管理局からの食料支給
日常生活のあれこれ、何で三回目と五回目がちゃんと届けられたか……多分配達先が異なるからなんでしょうね──
食料支給は管理局が食料すべてを配給しているという意味ではありません。市民にも「ある程度の」自由は与えられているので。
あと、お金は硬貨でなくて、紙幣でも良かったかな──と思いましたが(この狭い世界の中だけなら)、一応外部の亜人族(エルニス族やナンティルの様な猫人など)と取り引きする時に硬貨や物々交換で行っている為……と言い訳の様な設定で茶を濁す──
管理局から今週分の食料が届いた。──旅団宿舎の方に運ぶよう手配しておいたはずなんだが、また鍛冶屋の方に届けられたのだ。管理局員はいったい何をしているのか……公務員の中にたまぁ──に居る、自分は選良市民で偉いと勘違いし、人の話を愚民の戯れ言と聞き流す豚野郎が居るのだろうか。
「さっさと屠殺場へ送ってしまえ」
俺は誰とも分からぬ相手に「死んでしまえ」と言い放った事に少しばかりの罪悪感を感じつつ、木箱の中身を確認する。──書類に表記された通りの内容物が届けられているのを確認し、いったいどこの誰が発送先を変更しないで(三回目と五回目は宿舎の方に届けられた)、こちらに送って来るのかまったく想像すらできない(というか何でそんな事が起こり得るのかが理解できない)。
木箱二箱分は相当の量だった。鍛冶場に置かれると仕事の邪魔になる。宿舎には地下室があり、冷気を生み出す「冷結晶」をいくつか配置する事で冷蔵施設を作ったが、鍛冶場などの室内に置ける冷蔵庫を用意した方がいいかもしれない(冷蔵庫は管理局にすでに登録されている)。
だがその前に洗濯機を完成させる方が先だ。
すでに金属板に水と風の力を術式として組み込んだ物は作製済みだ。後は宿舎で組み立てるだけだが、──その前に食料と共に運んで貰わない事には始められない。
鍛冶場に仲間がやって来ると、指示を出し小分けにした食料を運ばせ、俺は洗濯機の部品を二度に分けて運んで行った。
「今日は全員で『古びた城塞都市』へ探索に行こうと思いますわ」
唐突にレーチェが言った。かなり危険な敵──鎧を着込んだ死霊や大型の魔物も出現する場所だ。
「……まだ早いのでは? 焦る必要は──」
「大丈夫ですわ、全員で話し合った結果ですのよ。危険になったら閃光爆弾や煙幕も使用して、退避する準備もしておりましてよ」
確かにそれらの備品を錬成して旅団用の倉庫にしまうように言いつけたが。
「──分かった、くれぐれも注意してな」
「大丈夫。任せて」
そう言ったのは最年少のメイだ。この娘はフレイマの難易度五十越えの転移門先でも活躍した実績を持っているだけあって、肝が据わっている。
彼女らが「古びた城塞都市」へ冒険に行っている間に、宿舎の洗濯機を造り終えてしまおう──鍛冶屋は休みだ。




