古強者ふたりの入団
夕方頃になると鍛冶屋の方に、アウシェーヴィアとキャスティが荷物を手にしてやって来た。
俺は後の事は徒弟達に任せ、旅団宿舎の方に向かい、アウシェとキャスティの二人を本館に連れて行った。
まだ二階には空き部屋があるはずだ。
「向こうの建物は?」
「あっちは別館。主に新人が入居しているんだ」
「私達はあっちじゃなくていいの?」
「まあ、実力も加味しての判断かな。夕食は皆こっちで取る事が多いよ。会合があるから」
玄関で靴を脱いでいると、三匹の子猫達が近寄って来て、見知らぬ二人の女を見上げて、うろうろと廊下を歩いていた。
「かわいい!」
真っ赤な衣服に身を包んだキャスティが子猫の一匹を抱き上げると、子猫は嫌そうな鳴き声を上げたが、逃げるつもりはなさそうだった。
「階段下の所が猫達の住処だからな。節度をもって可愛がってやれよ。──あ、いいところに」
二階からユナが降りて来た。
俺はユナに二人を空き部屋に案内するよう頼み、俺は食堂に向かった。まだ早いが調理場にはすでに、食事の用意を始めていたリーファにフィアーネが居た。
「早いな。もう作り始めているのか」
「ええ、どうしました?」
「うん、悪いけど二人分追加で作ってくれるか? 新しく二人の団員が入ったんだ」
「そう──ですか。分かりました。まだ下拵えの段階ですから、大丈夫ですよ」
「ありがとう。頼む」
俺が二人に礼を言って調理場を出ようとすると、ローレンキアとブラナラッハがやって来て、四人で料理を作り始めたのだった。
夕食の時間になると、俺は食事の前にアウシェーヴィアとキャスティを紹介する事になった。
リゼミラやレオシェルドなどは、懐かしい顔を見て驚いている様子だ。
「皆聞いてくれ。今日から新たに旅団に加入する事になったアウシェーヴィアとキャスティだ。この二人は『金色狼の旅団』でも活躍していた冒険者で、上級難度の冒険も二人でこなすような実力者だ。
アウシェーヴィアはともかく、キャスティは癖のある魔法使いで、攻撃魔法しか使えない。一緒に冒険に出る場合は注意するように」
そう紹介すると、声を上げようとしたキャスティを抑えてアウシェーヴィアが立ち上がり、自己紹介を始めた。
「私はアウシェーヴィア。リゼミラさんとの訓練で技術を磨いた剣士。こうしてまたリゼミラさんと肩を並べる旅団に入れて嬉しい。これからよろしく」
小さな拍手を受けて着席するアウシェ。その後にキャスティが渋々という感じで立ち上がる。
「わたしはキャスティ。魔法使い。確かにわたしは回復や強化魔法は使えないけど、その代わり攻撃魔法ではアディーディンクにも負けないと思う。わたしと冒険に出る奴は、ぼうっとしているとわたしの魔法の一発で終わらしちゃうからね」
先ほどよりも小さな拍手が起こり、俺は「まあ、こんな二人だが仲良くしてやってくれ」と告げて「いただきます」と、夕食を食べる合図を出した。
食事中もアウシェとキャスティの正面に座ったアリスシアの三人が、ずっと言葉を交わしていた。
やはり彼女達は昔会っていて、二人もアリスシアの事を覚えていた。
歳の離れたご近所の娘であるアリスについてアウシェは、まさか彼女と同じ旅団に入る事になるとは思いも寄らなかったと話して、珍しく笑みを見せる。
「キャスティさんにお聞きしたいのですが」
今度はアリスから魔法について先輩魔法使いに教えを請い、彼女から教わった独特な魔法の取り組みについて教わっていると、アウシェは離れた場所に居るリゼミラに話し掛け、談笑している。
癖のある二人だが、リゼミラ達が加入した時と同様に、団員達に大きな影響を与える可能性を感じていた。
レーチェを見ると彼女もこちらを見て、黙って頷く。強力な冒険者が加入し、今後の旅団の活動について、なんらかの思惑を抱いているのかもしれなかった。
夕食後もキャスティやアウシェを中心に仲間達は談笑し、今度の冒険を一緒にしようといった事も話し合われていた。
「あたしと訓練を?」
「お願いします」
「べつにいいけど。あんたがどれだけ強くなったか見てみたいし」
リゼミラとアウシェの間でそんな事が話されると、食堂はどよめきに包まれるのだった。
「あ──、二人とも? その前に。いや、後でもいいんだが、まずは管理局に旅団加入申請を出してくれよ?」
「あ──、うん。そうだったね」
キャスティも頷き、明日には提出しに行くと言った。




