表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

551/585

ナンティルに猫の餌を

 翌朝目が覚めると、あんまん作りを開始した。

 遠征に出ていた五人分のあんまんの皮を作り、あんこを中に包んでいく。

 菓子作りをしながら、昨晩のエウシュアットアとの約束の事を考え、どのようにレーチェを誘うか頭を悩ませていると、朝食を作りにリトキスが調理場にやって来た。


「おはようございます」

「うん。──そうだお前。リーティスと付き合っているんだって?」

「え? いや──付き合っている、というのではないと思いますが。その手前、といった感じですか」

「手紙のり取りをしているのに?」

「彼女の好意はありがたいですが、手紙の遣り取りだけですよ? ……ところで」

「うん?」

「何を作っているんですか?」

「遠征に出ていた連中の為のお菓子だよ。もう居残り組みには食べさせたんだ」


 リトキスは話題を変えたいようだった。

 こちらもあまり突っ込んで聞くのも野暮やぼだと思い、追及するのは止めておく。


「お菓子ですか。……確かに、遠征に出ていなかった仲間だけがお菓子を食べたと知ったら、メイはへそを曲げるかもしれませんね」

「そういう事だ」


 そうした話をしていると、急にリトキスが足下を見た。どうやら子猫が足にじゃれついてきたようだ。

「猫に餌をやってくれ」

 俺の言葉にリトキスはうなずき、子猫と共に調理場を出て行った。

 久し振りに見た顔に、子猫も喜んでいる様子だ。

 足首に掴み掛かってくる子猫を抱き上げると、彼は足早に階段の方へと戻って行った。



 蒸し器にあんまんを入れたところで今日の朝食担当が調理場に集まった。俺は砂時計の砂が落ちきったら火を止めるよう言ってその場を離れた。

 食堂にはちらほらと人が集まって来ていたが、まだ全員ではない。

 俺はいつもの席に腰掛けると腕組みをして考え込んだ。


「よし、今日は猫の餌と、魔法の剣を造ろう」

「なんですの、その組み合わせは」

 いつの間にか目の前の席にレーチェが座っており、俺の独り言につっこんでくる。

「いや、前々から準備していた物があるんだ」

 古い鉄鍋があったので、それに錬金加工を施す術式を設計していたのだ。

 その古鍋は魚肉や鶏肉などを加工し、自動的に殺菌、防腐処理をしてくれるという鍋に生まれ変わるはずだ。

 防腐剤を混入させる訳ではないので健康にもいい。


「錬金術様々(さまさま)だな」

「はぁ……」

 なんの事だか分からないレーチェは首をかしげている。

 メイは食後にあんまんを口にしながらユナにしきりに声を掛けていたが、ユナはどこか上の空で彼女の相手をしているのだった。




 食事を終えると、宿舎の倉庫にしまわれていた古い鉄鍋を持って鍛冶場に向かった。

 まずは鍋に付いた汚れや焦げを落とし綺麗にすると、古鍋を錬金台に乗せ、鍋に錬金加工を施す。


 鍋の中に入れられた食材を加工し、目的の品質にまで安定させる術式を組み込むと早速さっそくあじと鶏胸肉などを鍋の中に入れて、鍋に施された術式を発動させる。

 今は両手から流し込んだ魔力に反応させ起動させているが、鍋の縁に魔力結晶を入れた作動装置を取り付ける予定だ。


 鍋の中にあった鯵や鶏肉が振動すると、あっと言う間に細かく砕け、挽き肉(ミンチ)状になった。そこに用意していた調味料を掛けると、それに反応してまた鍋の中の具材が振動し、混ざり合っていく。


「お、完成か」

「んにゃ~? いい匂いにゃぁ」

 背後から間の抜けた声が聞こえた。

 振り返るとそこには大きな荷袋を担いだ猫獣人フェリエス……ナンティルが立っていた。


「おう、久し振りだな」

「お久し振りですにゃオーディス。それで、体のほうは大丈夫かにゃ?」

「問題ない。──いいところに来た。ちょっと味見をしてみてくれ」

 俺はそう言うと鍋の中の灰色の物体をスプーンでよそった。

(にゃ)んか、毒々しい色にゃ……」

「確かにあまり旨そうに見えないな。──だが問題は味と栄養だ」

 皮ごと加工した所為せいで、色は少しあれな感じになっていた。

 改良の余地があるな──などと考えつつ匙を渡すと、彼女はそれを受け取り、ぱくりと口にした。


「もぐっ…………(にゃ)(にゃ)かイケるにゃ」

「そうか、そりゃ良かった。成功だな」

(にゃ)んの料理にゃ?」

「猫の餌だよ」

 俺はそう言って鍋の中の物を瓶に移していく。

「ね、猫? 私は猫じゃ(にゃ)いにゃ!」

「味覚も嗅覚も猫に近いみたいだけどな。──それに猫の餌とは言え、人間が口にしても食べられるからな」


 三つの瓶に猫の餌を入れると、それを机の上に置き、鍋を手にして洗面台のある場所まで運びつつ、猫獣人ナンティルの用件を聞いた。

「それで、なんか用か?」

「今日は新しい素材を買い取ってもらいに来たにゃ」

 流し台で鍋を洗っていると、ナンティルは荷袋から青色の光を反射する銀色の延べ棒(インゴット)を取り出す。


「青銀色の金属──まるでミスリルみたいだな」

(にゃ)んにゃ? それ」

「なんでもない。それより初めて見る金属だ」

犬亜人ババルドが占領していた北の土地から、この金属が採掘できる鉱山が発見されたにゃ。まだ決まって(にゃ)いけど、魔法に対する親和性が高い事から、魔法銀ディルミールって名前にゃまえ(にゃ)りそうにゃ」

「マジか」

 魔法銀──それはまさにミスリルじゃないか?


「ちょっと解析させてもらうぞ」

 ──調べてみると、確かに魔法との相性が良く、錬金鍛冶の素材としては優秀な金属になりそうな物だった。

「うん、いい感じの金属だな」

「まだ採掘量は少(にゃ)いけど、特別にオーディス()()回してやるにゃ」

「金を取るのか」

「あったりまえにゃ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ