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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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不安な夢

「これからよろしくね」

 食堂を出て階段の前に来ると、そこで子猫を抱えて待っていたキャスティに言われた。

「おう」

 アウシェーヴィアもそこに居て、彼女は巣箱の横にある座布団クッションで寝ている母猫の体を撫でながらこちらを見上げ、黙ってうなずいた。


「ああ、そうだ。旅団加入申請書を渡しておこう」

 俺は事務室に入り、書類の入った引き出しを開けて、二枚の紙を取り出すと部屋を出た。

 申請書を二人に手渡すと、彼女らはすぐに自室で書類を書き上げ、明日早く管理局に持って行くと言った。


 床に下ろされた子猫が俺の足下に駆け寄って来た。キャスティの熱烈な愛情表現に疲れ切ったのか、まるで彼女から逃げるように俺の足に身を隠す。

「災難だったな」

 子猫に声を掛けると、か細い声で「うにゃぁ」と鳴いた。



 自分の部屋に戻ると、神騎兵シュルトヴァーレンの武器についての発想アイデアを書いた紙を再確認し、今度はそこに書かれていたものについてより深く思考し、混沌の中で活動する神騎兵に有用な兵器の設計を始めた。

 管理局の技術班から貰った情報を分析し、どうすれば混沌の中にある活動力エネルギーを安全に使えるようになるか、そのあたりが肝になりそうだ。


 以前メリッサに渡したものよりも具体的な構造について記し、混沌の力を利用する方法についてさらに思考を深める。

 思考力に魔法を使い、さらに深い分析を開始すると、すぐに閃きがどこかからか沸き上がってきて、俺はその霊感インスピレーションをすぐ形にしようと簡単な覚え書きを紙に記した。


 大体の設計思想は形になったが、実際にこれが可能かどうかは管理局の技術班、それも混沌領域の研究を担当している人間の才覚にかかっている。

 あの完全なる闇の中の事象について、神騎兵の管理維持メンテナンスを担当している者や、混沌の研究者だけが直接、混沌での実験や調査を行えるのだから。


「この兵器が作れたなら、神騎兵の新しい攻撃手段に……なる、だろぅ──」

 急に眠気が襲ってきたので、俺は義足を外しながら寝台ベッドに腰掛け、横になるとほぼ同時に、そのまま眠りの中へと誘われていった。



 夢の中で俺は混沌の中を飛翔していたようだった。

 その夢は神騎兵となって混沌の中を飛び回り、混沌の怪物と戦う夢だった。なぜ自分が神騎兵になっていたのか──いや、もしかするとあの夢は、元々が精霊である神騎兵が見せた夢だったのかもしれない。


 俺はその夢の中で、巨大な芋虫型の怪物と戦っていた。もしかするとそれは資料で見た、混沌の中に現れる巨大芋虫アウバデロウスという混沌の怪物だったろう。


 精霊は不思議な感応力を持っていて、人になんらかの干渉をする事があるらしい。

 そうした事はまれであり、滅多にあるものではないそうだが。

 神騎兵があの巨大な怪物と戦っている最中だったのかもしれない。その思念が伝わってきたのかも──

 そんな思いに駆られたが、それは突拍子もない考えだろう。



 * * * * *



 朝になって目を覚ました時、机の上に置いた神騎兵の兵器に関する設計図を見直して、この新しい兵器の着想を早いところ管理局に持って行こうと思った。

 精霊の力が働いてあの夢を見たとするなら、なんらかの現実的な問題に突き当たるのではと思われた。精霊達の意図しない感応力が人間に予知夢のようなものを見せる……。そんな気がしたのだ。



 朝食の時間になると、食堂に大勢が集まった。

 アウシェーヴィアとキャスティの二人が加入しただけで、何やら騒がしい朝となった。


「『暗黒の鉱山』に行きませんか」

「あそこなら魔法が使い放題だから、わたしの力を見せるには絶好の場所」

「だからってキャスだけが活躍してたら、他の人が成長できないでしょ」

 どうやらアウシェとキャスティは、レンネルとエアネルらと共に中級難度の転移門に向かうらしい。


「それでは行ってきます」

 ぞろぞろと宿舎を出て行く仲間達。

 俺と居残り組と猫達が彼らを見送った。


「それじゃ俺もちょっと出るよ」

「は──い」

 居残りのカーリアとヴィナーが返事をする。

 俺は設計図を手にし、管理局の技術班に向かった。

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