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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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ベンデル・フィアネストの来訪

「まあいつか、うちの鍛冶師の前で魔法の武器を打って見せて欲しい。多少は発見があるかもしれないから」

「そうだな。できればそうした『お手本』は、管理局の技術屋に任せたいんだが」

 アラストラはうなずき「少し武器や防具を見せてもらおう」と言って、鍛冶場にある販売区画(コーナー)を見に行く。

 彼は買って行く事はなかったが「また来る」と言い残して帰って行った。

 彼が販売区画を見ている時に客が入って来て、ケベルとサリエが接客に追われ始めたからだ。


 俺はケベルが研いだ魔法の剣につば柄頭つかがしらを付け、握りの部分もしっかりと革張りにし、厚みのある刃をしまう鞘も竜骨を使って作り上げた。


 武具の性能を鑑定する「武装測定器」が管理局から各鍛冶屋に送られてきて、これにより正確で基準値の振れ幅が少ない鑑定が行えるようになったのだ。

 今までは鑑定魔法が使える職人が武具の性能を判定していたが、その魔法でかるのは大体の性能であって、鑑定した個人によって差が出る事があったのだ。──それほど大きな違いが出る訳ではないらしいが──

 しかも管理局の機械が自動で鑑定書を紙や羊皮紙に書いてくれるので、信頼性もある上に書く手間も省けるようになった。


 こうした嬉しい変化がここのところ、管理局から次々に発表されている。


 各旅団に設置された受信機があり、管理局からの要請を聴く事が出来たり、街中でもそうした音声を発信できる受信機が設置されているのだ。

 映像を残しておけるような媒体の作製もされているらしく、写真などを撮る機械もそのうち出回るかもしれない。

「ラジオやテレビが作られるかもしれないな」などと考えつつ、過剰な発展に警戒する気持ちも胸の中に広がってくる。

 いい方向にだけ発展してくれればいいが、新しい技術を使って、何やら犯罪めいた事に使用する連中も登場するかもしれない。そんな事も思うのである。


 そういえば少年錬金術師のベィンツが「鉱山と荒野の大地」に緑を増やす方策として、生命力の強い雑草を育てていると管理局の広報誌に書かれていた。

 それはつまり、いつかはあの大地もフォロスハートに接合するのだという、管理局の想いの表れでもあった。

 各都市の有力な技術者と管理局が連携して、本格的に技術力を高めようと動き出したのだ。

 錬金鍛冶の分野でも大きな変化が起こる可能性はまだまだありそうだ。




 鍛冶屋を後にして宿舎に戻ると、何やら庭が騒がしい。

 訓練によるざわめきではない。人の声の騒々しさだ。誰かが怒鳴り声を上げているのだ。


 門を開けて敷地内に入ると、そこには老人が一人と、そのそばに二人の男が立っていた。

「騒がしいな」

 俺がえて言葉にすると、アリスシアやブラナラッハを相手に大声を上げていた老人がこちらを振り向いた。

 その形相は怒りに満ち、どこか病的で、落ち着きのない、やつれた老猿を思わせた。


「おまえがここの長か?」

 と、老人は息急いきせき切ってこちらに詰め寄ろうとする。

 俺は即座にその行動をさえぎる気配を出した。

 相手がそれなりの使い手だというのは分かっていた。いかに錯乱気味であろうとも、武芸をたしなんだ者の立ち振る舞いが動作の端々(はしばし)に表れていたからだ。


 鋭い闘気を当てられた老人は一瞬(ひる)み、そして冷静さを取り戻した様子を示す。──上手くこちらの想いが伝わったようだ。こちらに敵対する意思はないのだと。


「……なるほど、()()()が信頼するだけの事はある。なかなかやるようじゃ」

「エウラの関係者。なるほど、ではあなたが”刃閃流剣術”の師範ですか」

「話は聞いておるようじゃな」

 老人を守るように二人の男がこちらに敵意を向ける。彼ら若い衆には先程俺が発した気配の意味が理解できなかったらしい。


「よせ」と老人は彼らを制した。

「申し訳ない。どうも彼女らは我々がエウラの敵であるように言うものだから、ついカッとしてしまったのじゃ。──非礼はびよう」

 老人はそう言って頭を下げる。

「わしはベンデル・フィアネスト。エウラ・フィアネストの叔父じゃ」

「初めまして。俺はオーディスワイアと言います」

「うむ。それでさっそくじゃが、エウラを我々の道場に返して欲しい」

 老人は焦っていた。

 エウラの事を口にすると、どうしようもなく焦りが発作のように沸き出すみたいに。


「返せ、と言われましても。彼女は進んでこの旅団に在籍し、そして冒険者となる道を選んだのですから」

「それはそちらの都合でしかない!」

 と、突然怒号を上げる老人。

 しかし俺は澄ました顔でやり過ごす。

 烈しい感情をぶつけてきた相手の”気”に惑わされず、巨岩のごとき重さと堅さで相手の気を受け流してみせた。


「少なくとも」と、俺は声色を変えずに、至って冷静にゆっくりと言葉を紡ぐ。

「エウラはここには居ません。冒険に出ていますので。彼女が帰って来てから話しませんか?」

 放った気迫をさらりと受け流され、老人はまた冷静さを取り戻した。

 どうにも情緒不安定なようで、会話になるにはエウラが居た方が良さそうだった。

 何しろ彼女の言葉に決定権があるのだから。


「……では、そうしよう」

 老人はどっと疲れ、一気に老け込んでしまったみたいだった。よろよろとした足取りで老人とお付きの二人は宿舎を出て行った。

老人のキレやすい理由は……

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