神騎兵からの依頼
管理局の技術棟に行き、メリッサに神騎兵に関する書類を提出した。
「これは?」
「以前に渡した神騎兵の新兵器についてのものより、さらに細かな設計について記した、新しい武器の発想を書いてきた。名付けて『混沌還元砲』だ」
「それはどういったものですか?」
質問を投げ掛けながら資料に目を通すメリッサ。
「混沌の中に満ちている魔力などを抽出し、それによる攻撃を行う兵器だ。つまり混沌の中でなら弾切れを恐れずに使用できる訳だ」
「なるほど」
「けど魔力に限ると威力は弱まると思う。だから混沌の中にある混沌の力を制御し、それを攻撃に転用するような、そんな新しい方法を技術班で探して欲しい」
「いただいた資料を見ると、混沌結晶を分解して得た情報から、混沌の海の中で得られる力を分析されているようですね。──出来ればオーディスワイアさんにも、混沌の調査と解析の構成員に加わって欲しいのですが」
「あいにくだが、俺には他にもやらなければならない事が山積みでな」
ですよね、と彼女は言いながら頭を掻く。
そんな話をしていると、机の上にあった送受信器が鳴り出した。
メリッサは受話器を耳に当て、いくつか言葉を交わしていたが、やがて「本当ですか?」と少し驚いた様子を見せる。
受話器越しの遣り取りが終わると、彼女は大きく頷いた。
「オーディスワイアさんを、神騎兵が呼んでいるそうです」
「え?」
こうして俺達は、地下にある神騎兵の格納庫へ向かう事になったのだった。
神騎兵になって戦う夢を見た後で、その神騎兵から呼び出されるとは。
昇降機に乗って地下施設へと向かう。横にはメリッサもついて来ていた。
「忙しいんじゃないのか」
「神騎兵がどんな事をあなたに話すのか、興味が尽きませんから」
「それは俺もだよ」
昇降機から降りて格納庫に向かうと、銀色の神騎兵が一騎だけ残っていた。
『とつぜん呼び出し申し訳ない。できればオーディスワイアに協力してもらいたい事があるのだ』
男女の声が入り混じった声で神騎兵は言った。
『フォロスハート周辺の混沌領域には現在、数多くの偵察機が飛んでいるのだが、その一番遠くにある偵察機の一つが、フォロスハートに向かっている巨大芋虫の姿を捉えた』
まさかと思ったが、あの夢が現実のものになるとは。
「それは怖いな」
『そこでオーディスワイアには、あの巨大な怪物を倒す為の武器を作って欲しい』
俺は悩んだ。神騎兵の頼みを断るのは難しい。というか、そんなの無理だろう。──我々は彼らの活躍で外部(混沌)からの敵の侵入を恐れずに生活できているのだから。
「もちろん協力したいが、しかしここの技術班にまずは任せたい。巨大芋虫の討伐に関する発想ならいくつかあるから、それは──メリッサに話しておくよ」
『よろしく頼む』
屈み込んだままの神騎兵はそう言い、押し黙ってしまった。もしかすると彼らは現在混沌の中を飛翔している神騎兵と繋がり、情報の遣り取りをしているのかもしれない。
「戻りましょうか」とメリッサが言う。
俺は彼女に従い、昇降機に乗り込む。
そこでいくつかの発想について彼女に話しておいた。
「まず、巨大芋虫から取れる素材を運ぶ運搬用飛翔体を作るべきだな。せっかく素材を落としても、それを運ぶ事が出来なければもったいない。
それと偵察機を改良した、神騎兵の動きに合わせて自動攻撃をするような兵器や、予備武器を持っていく飛翔体なども作るといいんじゃないか」
「なるほど、確かにそういった物があった方がいいですね。すぐに開発に取り組むよう指示を出します」
「また何か思いついたら知らせるよ」
そう言いながら、俺は地上に向かう釦を押した。




