告白の余韻の中で
レーチェとの決闘に勝ち、恋人関係となった俺達だったが、その日の夕食までとくに変化はなかった。
レーチェは訓練に戻り、俺は鍛冶屋に戻ると仕事をこなした。
サリエに手本を見せる為に金鎚を振るって魔法の短剣を造ってやり。ケベルが魔法の剣を打つところを補助し、一本の魔法の剣を作製するのに手を貸した。
ケベルはかなり勉強していて、魔法の武具を打てるだけの知識は十分持っていると感じた。後は経験を重ねて、自分の体で熟知するだけだ。
経験を積み重ねて魔法の剣を打てるようになれば、魔法の武具を造るのもケベルだけに任せる事も出来るようになるだろう。
──そんな風に仕事をこなしながらも俺はどこか浮ついた、自分自身でもよく分からない浮遊感の中で一日を過ごしていた──
夕食になるといつもどおりに、レーチェは俺の前の席に座った。
簡単な声掛けをして相手も「ええ」と答えたのを見て、俺は足下に寄って来た白い子猫を抱き上げた。
いつものようにちょっかいを掛けてくるメイの姿がないので、子猫も不思議に思っているみたいで、きょろきょろと仲間達の顔を見回して少女の姿を探しているように見える。
俺の膝の上に立ち、テーブルに前足を掛けてメイやユナの姿を探すみたいに、左右を見回していた。
「ニャア」
そうして彼女らの姿が見当たらないのを確認すると、子猫は「なんでメイやユナはいないの?」とでも言いたげな感じで、俺にしがみついて鳴き声をあげる。
そんな子猫の頭を撫でてやり、あやしていると膝の上で寝っ転がり、左手を相手に取っ組み合い始めた。
「いてててっ」
甘噛みから急に本気噛みをしてきて、俺の指に歯を立てる子猫。どうやら無意識に撫でていた手が、かなりの力でお腹を撫でてきた事に腹を立てたらしい。
「悪い悪い」
謝罪を口にすると子猫は膝の上から下りて、廊下の方に逃げて行った。
ぼ──っと、なんとなく落ち着かない気持ちのまま食事を取り、気づけば夕飯を食べ終えていた。
夕食後にレーチェから明日の予定などについて語られ、団長と副団長がクラレンスの領主に会いに行く、といった事が語られたが、俺はそれを上の空で聞いていた。
自分が何を食べたのかも思い出せないような状態で風呂場に向かい、髪を洗いながら考えていると、隣で同じく髪を洗っていたニオが尋ねてきた。
「明日はクラレンスの領主に会うということでしたが、それって副団長のご家族ですよね?」
「ああ」
「ウィンデリア家と言えば、フォロスハートの食料生産の要の一つらしいですから。思えばそんな家系の娘さんが旅団にいるなんて、うちは恵まれた環境ですね」
「そうだな」
その後もローレンキアなどが話に加わって、いくつかの質問を受けたが、俺はその時も上の空だった。
食料生産の中心的な立場にあるレーチェの家族についての質問だと思うが、彼女の家族について俺は碌に知らないのだ。
そういえば旅団員の家族構成も理解していない者の方が多い。
「食料の提供に対する感謝を伝えるくらいだ」と、明日の行動について一方的に伝えると、俺は彼らの訓練や冒険について尋ね、話題を切り替えたのだった。
オーディスワイアがぼ──っとしている理由は……




