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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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鍛冶作業に没頭

「なんのこっちゃ?」

 手紙を読み終えた俺は首を傾げてしまう。

 アウシェーヴィアは話し下手な女だったが、文面からも彼女の姿が思い出されるほど、なんとも要領を得ない手紙の内容だった。


 キャスティを連れ出せないから俺に頼んでいる、という内容なのは分かるが、何故そんな事になっているのか、一切説明がないのだ。

 しかし、その文章の一部には興味が引かれた。


「……旅団に入ってもいい、か」

 レーチェは喜びそうな話だが──元・金色狼の旅団員であるアウシェとキャスティが入団するとなれば、かなり大きな戦力が加入する事になる。

 管理局が旅団間の実力に差が出ないよう働き掛けているが、それはあくまで新人が入る時の事らしい。旅団を抜けた冒険者が、それぞれの意志で再入団するところまで干渉はしないだろう。


「しっかし、パールラクーンにか」

 まあ、女神アヴロラに挨拶しに行く予定もあったし、シュナフ・エディンの女王メルゼヴィアやミリスリアにも会うつもりでいたのだ。

「こちらの予定が片づいたら行ってみるか」

 明日の夜にでもと考えていたが、今日の夜にでも行く事にするかな。

 幸い自転車を用意できたので、馬車で行くよりも雰囲気が出るだろう。──まるで学生時代にでも戻ったかのように。


 そんな事を考えつつ、午後を鍛冶場で過ごす事に決め、再び鍛冶屋へと戻って行った。



 午後は鉱石から延べ棒に加工したり、忙しく働いた。

 鉱石を熔かしている途中で個人指名してくる客が居た為、優先的に作る事になったのだが、魔法の剣の作製依頼ではなく、黒銀鉄鋼グラズアルドを使った剣を作ってくれ、という依頼だった。


 しかしその若い冒険者はどう見ても、下級の難易度の転移門しか入れないような、新米と大して変わりがない様子の冒険者だった。

「黒銀鉄鋼をどこで?」手に入れたのか、という質問を投げ掛けると、少年と言っていい男は、旅団から渡されてこれで武器を作ってこい、と言われたと説明した。

「へえ、気前がいいな」

「なんでも管理局の方から、若手にもいい装備を与えるよう通告されているらしいです」

「なるほどな」


 伸び代のありそうな若手にいい装備を与え、活躍させる事を狙っているようだ。そうした旅団の有り様を見た他の若手も、気合いを入れて訓練なり冒険なりをするようになると踏んでいるのだ。


「うちでも装備は与えているけどな。黒銀鉄鋼は重いから、使う奴を選ぶが」

「ぼくは腕力には自信があります」

 そう言って力瘤ちからこぶを作って見せる。

 確かに腕の太さはそれなりといった感じだ。

「腕力を過信するなよ。技術の向上を願って、新しい武器を作れと言ったはずだからな」

「はぁ──い」

「で、どういった形がいいか、実際の得物を握ってみろ」


 俺は若者にいくつかの剣を持たせて、こういった重心の、長さはこれくらいの、という話し合いをして、剣の形を決定した。


「よし。では夕暮れ前の金が鳴る頃にまた来い。きっちり仕上げてやる」

 若者は「お願いします」と頭を下げ、鍛冶屋を出て行った。


 俺は魔法の金鎚や受け取った素材などを炉の前に運ぶと、黒銀鉄鋼を熔かし剣を作り始めた。

 黒銀鉄鋼は柔軟性のある金属だ。折れにくく、斬れ味の鋭い剣へと加工がし易い。その金属を鍛錬し、硬化結晶と不銹ふしゅう結晶を加えて打ち伸ばす。

 黒い金属が薄く打ち伸ばされ、剣の形に整ってくると、正確な造形になるよう慎重に金鎚を振るう。

 思う通りに剣の形が出来上がってくると、水の中に剣を浸ける。


「おっし、完成だ」

 かなり時間を掛けたはずだが、まだ受け取り時間まで余裕があるだろう。

 砥石で刃を研ぎながら、頭の中では鞘やつばなどの素材や形状も考えている。

 柄も鞘の石突きにも黒銀鉄鋼を使うよう依頼されているので、剣を磨き上げると早速作業に取り掛かった。


 木製の鞘型を用意し、刃の形に合わせて削っていきながら、黒銀鉄鋼の一部を熔かしていく。

 鞘の外側に獣のなめし革を張り付け、黒銀鉄鋼の石突きや鍔付きの柄を作製し、刀身に合わせる。細部まで作り上げていると、やや早く剣の作製を依頼した若者が店に戻って来た。




「出来ましたか」

「もうちょいだ。鑑定書も作るから待て」

 剣を鞘に納め、それを武装測定器に置き、性能を鑑定する。

「うん、予想よりいい出来じゃないか?」

 たぶん、他の店で作るよりも品質の高い武器になっているだろう。それに錬成強化とも相性が良く、いくつもの強化能力を施せるはずだ。


「ありがとうございます!」若い冒険者は喜び、代金を支払ってくれた。

「ああ、新しい武器だからと浮かれるなよ。慎重に冒険に向かってくれ」

「はい!」

 その冒険者は意気揚々、駆け出さんばかりの勢いで店を出て行った。


「さて、俺も宿舎に戻るか」

 徒弟達も仕事の片づけを始めていた。

 俺はそれを手伝いながら、今夜でもいいかと、改めて確認するのだった。

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