えたら、かなり戦いやすくなりましてね。収入も良くなったので、新しい武器を探そうかと思って」
「それは良かった」
オントは俺が鍛え上げた剣の刀身部分を持っている事に気づき、仕事に移るよう態度で示した。
彼は武器の陳列された場所に向かうと、真剣な様子で武器を選んでいた。
俺は研磨機で剣の刃を研ぎながら彼の様子を窺った。
刃を研ぎ終えると俺はオントに近づき、どういった剣を求めているかを尋ねた。すると彼は重心が手元にある幅広の剣を選んだ。それは以前、俺が作った物だった。
「この剣がすばらしい。全体的に軽く、それでいて手元にしっかりとした重さがあり、手に馴染む感触がある。突くにも斬るにも取り回しが良く、扱いやすい」
「ならその剣に筋力強化や自然治癒力増幅の効果を付けるといいでしょう。そうすれば腕の負担は和らぐし、長く冒険者を続けられるはず」
「なるほど……確かに。しかし筋力強化と自然治癒力増幅の錬成強化となると、高価な素材を使うでしょう。さすがにそれは予算を超えてしまいます」
俺はその言葉を聞き、頷いた。
「分かりました。それではその錬成強化の分は俺が持ちましょう」
そう言いながら幅広の剣を手に取る。
彼は冗談かと思っていたようだが、俺が剣を手にするのを見て引き止めた。
「いや、そういう訳にもいかんでしょう」
「そうですね。もしあなたが健常者であれば通常の支払いをしていただくところですが、あなたは片腕を失してでも戦おうとしている人だ。俺はそれを応援し、支えたいんです。
勇敢な冒険者を支えるのが鍛冶師の仕事であると、俺はそう考えています」
彼は俺が本気だと知ると、それ以上は何も言わず頭を下げた。
「ありがとうございます。あなたの恩義に報いられるよう、精進します」
素材保管庫から素材を手にして錬成台に置くと、幅広の剣を中心に置き、この武器を手にした者の筋力を増強する効果と、自然治癒力を上げる錬成強化に取り組んだ。
素材は確かに高価な部類になる。しかし素材の希少価値が高い割に、その素材を使ってまで「筋力強化」や「自然治癒力増幅」を付与するのを求める冒険者は少なく、需要が低い分、素材の値段はそこまで高騰してはいない印象だ。
錬成強化自体もそこまで難しくはない。
俺は集中し、完璧にその作業を終わらせた。
「出来ました」
俺は剣を鞘に納めてそれを手渡し、商品棚に置かれていた鑑定書に二つの錬成強化について新たに書き加え、それも渡す。
そうして彼から剣の代金を受け取った。
「感謝します」
「頑張ってください。応援していますよ」
彼は店を出る時も深々と頭を下げ、神妙な面持ちで店を後にした。




