レーチェの両親と
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
館の玄関口は広間になっていた。
左右に通路が延び、正面には二階へ続く階段があり、そこから左右に広がる通路と部屋へ続くドアが見えた。
一階の階段の左右に二つの扉があり、食堂などに繋がっているのだとレーチェは話してくれた。
広間には執事が待っていて、俺とレーチェを二階の部屋へと案内してくれた。そこはレーチェ部屋であり、そこでしばらく待つように言われた。
リーファは館に居た黒い侍女服を着た侍女達に連れ去られてしまい、行方知れずだ。
「少しお話しましょうか」
「ん」
レーチェの部屋は片づいていた。というかほとんど物が置かれていない。
テーブルや椅子、硝子戸の棚などがあるが、細々とした物は見当たらない。
奥にあるドアから寝室や個室に繋がり、この部屋は客間のような物なのだ。
彼女の私室に興味があったが、それを見る事は出来そうにない。
「これからの予定ですが」
「おう」
なんとなく気まずい空気を感じながら、レーチェの両親とどんな事を話すかを予想する。
「まあ俺達から話せる事は旅団の事だろう。食料の配給について感謝して、後は──なんだ?」
「私との関係についてですわ」
「ああ、そうだった──。それは正直に、お付き合いをさせていただいています。くらいしか言えないんじゃないか?」
「まあそうなのですが」と照れた様子を見せるレーチェ。
まだ食事には早い時間だと思われたが、執事が俺達を呼びに来て、食堂まで案内する。
大した計画も立てられず行き当たりばったりに、両親との対話に望む事になってしまった。
「まあ気楽にまいりましょう」
レーチェはそう言うが、どこか落ち着かない様子を見せている。
別に彼女の両親は怖い人でもなく、頭の固い人でもないと聞いているが、さすがにいきなり恋人面して両親の前で楽しく会話する自信などない。
食堂に通された俺達は、大きなテーブル席に呼ばれた。
そこには人の良さそうな五十代の紳士と、長い金髪が美しい美人が座っていた。
その横にレーチェの妹のリーティスも座っていて、彼女はにこにこしながら姉と俺に小さく手を振ってくる。
こちらも笑顔で対応したが──内心、舌打ちが出そうになった。明らかに彼女は何かを企んでいるような顔をしていたからだ。
「ようこそオーディスワイアさん。私はレーチェとリーティスの父アグレイド。こちらは妻のレクシアです」
「オーディスワイアです」
よろしくお願いしますと頭を下げて挨拶する。
母親のレクシアは微笑してこちらを見ていた。その笑顔が、滅多に見られないレーチェのものにそっくりで、思わず微笑み返しそうになる。
俺とレーチェが席に着くと、アグレイドが神妙な顔をして突然深々と頭を下げた。
「あなたには感謝している。リーティスに良い強壮薬を授けたばかりか、『生命の天輪護符』という貴重な錬成品を造ってくださり、娘の健康を取り戻してくれた。本当にありがとう」
そう言うと母親もリーティスもリーティスも揃って俺に頭を下げるのだった。
「いえ、そんな。レーチェに頼まれてした事です。どうか頭を上げてください」
三人は頭を上げたが、リーティスが強壮薬や護符の効果について話し、最近は体が重いと感じる日がなくなったと説明すると、二人の親は頷き合い、アグレイドがこんな事を言い出した。
「フォロスハートでも指折りの錬金鍛冶師であり、優れた冒険者でもあり。しかも評判の旅団を率いる旅団長であるとは。こんな良い伴侶をくわえてくるなんて、うちのレーチェもなかなかやるものだ」
「あらやだ、娘をそんな風に言うものじゃありませんわ。猫じゃあるまいし」
「おいおい、私はそうは言っていないぞ。それでは彼は鼠か何かになってしまう」
二人はそう言って笑い合っている。
ん? ──今、なんつった?
「伴侶──って、まだそこまで決めていませんわ!」
レーチェは強めにテーブルを叩いて立ち上がる。見ると顔を真っ赤にして怒っている。
そして妹をじろりと睨むのだった。
妹の方はまだにこにこと笑みを絶やさず、楽しそうに座っていた。
割と気さくなレーチェの両親。
次話でレーチェの様子がおかしかった理由が明らかに?




