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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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「マシェナマーデァ旅団」の冒険者

 午後は鍛冶屋に行き、作業を開始しようかと発注書に目を通していると、客が店に店に入って来た。

 それは体格の良い女で、大きな荷袋を背負っていた。

「こんにちは」

「いらっしゃい。どのようなご用ですか?」

 そう尋ねると女は担いでいた荷袋を目の前に置いてこう言った。


「あなたがオーディスワイアさんですね? あなたに魔法の剣を造ってもらいたくて、前に来た時に『地属性に合った金属』を用意するといいとお弟子さんに伺ったので、持って来ました」

「ああ、それじゃ君が『マシェナマーデァ旅団』の」

 その言葉に彼女はうなずき、にっこりと笑った。

 許可を貰って荷袋の中身を確認すると、真紅鉄鋼アウラバルカムとクロム鉄鋼の他、地の精霊結晶などの素材が入っていた。

「うん、強化素材もかなり持って来てくれたようだな」

「はい。切れ味や攻撃力の底上げをできる素材を中心に持って来ました」

「そのようだ。けれども魔法の剣の鍛造たんぞうで加えられる素材には限りがあるからな、魔法の剣が完成した後で追加で強化錬成する事になるが、それでいいか?」

「はい」

「よし。では書類を読んで契約書に署名サインしておいてくれ」

「わかりました」

 彼女はすぐに書類に目を通し、名前を記入した。


 精霊魔女マシェナマーデァ旅団のミーシアというらしい。

 上級冒険者として活動して一年か、二年くらいの戦歴だろうと思われた。


 俺はこれから魔法の剣を打つので、明日にでも取りに来るよう告げるとミーシアは大きく頷き、作製費用をケベルに渡して店を出て行った。



 炉の前に延べ棒や使用する素材を運んでいると、入り口の方から小さな白い物が近づいて来た。──それはライムだった。

「おいおい、脱走して来たのか」

 母猫は炉には近寄ってこず、少し離れた床に落ち着くと、そこで香箱座りをしてこちらをじっと見つめてくる。

「やれやれ」

 思わぬ監督がやって来て、俺は作業を見守られる事になった。そういえば昔は鍛冶屋に野良猫のライムが来ていたんだったと、ふと思い出す。


 俺はライムの事は放っておいて、炉で真紅鉄鋼を熔かすと、魔法の金鎚で軟らかくなった金属を打ち始める。

「キンッ、キンッ、キンッ……」

 叩く度に火花が散って、床に不純物が転がり落ちる。

 延べ棒を叩き、炉の中に入れて取り出し、板状になるまで打ち伸ばすとそれを折り曲げて、さらに金鎚で鍛えていく。


 それを繰り返し、叩いても火花が飛び散らなくなると、いよいよ魔法の剣への錬成が始められる。


 魔力結晶を砕き入れ、剣の形になるよう打ち伸ばしつつ、地属性の精霊結晶などを加え、さらに硬化結晶やその他の強化素材も加えて、それらが安定するように注意を払いながら鍛え上げていった。

 大剣の形が出来上がってくると、最後の仕上げに掛かり、慎重に鎚を振るった。


 刀身に魔力の流れが生まれ、地の精霊力が込められた魔力回路が全体に形作られていく。

 大きな刃を水の中に浸けると、水が蒸発して湯気が立ち上った。

 その音を聴いたライムが驚いて起き上がり、背筋を伸ばして水のはじける様子を見守っている。


「うん、上出来」

 水から引き上げた刀身を研磨機に掛け、刃を研いでいると、遠くからライムが見守ってくれていた。鉄を削る音が五月蠅うるさいからだろう、彼女は近づいて来る事はなかった。



 鍔に柄などを刀身に取り付け、魔法の剣に強化錬成を施す為に錬成台の上に置き、強化素材を乗せていくつもの強化を施す。

 思っていたよりも多くの素材を無駄なく使用でき、ミーシアから依頼されていた以上の効力を持たせる事が出来たのだった。

「よし、後は鞘を作って完成だ」


 そうして錬成台から離れると、足下にライムがやって来た。

 白い猫が足に体をりつけて甘えてくる。

 椅子に座って作業を始めると、作業台の上に乗って来て、こちらの邪魔をするでもなく、大人しく台のすみで丸まっていた。

 俺は鞘に使う木材を削り、刃の形に合わせてはまた削り、それが終わると、留め金を使って鞘を完成させた。


「終わったぞ」

 ライムのおでこを指で掻いてやると、白猫は頭を上げて欠伸あくびをした。


 造った魔法の剣を鞘に納めて武器測定器に掛け、鑑定書を作製する。出来上がった物を保管して鍛冶場に戻るまで、ライムはずっと俺の後をついて来ていた。

「ほら、帰るぞ」

 俺はライムを抱き上げると、徒弟達に後を任せ、宿舎へと帰って行った。

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