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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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レーチェとの二度目の決闘②

「ガツッ」

 死角からの攻撃で、完全にとらえたと思ったが、俺の攻撃は木剣で防がれた。

 レーチェは低い姿勢から打たれた突きを横へ回避しながら、木剣で俺の突きを横へ受け流す。


「おっ」

 盾を地面についた状態で体を支えていた為、流石さすがに体勢を崩しそうになった。

 這うような姿勢から戻るには足を広げて、さらに手を使って上体を押し戻さなければならない。

 木剣の柄頭つかがしら部分を地面につけて体を押し戻すと、そこを狙われた。


 物騒な光をたたえた鋭い眼光のレーチェが、立ち上がろうとしている俺に向かって突きを打つ。

「あぶっ……!」

 俺は上半身を跳ね上げるようにして彼女の突きを回避し、その勢いのまま後方に宙返りする形で距離を取った。

 着地の時にも義足の板バネがしっかりと地面を踏み、すべる心配はまったく感じなかった。

 早めに決着をつけようとした手が回避されてしまい、しかもかなりの隙を見せてしまったが、なんとか反撃を回避する事が出来た。


「あぶないあぶない」

「なんですか、今の攻撃は……。まるで蜥蜴とかげの様でしたわよ」レーチェは舌打ち混じりに俺をにらむ。

「ははっ、蜥蜴か──確かに。しっかし、視覚外からの攻撃をよくかわせたな。これで俺の勝ちだと思ったんだが」

 そう言うとレーチェは曖昧あいまいに首を振る。

「自分でもなぜ躱せたのか、説明できませんわ。危険だと感じた時には体が横へ移動していました」


 彼女の戦闘感覚もだいぶ()()()()きたらしい。

 咄嗟とっさに回避し、反撃に繋げられるようになれば、一流の戦士と言って差しつかえないだろう。

「安心したよ。それだけの技量があれば、上級難度の冒険もこなせるはずだからな」

 彼女は黙ってうなずく。

 かなり気張っており、その闘志は殺気に近いものがある。


(全力でくるか……)


 こちらも自然と力が入る。

 じりじりと間合いを詰め、俺とレーチェは同時に攻撃を繰り出した。

 相手の攻撃を盾で受け止め、その隙を狙って木剣での攻撃を繰り出す。

 それもほぼ同時で、互いに互いの攻撃を回避するのに手一杯で、また後方に跳んで間合いが開いた。


 俺から一歩踏み込むと、彼女は横に大きく回り込みながらくるりと回転し、左後ろ回し蹴りを放ってきた。


(しまった!)


 レーチェの動きに合わせて盾を体の前に持ってこようとしたその盾に、彼女の蹴りが入った。凄まじい重さの蹴りは俺の体を狙ったものではなく、盾を狙ったものだった。

 俺の左腕は盾ごと大きく弾かれ、レーチェに対し背中を向けるような体勢になってしまう。脇腹ががら空きだ。


 さらにくるりと回転したレーチェは盾を手放していた。

 俺は盾を引き戻しながらも、レーチェの回し蹴りを躱す事に集中した。

 後ろ回し蹴りからの、顔面を狙った右回し蹴り……

 素早い連続蹴りが飛んできて、それを上半身を後ろに反らし(スウェーし)、ギリギリのところで回避する。


 が、その蹴りも誘いだったようだ。


 彼女は手にした木剣を、ほとんど両足が空中にあるような状態の、不完全な体勢にもかかわらず、強引に体をひねり、遠心力の力で振り下ろしてきたのだ。


 しかしその動きは俺が予測できるものだった。レーチェが仕掛けてくるとは予想の外ではあったが。

 俺の体にはそうした連続攻撃に対する攻防の記憶がはっきりと残っていて、引き足で地面を踏み込んで体勢を立て直しながら、体の回転を利用したレーチェの鋭い攻撃を前に出て木剣で受け流した。


「ガキィッ」


 その音が鳴った時、レーチェは一瞬驚きの表情を浮かべ、そして口元で笑っていたように思う。


 俺は木剣を逆手に持って受け流し、体勢を崩して俺の横を通り過ぎて行ったレーチェの背中に、返す刃で一撃を入れた。もちろん手加減をして。

 すると彼女は前方に二歩、よろよろと歩いてすっくと立ち、こちらに振り向くと、

わたくしの負けですわ」

 と宣言した。

次話の投稿は間が空きそうです。

申し訳ありません。

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