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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第二章 集いし者達

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鳥人間(?)の来訪

鳥の頭部の描写を書き足してみました、ちょっとクドかったかな?

感想を頂けると励みになります。

 仲間を冒険に送り出した後に奇妙な客が訪れた。鳥のお面──いや、被り物(マスク)かぶった客だ。

 身長は高く二メートル近い。緑色の緩やかな法服ローブを身に着けた姿は、神殿付きの神官を彷彿ほうふつとさせた。随分ずいぶん上等な生地を使っているらしく、表面の刺繍ししゅうにも細かな細工が施され、金糸をい込んだ非常に洗練された物を身に着けている。


「いらっ──しゃいませ。どのようなご用件で」

 俺は頭一つ分高い位置にある鳥の頭部──横から見るとたかはやぶさに似た猛禽類を思わせる堂々たる顔立ちで、鋭い緑色の眼光が印象的だが、正面から見るとくりくりとした丸い大きな目が、ふくろうに似た愛らしさを持っているとも感じる──に向かって挨拶をしたが、鳥の頭を持った獣人──(鳥人?)──が居るとは聞いた事が無い。

 作り物だろうと思い始めたが、その頭部がくるくるとなめらかに辺りを見回す仕草や、大きな目を()()()()()まばたきするところを見ると、本物の頭の様である。


「君がオーディスワイアだね。フィアネストが世話になった」

 細長いくちばしをぱくぱくと動かすと、確かにその口から男性の声が発せられている。──思ったより若々しい声だったが(身のこなしから初老くらいと予想していた)、どこか威厳いげんを感じさせる声色でもある。


「フィアネスト──エウラの知り合いの方ですか」

「ああ、いや──うん。直接の知り合いではないのだが」

 と、あやふやな言い回しで煙に巻くと、彼は細長い腕を持ち上げて、鋭い爪の付いた指で表を指差す。


「外の看板に旅団の拠点であると書かれていたが、旅団を持っているのかい?」

「ええ、立ち上げてまだ間もない弱小ですが」

 俺の答を聞くと彼は「うん」と頷き「そうか」と納得する。

「君らは他の都市に遠征に行かないのかい」

 その言葉に「将来的には」とだけ返事をすると、彼は二度ほど頷いて「では気長に()()()()()()」と独り言を言うみたいに納得し、ふところに手を入れる。


「これをエウラ・フィアネストに渡しておいてくれないか」

 そう言って取り出したのは、深い緑色をした翡翠ひすいを丸々加工して指輪にした物だった。精確に円形にくりかれ磨かれた見事な加工技術で造り上げられた品なのは一目で分かった。

「彼女を守る風の加護が掛かっている。危険な冒険でも彼女を守ってくれるはずだ」


 鳥頭の男はそう言って俺に翡翠の指輪を握らせると、「では」と言って背中を向けて店を出て行った。

 背中を向けた時にその外套マントに見覚えのある紋章が描かれていたが、どこで見た物だったか記憶を探っているうちに、ほとんどの鍛冶仕事を片付けてしまった。思い出せない物は仕方ないので放っておき、洗濯機の設計に入る──


 これについては前々から考えていた、二種類の属性魔法を組み合わせる事でいけるはずだ。水を溜めておく器の周辺に水流を発生させる術式を組み込んで、さらにその底部には風の力で空気の泡を生み出す術式を組み込む。──これで水の中に入れた衣服を洗うのである。

 むしろ問題は衣類を洗う洗剤か──そして中の水を捨てる穴も必要だ。


 こうした事を考えていると仲間達が帰って来た。今日は大量の素材を持ち帰り、素材保管庫も簡単な強化錬成なら店にある物だけでも、かなりまかなえるだろう。


「エウラ」俺は猫を抱いている彼女を呼びつけて例の翡翠の指輪を手渡した。彼女はそれを受け取る為に猫を下ろそうとするが、その猫とレーチェが睨み合う形になるので、俺は猫を受け取ってエウラに尋ねた。


「鳥の頭を持った知り合いが居るのか? 向こうは直接の知り合いじゃないとは言っていたが」

 俺は指輪をエウラに渡すよう言った人物の特徴について語って聞かせる。

「鳥の頭? これをくれた方ですか? 緑色の法服に翡翠、鳥──そう言われて思い付くのは風の神ラホルス様でしょうか。ラホルス様の人としてのお姿を私は見た事がありませんが。──それにまさか神様が私に、贈り物をくださるとは思えませんけれど」


 彼女の言葉にあっ、と思い出した。──あの鳥頭の羽織っていた外套がいとうの紋章。あれは風の神ラホルスの神殿に掲げられた旗にしるされていた紋章だと。

 俺は彼女に言った。

「それは風の神からの贈り物に違いない、大事にしろ」


 翡翠の指輪には確かに強力な風の力に起因する魔法が掛けられていた。この様な贈り物ができる人間など早々居るはずは無い、そう思うとあの鳥の頭を持つ大男から感じた不思議な違和感の正体が分かった気がした。

 何故、神が一人の人間を気に掛けてわざわざ贈り物を届けに来たのかは分からないが、気まぐれな猫の様な存在が神なのかもしれない。


 俺が抱いていた猫は腕の中から飛び降りると、鍛冶屋をゆっくりとした足取りで出て行った。

あと、私は他にも毛色の違った物もいくつか投稿していますので、良かったら作者のマイページにアクセスしてください。(さらにお気に入りユーザ登録して貰えると嬉しいです)

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