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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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自転車を作ろう

「そういえば久し振りにこっちに来たら、(にゃ)んか不思議(にゃ)乗り物が道を走っていたにゃ」

「へえ? どんな?」

「こう──人が足を動かして、前に一つの車輪、後ろに二つの車輪が付いた乗り物が、荷物を運んでいたのにゃ」

「自転車か。そう言えば管理局の開発部が新しい乗り物を作って、それを手紙などの配達業務に投入するとかなんとか、広報誌に書かれていたな」

「あれ、欲しいにゃ。売ってくれ(にゃ)いかにゃぁ」

「それは管理局に聞かないとなんとも」


 俺はそう言いながら、やっとこちらの人間だけで自転車が開発されたか──と考えていた。これで自分が自転車を作ったとしても、新しい開発をした訳ではないと言い訳が出来る。

「待っていたぜ……この時をよォ!」

(にゃ)(にゃ)んの事にゃ」

「いや、なんでもない。それより、魔法銀ディルミールはいくらで、どれくらいの量があるんだ?」

「そうにゃぁ……オーディスには色々迷惑を掛けたからにゃ、今回は特別に延べ棒一本を七万ルキで──」

「たっけぇ! 白銀の延べ棒と同じ値段じゃねぇか!」

「──と、言いたいところを、五万ルキにしてやるにゃ」


「……三万ルキ」

「四万五千」

「三万五千だ」

「四万二千五百」

「刻むな。三万八千」

「仕方(にゃ)いにゃぁ、四万二千ルキで手を打つにゃ」

「いやそこは四万ルキと言うところだろう」


 俺は猫餌加工鍋を洗い終えると、魔法銀の延べ棒を八本購入するから、一本の値段を四万にしろと訴えた。


「まいどありにゃ~」

 猫獣人フェリエスの行商人はほくほく顔でそう応じた。

「これ、本当にそれだけの価値があるんだろうな? あとから標準価格が四万ルキ以下だったら、管理局を通してパールラクーンの商会に訴えるぞ」

「そ、それは(にゃ)んとも言え(にゃ)いにゃぁ……。けどまだまだ大量に採掘できる訳じゃ(にゃ)いから、安く(にゃ)るのはまだまだ先のはずにゃ」


 八本の魔法銀の延べ棒を受け取ると、それを素材保管庫にしまいに行く。

 ナンティルは別の鍛冶屋に、残りの延べ棒を売りつけに行ってしまった。


 魔法銀の武器を作る事も考えたが、さらなる解析をしているうちに、この金属は錬成との相性が良く、多くの強化錬成を加える事が出来ると知った。


「そうだ、これで指輪を作ってやるか」


 とも思ったが、まずは自転車を作ろうと考える。──前々から錬成で部品を作る設計図だけは用意していたのだ。

 鍵の掛かった引き出しから設計図を取り出すと、錬成台の金属加工の設定を設計図通りの内容に変更した。

 台の上に置いた物体の形状を変形させる錬成台の力を使って、まずは車輪を作る。──その為には加工し易いように金属をかし、台の上に乗せなければならない。


 炉で軽硬合金フラウレグムの延べ棒を熔かした物を台に乗せ、すぐに加工を開始する。

 錬成台の魔法によって金属は変形し、円形のなると急激に冷やされて一本の車輪が形作られた。


「おっし、良い感じだ」

 車軸をめる中心の輪と外周枠リムを支える三本の主軸は、扇型の薄い板状の物を形成した。スポークでも良かったが、あまりに奇抜な形では違和感を持たれ兼ねないと考えた。

 タイヤ部分には猫の小屋の断熱材を作る技術を応用した。

 緩衝材になるように弾力性を備えつつ、元の形状を保ち続けるように強度も持たせた物は、ガゥレン樹液に炭などを混ぜて錬成した。


 これを車輪の外側に嵌め込む為に、車輪の外側を囲い込む覆い(カバー)を作り、その中で膨らむようにして仕上げた。均等に緩衝材が膨らむよう覆いには穴を空けて、そこから水を注ぎつつ、覆いを回転させながら全体を膨らませる。

 最後は穴の部分から外側に膨らんだ部分や、余分に膨らんでしまった部分を削り、滑り止め加工のギザギザを器具でタイヤに刻みつけると完成した。


「次は車体だな」

 錬成台を調整し、軽硬合金を溶かした物を台に乗せる。そうして自転車の部品を全て完成させると、後は組み立てるだけとなった。


 環状鎖チェーン踏み板(ペダル)などを取り付け終えると、徒弟達も俺が何を作っているのか気になったらしく、「その奇妙な物はなんですか」と尋ねてきた。

「乗り物だよ。今は荷台を取り付けているところ」

 椅子サドル握り(グリップ)にもガゥレン樹液から作った護謨ゴムを使い、軟らかい仕上がりにした。


「完成だ」

 頑丈さと軽さを主軸思想コンセプトにして作り上げたので意匠デザイン性は無いが、我ながら高い完成度だと思う。──T字型ハンドルの単純な自転車が完成したのだ。

 チェーンカバーや雨除けも作り、少々やり過ぎたかなとも思ったが。


「じゃ、ちょっと試運転してくる」

 俺はそう言って鍛冶屋から外に自転車を漕ぎ出し、人通りの少ない住宅の間の道を駆け抜けた。

 石畳の上で曲がる時もタイヤは横滑りせず、安心して走らせる事が出来た。ブレーキも確かめたが、操作棒レバーを引くと、鋼索ワイヤーで繋げたゴム板がタイヤをしっかりと挟み込んで、停止するのを確認した。

「これならJIS(日本産業規格)もにっこりだね」


 俺は自分の仕事に満足して鍛冶場に戻ると、今度は魔法銀の延べ棒を熔かし、次の作業に取り掛かった。

何か大事な事を忘れているオーディスワイアさん……

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