リーティスとリトキス
聞けばリーティスは実家で、レーチェが冒険者としての素養を身につけるべくリトキスと訓練をしていた頃に、親しくなっていたらしい。
レーチェが冒険者としてそれなりの技能を学び、リトキスが彼女らの元を去る時に、リーティスから積極的に迫ったという。
リトキスはリーティスをすぐに受け入れる事はせず、まずは冒険者であるリトキスのような、旅団での活動が生活の中心となる人物との付き合いを続けられるかどうか、試そうという事になったらしい。
それで手紙の遣り取りを続け、互いを知るところから始めたのだとリーティスは語った。
「知りませんでしたわ」
「だからお姉様は駄目なのです。今回こうしてオーディスワイア様とお付き合いする事になったのですから、もう少しご自分の恋愛や今後について考えてくださいまし」
「今後の事なら考えていますわよ!」
「冒険や旅団、自分の治める領地の事ばかりではありませんか? そういった今後の事だけでなく、自分の結婚相手や、その先についても考えて欲しいと言っているのですわ」
そんな姉妹の遣り取りを聞きながら、そういえばリトキスが手紙を出しに行く姿を見たなぁ、などと思い返すのだった。
「それでは私は帰りますが、両親に会うのは明日で構いませんね?」
「う──ん正直、気が重いんだが」
「両親にはできるだけ早く顔合わせする、と伝えてしまいましたの」
リーティスはさも当然そうに言った。
「……分かったよ。明日、クラレンスに向かおう」
俺が観念するとレーチェは反論はせず、妹に対してやけに邪険にした手の振り方をして、さっさと帰るように促すのであった。
「それではお姉様、明日は久し振りに家族で食事にいたしましょう。……とはいえ、ますはお姉様の治める領地で昼を過ごされては? 両親にはその後で顔合わせ、という形でいかがでしょうか」
レーチェは何度も頷き、妹を追い払うように宿舎から出て行かせてしまった。
「これだからあの子は苦手なのです」
「強引さは姉も大して変わらないと思うが」
俺の言葉に「なんですって」とでも言いそうな目でこちらを睨んだが、俺と争う気持ちはないようで、大きな溜め息を吐くとこう言った。
「明日は気楽にまいりましょう。話なら私がいたしますわ。団ちょ……オーディスさんにご迷惑は掛けられませんから」
「しかし夕飯を会食するとなると、帰りは深夜になりそうだな」
「そうですわね」とレーチェは上を見るように視線を向け、何やら計算をしているような顔になった。
「そういえば俺は市民が着るような服しか持っていないが。正装した方がいいのかな」
「普段の格好で構いませんわ。オーディスさんが冒険者だというのは両親も理解していますし、両親はもともと冒険者が好きな人達ですから。その影響で私も妹も感化されたと言ってもいいくらいです」
「へえ」
フォロスハートの貴族は元からあまり「貴族社会」という価値観を敷いてないらしく、どちらかというと管理局と協力し、冒険者を支援する形の社会構造をしているのだった。
もちろん領地を代々受け継ぎ、農作物や畜産物の生産を増やそうと努め、その社会的役割に大きな誇りを抱いているはずだが。あまりその権力を振り翳して「自分達は貴族なんだぞ」といった態度を取らない。
むしろ偉ぶった態度になりがちなのは管理局の局員の方な気がする。──あまり貴族との接触がないからそう思っているだけかもしれないが。
「とにかく、あなたはいつもどおりでいてくださいな。──まあ、あまりいつもの軽口などはしないでいただきたいものですが」
「分かってるよ」




