ユナの決意とアウシェーヴィアからの手紙
部屋から出ると、玄関前でユナに出会った。どうやら食堂で昼食を取りに来たようだ。
彼女の側には珍しくメイの姿がない。
「どうした、今日は冒険には行かなかったのか」
「はい。今日は管理局の方で、アディーディンクさんの魔法講義を受けていました」
「なるほどね」
アディーは冒険に出るよりも、魔法の講師として活動する方が多いくらいだ。主に中級から上級の冒険者を相手に、具体的な戦闘での魔法使いの戦い方を講演しているのだ。
「仲間の編成も考えて、魔法使いがどう動けばいいか、そうした事をすごく丁寧に教えていただいてます」
「俺が冒険者を辞めた後は、アディーとリゼミラの二人は他の冒険者と冒険に出ていたようだから、そこで得た知見があるんだろうな」
食堂に着くと、彼女は俺の分の昼食も用意すると言って調理場に向かった。
俺は席に着いているよう言われたが、お茶の用意をしてからテーブルに向かった。
俺が座ろうとしていた席には先客が居た。
白猫のライムが椅子の上に乗り、こちらをじっと見ていたのだ。
「何かあったのか? そんなじっと見つめてきて」
そう声を掛けるとライムは長い尻尾を振り、さっと席を降りて、悠々と食堂を出て行く。
「? 変な奴だな」
彼女の子供達も大きくなり、また外での生活(野良猫の生活)に戻りたいと思っているのだろうか。
子猫達も、ここで飼い猫としてだけ育てるよりも、もしかすると自由に外を歩かせるべきなのかもしれない。
「たまには外に出してやった方がいいのかな」
テーブルにお茶の容器を置いて席に着く。
しばらくするとユナが、用意したサンドイッチを皿に載せて戻って来た。
「ありがとう」
「いえ、どうぞ」
ユナの作ってくれたサンドイッチは、塩漬け肉の燻製や萵苣(レタス)などの野菜を挟んだ物で、塩揉みした胡瓜なども入っていた。
「うん、美味しいよ」
「ありがとうございます」
「炉の前で作業した後は、塩分がありがたいんだよな」
俺達はその後、黙々と食事を食べ、お茶を口にした。
「ごちそうさま」
俺が彼女よりも多めのサンドイッチを食べ終えると、ユナは足下にじゃれついていた子猫を抱き上げてあやしていた。
「オーディスさ……団長。私、頑張りますね」
「ん?」
「これからは上級難度に積極的に挑戦して、アディーディンクさんのような、頼れる魔法使いになってみせます」
彼女は決意めいた言葉を口にしつつ、子猫の背中を撫でながら、優しげな目を向けている。
「ユナが頑張っているのは知っているよ。だがあまり無理をしないようにな? 旅団や仲間の為に頑張るのはいいが、気負い過ぎはよくないからな」
すると子猫が「ニャァ~」と返事をして、ユナは笑った。
「この子も『わかってます』と言ってるみたいです」
「ははは、ならいい」
そんな話をして皿を流しまで持って行き、皿を洗ってから宿舎を出た時に、手紙の配達人がやって来た。
例の荷台付きの自転車に乗った配達人は、俺宛ての一通の封筒を差し出して、すぐに去って行った。
二つの後輪を回す踏み板を漕ぎ、思っていたよりもゆっくりとした動きで離れて行く。車輪が小さい為、速度はあまり出ないのだ。
(たぶん事故らないようにという配慮だろうな)
走り出した自転車の音が聞き慣れない音だったので見てみると、環状鎖が金属製ではなく、骨や木を錬成して作り上げたような材質の物で作られているようだった。
(やべっ、金属製だという固定概念で作ってしまったぜ)
恐らく硬質化させた物を鎖状に組み上げているのだ。
「カラカラカラ」という軽やかな音を立てて自転車は進んで行った。
音は金属の物の方が静かな気がする……
そう思いながら手紙の差出人を見ると、アウシェーヴィアの名前が書かれていた。
「アウシェから? ……しかもパールラクーンから届けられたのか」
俺は宿舎の門に寄り掛かりながら手紙に目を通す。
{オーディスワイアへ。
意識を取り戻したようでとりあえず良かった。
見舞いに行ったときはどうなることかと思ったけど。
旅団長でもあるオーディスにこんなことを頼むのも気が引けるけど、パールラクーンのラクシャリオまで迎えに来てほしい。
私だけじゃキャスティを連れて行けなくて困ってる。
なんならオーディスの旅団に入ってもいい。
なるべく早くここからキャスティを連れ出して。
アウシェーヴィア}
次話は日曜日に投稿。
乱雑な内容の手紙を読んだオーディスの感想からスタートします。




