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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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闘気の間違った使い方

「なんなのですか! あの人は‼」

 とアリスシアが頬を紅潮させて怒りをあらわにする。

「落ち着け。皆の様子を見る限り、何があったかだいたい察しがついた。話は聞くから、何があったかゆっくり話してくれ」

 そうなだめるとアリスシアを含め、数人の仲間が息を整えるように溜め息を吐いた。どうやらあの老人の強い気配を当てられて、緊張していたらしい。


「急に彼らが敷地内に入って来て『エウラを出しなさい』などと言ってきたのです。それで私はエウラさんは冒険に出ていてここには居ませんと言うと、『では団長を出しなさい』などと言うのです。

 私はその態度に腹を立てましたが、冷静に、団長は鍛冶の作業場に行ってここには居ません、と言いました。するとあの老人は突然怒り出し、まるで激怒した獣みたいに感情を剥き出しにしてきたのです」

 そう説明してくれたアリスだったが、話している途中から段々と思い出してきて、再び怒りの感情をメラメラと燃え上がらせる寸前まできていた。


「んんっ」と咳込んで、彼女の中に膨れ上がりそうになった気を散らす。

 すると彼女は「はっ」と気がついたように自分の気を落ち着かせ、頭を下げた。

「申し訳ありません。団長に当たってしまいました」

「気にするな。あの老人がかなりの使い手であるのは分かっている。その老人の気を浴びて、平静ではいられなかったのだろう。俺にも覚えがあるよ。若い頃にはああした手合いの相手が上手くできないもんだ」

 感情に対して感情で反応してしまうのは生物的な感覚もあるが、その感覚的な反応には、気の影響もあると俺は考えている。


 それにしても技量の高い武術家でありながら、こんな小娘相手に激怒し、あまつさえ激情の気を放って相手の精神を混乱させるとは。──本当に理解しがたい。

 その理由はあの老人の「焦り」にあるのだろうが、練達の武術家がする事ではない。


「あの老人、めいを道場に返せだの、跡取りがどうのと、いきなり息巻いて……」

 ブラナラッハは杖を手に、防御魔法を展開しそうになったと告白した。

 彼女は初めて強い闘気を浴びて、相当な恐怖を覚えたようだ。

 反撃しなかっただけ彼女は冷静だったと言える。

 それほどあの老人の気迫には、他者に与える強烈な影響力があったのだ。


 それは戦場で仲間の士気を上げたりするには良い影響となるが、間違った使い方をすれば焦りや惑いの感情が伝播でんぱし、集団が瓦解がかいする。


 素人しろうと同然の彼女らにそんな真似をするとは、俺はあの老人に強い苛立いらだちを覚えていた。

 怒りの感情が伝播させる達人など居てはいけない。ただでさえ怒りや憎しみといった感情は移りやすいものであるのだから。


「ともかく、あの老人とエウラの事は俺と副団長に任せておけ。お前達は訓練に戻ってくれ。──ああ、その前に深呼吸をして、瞑想するといいぞ。まずは気持ちを落ち着けてからだ」

 この場に居た数名の仲間達は素直に頷き、長椅子が置かれた隅に歩いて行った。


 俺は宿舎の自室に戻ると、いくつか書き溜めておいた設計図などを持って、管理局に向かう事にした。

 今後の話をメリッサにしておきたいと思い立ったのだ。

 それにあのベンデル・フィアネストについても聞いておきたいと思った。



 宿舎を出て管理局に向かう途中で、新たに設置されていた掲示板を見つけ、そこに書かれた内容に目を通すと、確かに俺の事が書かれていた。

 それは地の神ウル=オギトが錬金鍛冶師のオーディスワイアを象徴武具職人に任命した。という簡潔な内容が書かれていた。

 大きな紙面に大きな文字ででかでかと書かれた数行の文面。告知するという目的だけを果たしたもので、象徴武具がなんなのかすら書かれていないところを見ると、庶民が知る必要はないと考えているのだと思われた。


 実際儀式の大半は非公開であり、それを理解しなくても生活にはなんの影響もないのだ。

「そう考えると管理局はやっぱり、『知るべき者が知り、知らなくていい者には知らせない』という態度を持っているようだな」

 俺は掲示板を前にそんな皮肉をつぶやいて、管理局へと向かった。

また少々シリアスな展開に……


毎週投稿が厳しい感じになってきました。


以前書いた部分で「エアネルも魔法の武器を持っている」ように書かれた部分がありましたが削除しました。

まだ彼の魔法の武器は造っていませんので。彼の姉エアネルは魔法の槍を持っています。

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