決闘の朝
なんか顔をふにふにされている。
目を開けると、白いもふもふが目の前にあった。
「ああ、そうか……」
ライムを胸の上で寝かせていたのだ。
「ふわぁ」と欠伸をすると、白猫は前足で俺の頬を踏み踏みするのを止めた。
「ニャァ──」
鳴き声を上げて俺の顔にぐりぐりと頭を押し付けてくる。
その背中を撫でてやると、ライムはまた俺の頬を踏んで起きるよう訴えてきた。
「はいはい、起きますよ」
猫を抱き上げて床に下ろすと、ドアの方に歩いて行き、早くドアを開けろとでも言うみたいにこちらを振り向く。
俺は霧吹きで小鉢植物園に水を与えてから部屋を出て行く。
ドアを開けると、部屋の前の廊下に三匹の子猫が待っていた。
「ニャァ~」
子猫たちは母猫が部屋から出て来ると彼女に寄り添い、ライムはもみくちゃにされながら階段の方によろよろと歩いて行く。
「大変だな」
俺は母猫の心配をしつつ玄関の小鉢に水をやり、それから庭に出ていつものお祈りをしてから、軽い運動を行った。
そうしていると若手達も、朝食前の運動をしに庭に出て来た。
木剣を手にした彼らを余所に、運動しながら自分の体調を注意深く確認する。
体の調子も良く、体調も万全。義足も問題なさそうだ。後は油断せずにレーチェとの決闘に臨むだけだ。
宿舎に戻ると階段前に猫達の餌が置かれ、四匹はそれぞれの皿から餌を食べている。
こちらもそれに倣って食堂へと向かい、ぼちぼちと集まり始めていた仲間達と挨拶を交わす。
食事がテーブルに運ばれて来ると、外で訓練をしていた若手達も戻って来て、食堂は賑わい始めた。
カーリアやウリスが用意した朝食は魚を使った汁物や、暗生草を入れた生野菜や、薬草入りのパンなど──個性的な物が出された。
「暗生草は個別に入れろとあれほど……」
俺が文句を口にするとカーリアは不満げに「全員で魔力量の底上げをしましょう」などと宣う。
暗生草用の調味酢もだいぶ改良され、多少癖の強い匂いはするが、かなり食べ易い味の物が作れるようになっていた。──しかし、暗生草の風味を完全に消せる訳ではない。
「魔法使いだけこの味に慣らされるのは納得がいかない」とでも言うみたいに、カーリアは全員に暗生草の生野菜を食わせるつもりのようだ。
中には大して気にもせず生野菜を食べている者も居たが。
これは味が分からないというのではなく、食糧難を経験し続けてきた先代からの薫陶を受けた若者が居る、という事を意味しているのだろう。
味にケチをつけて食い物に困るより、不味くても食え、という訳だ。
アリスシアは綺麗な顔を苦々しそうに歪めながら、暗生草の生野菜を食べていた。魔法が得意な彼女は、魔力の保有量が増えれば増えるほど、有能な魔法戦士になり得る可能性が出てくる。
ここは無理をしてでも食事を取って欲しいところだ。




