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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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レーチェの小さな領地で

 領主邸の中を案内された後に、レーチェと共に町を見て回る事になった。

 町には数少ないが商店や露店などもあり、そこそこに賑わいを見せている。

 町の人はレーチェの姿を見るとお辞儀し、挨拶をしたが、話し掛けてくるような事はなく、のんびりと町の中を散策できた。

 町の中にも畑や家畜小屋があったが、それほど数は多くない。


 領地の産業は飼い葉であったり、小麦や豆類などの作物関係が多いらしい。

 町の外へ出ると、平地や丘のある場所を見て回る。

 町の裏手には小さな泉があり、そこから小川が平地に向かって流れていた。


「そろそろ周辺の森を切り開いて、農耕地を広げようという話も出ているのですが」

「何故そうしない?」

「資金の面もありますが、人材の選定が苦労しますわ。誰でもいいという訳ではありませんから」

「切り開いた者の土地、という訳にはいかないか」

「あくまで開拓には大勢の協力の下で行われた、という形を取るのが習わしですから」

 それでも数ヶ所の木の伐採が決まり、春頃から木を切り出したり、地均じならしが行われる予定だと言う。


「西海の大地も接続され、食料自給率が上がったからな。これからは多くの家庭が生まれる可能性が高い。そうなれば必然的に食料の確保が問題になる」

「そうですわね。うちの領地がその手助けになればいいのですが」

 人手不足に加え、輓馬ばんばなどの数も少なく、それを揃えるのに時間が掛かった節もあるらしい。

「農耕馬の育成をすべきでした」

 そうして俺達は珍しく、冒険や旅団以外の会話でこうした方が、ああした方がと話し合った。

 どちらも真剣で、領地の開発がそのままフォロスハートの豊かさに繋がるのだと信じているのだ。


 レーチェは俺が田畑や潅漑かんがいについて提案すると、嬉しそうに笑顔を見せる事が多かった。やはり自分の領地を発展させるというのも、彼女の誇りであったり、望みでもあるのだろう。


「そういえば養蜂はしないのか? ウル=オギトは蜂蜜酒ミードを絶賛していたが、どこの領地で生産が多いとかあるのか?」

「よ、養蜂場ですか……」

 と彼女はまた、何かを言い渋る素振りを見せる。いったい何を隠しているのかまったく分からないし、それをどうやって聞き出せばいいのかも分からないので、ずばり「何か言いにくい事でもあるのか」と尋ねてみた。


「言い難い……そうですわね。その──私の家族についてなのですが、その。大きな養蜂場や牛や豚などの生産をしていて……」

 と、口を割ろうとしていたところにリーファがやって来て、そろそろ本邸へ向かいましょうと声を掛けてきた。

 町の外を見て回ったりしていて、随分ずいぶんと時間が経ってしまったようだ。


「あ、行きましょう。両親を待たせるのはあれですわ」

 などと曖昧あいまいな言い方をして、さっさと町へと戻ろうとする。

 その後ろ姿は何かを隠している所為せいか、とても小さく見えていた。




 町の中へ戻ると馬車が用意されていた。

 それは通常の、交通用の馬車ではなく。個人が持つ形式の、領主が用意するような立派な物であった。どうやらレーチェの実家から来た馬車らしく、御者もうやうやしくレーチェに挨拶すると、座席のドアを開けて俺達を客車に乗せるのだった。


 レーチェの町──そう呼ぶのを彼女は嫌うだろうが──を出ると、馬車は速やかに街道を進み、クラレンスの街まで俺達三人を送り届けた。


 クラレンスに着く頃に空は夕暮れを迎えた。

 馬車は街の中に入ると、レーチェの実家である大きな館の前まで来て、開いた門から敷地内へ入って行く。その間にも空はどんどん暗くなってきていた。

 かなり広い土地があり、門から館の前まで来るのに、馬は結構な距離を歩かされた。


 館は立派な三階建ての建物だった。

 一部の屋根が高くなっている所を見ると、そこは四階があるのかもしれない。

 窓には全て硝子ガラスが張られ、窓枠や柱の一部は装飾が施され、外観からもかなり裕福な家柄であるのがうかがわれる造りになっていた。


「本当にお嬢様なんだなぁ……」

「ほら、行きますわよ」

 レーチェは俺の溜め息混じりの言葉を無視し、リーファを引き連れて大きな玄関扉の前まで歩いて行ってしまった。

1月1日にも投稿を予定。

そろそろ完結──かな?

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