水と風の魔法の剣を造る
翌日、朝食を食べ終えるとすぐに鍛冶場に向かった。
剣を打っていた夢を見るくらい、強いやる気が湧き立ち、体を突き動かしていたからだった。
素材保管庫から金属の延べ棒を手にする時、自然と移動式テーブルにそれを載せていた。
「魔法銀か……」
自分が手にした延べ棒が青みがかった色の魔法銀の延べ棒だと知って、少し躊躇う。
まだこの金属の事を良く理解していないのに、魔法の剣を造るのは冒険だ。──それに、風属性との相性に優れ、水属性とも比較的親和性のある、碧銀鉄鋼で造ろうと考えていたのだが……
「う──ん」
俺は悩んだが、自分が直感的に手にした魔法銀の延べ棒を使う事に決めた。
こういった無意識の采配が良い結果を齎すんじゃないか、そう考える事にした。
「よし、やるか」
解析で魔法銀がかなりの高温にも耐えられるのは知っていた。
錬成台の側に移動式テーブルを置き、炉の近くに必要な素材を運んで配置した。
風と水の精霊結晶や魔力結晶など、もう一度確認すると、炉の中の火に燃結晶と火の精霊石を放り込む。
「火の神、風の神、水の神。並びに地の神に希う……」
今回の魔法の剣に注ぐ力は風と水だが、火を使って行う作業であり、そして金属は元々大地から得た物だ。結局四大神の全てに祈る結果になってしまった。
足踏み式鞴を使って炉に空気を送り、火の勢いが増したところで魔法銀の延べ棒を投入する。
青い金属は火の力を受けてもなかなかその形を変えず、色だけは緋色がかったものに変化した。
「なかなか強情な奴だな」
額に浮かぶ汗を拭いながら金属が溶けてきたのを確認し、それを鋏で挟んで持ち上げると金床の上に置き、急いで魔法の金鎚で打ちつける。
魔法銀は熱されて緋色に輝いているが、その金属からは青白い火が発せられている。
その不思議な金属を打つと、真っ白に光る火花が飛び散り、がちんと重い音が金床の上で鳴った。
魔法銀を鍛練し、次第に冷えてきたのを見計らって、炉の中へと戻す。
そうした時に、遠巻きに見ているケベルとサリエが視界の隅に映った。
「おはよう」
「おはようございます」
こちらから声を掛けたが、それ以上の言葉を繋げる事は出来ない。俺はすぐに金属との一騎打ちに気持ちが入っていった。
再び熱された金属を鋏で掴むと、金床に載せて魔法の金鎚で打つ。平たく伸びた金属を折り曲げ、金鎚で二つ折りにして、またそれを炉の中に入れては取り出し、また打つ……
これを何度も繰り返し、火花が出なくなるまで鍛錬すると、いよいよ魔力結晶や硬化結晶と不銹結晶も熔けた金属の中に砕き入れていく。
金属の魂を打ち伸ばしながら、二種類の精霊結晶を加え、剣の形へと成形する。
魔力回路が金属の中に伸び、精霊の力が全体に行き渡った。
「よし」
青かった金属の刃が青緑色へと変化していた。
精霊力の影響か、それとも魔法銀の特質なのか。
解析に掛けると魔法銀で造られた魔法の剣は、今まで造った魔法の剣よりも魔法との相性が高い事が解った。
精霊魔法の効果もかなり上昇するだろう。
使用者の魔力が低くても、少ない魔力で強力な魔法が使えるようになるはずだ。
魔法剣として使用しても威力が上がるのは間違いない。
魔力が高いとは言えないレンネルとの相性はいいだろう。
魔法銀の刀身が出来ると、俺はそれを磨きに砥石の所まで持って行き、刃を研ぐ作業に入った。
刃が鋭さを増したのを確認すると、鍔と柄を用意し、一振りの剣を完成させた。
「よし、あとは鞘だな」
青い蛇の皮などを準備し、骨や角を成形した鞘を作り出すと、それらを組み合わせて鞘も完成させた。
魔法の剣を納めてみると、青い皮の鞘は美しいが──何か一つ物足りない。
「鞘元の部分に補強も兼ねて、碧銀鉄鋼の金具を装飾した物を取り付けてみるか」
小さな金属片を箱から取り出し、錬成台の上に載せると、形を変形させるよう力を徐々に加えていく。
形状を変化させ、鞘の根本に装着して強度を増す金具を作ると、それを鞘に嵌めてみた。
「少し緩いか」
今度は鞘に付けた状態で錬成台に置き、金具だけを変形させ、鞘をがっちりと固定するよう設置した。
「うん、上出来」
見た目も上質な魔法の剣が完成した。
試しに鞘から剣を引き抜くと、軽やかに剣は手に収まり、鞘に戻す時も静かにしっかりと、鞘の中へと収まった。
半日を魔法の剣を造る事に集中してしまった。
気づけば昼を大きく過ぎた時間になっていた。
俺は昼食を取りに宿舎に戻ると同時に、出来たばかりの魔法の剣を自室に持って行く事にした。




