リーティスが決闘を見に?
夕食を食べ終えると、後ろから誰かが頭を小突いてきた。
「少しよろしいですかしら」
「ああ」
それはレーチェだった。
何故か手には木剣と革の盾を持っている
「どうした」
「少し訓練をしません?」
「明日は決闘だというのに、わざわざ手の内を見せるような真似を?」
「そんなに本格的なものではありませんわ。簡単な食後の運動程度のものですわ」
「分かったよ」
庭に出ると外は暗くなっていて、倉庫から木剣と盾を取ってくると、レーチェは地面に角灯を置いているところだった。
「明かりがあった方がよろしいでしょう」
「ん。で──急に訓練だなんてどうした。何かあったのか」
「その──明日、妹が来るかもしれませんの」
「へぇ? そうなのか。しかしなんでまた……」
俺達はそんな会話を交わしながら木剣を振り、それを革の盾で受け止めた。
あくまで剣の振る形を確認するだけの動きで、力はそれほど入れていない。
「決闘を見届けたい、という事でしたが……」
あの妹がそれだけのつもりで、わざわざ姉の今後を決めるような闘いを見に来るだろうか。たぶん姉に圧力を掛けるつもりなのだろう。──そしてそれは、俺にとって有利になるような圧力の掛け方をするように思われた。
「まあ、それはそれとして。時間は昼前くらいでいいか?」
「リーティスはその前には来るつもりのようでした」
「了解」
俺は返事をすると、少し強めに木剣を打ち込む。すると彼女も盾でしっかりと受け止め、反撃の鋭い連撃を繰り出してきた。
「それじゃ、俺は風呂に入るよ」
「そうですわね。……風邪など引かないように」
「分かってる」
木剣などを倉庫に戻し宿舎に戻ると、玄関先で白猫のライムが俺達を出迎えた。
廊下の真ん中に座り、置物みたいに背筋を伸ばして待ち構えているようだった。
「ウニャァ~」
何か言いたげに鳴きながら近づいて来て、俺とレーチェを交互に見て、また鳴いた。
靴を脱いで義足を拭いていると、ライムは俺の膝に前足を乗せ、それからレーチェの方に寄って行った。
「あら、なんですの? ライム」
そう言ってライムの顎を触り、頭を撫でてやると、白い猫は「ウナウナ」と甘えた声を出す。
俺は白猫と戯れているレーチェを見て、思い出した事があった。
「そういえば、地の神ウル=オギトが言っていた」
「え? ウル=オギト様が?」
「自分の想いと副団長の想いは同じだ、みたいな事を言っていたんだ。いったいどういう意味だと思う?」
そう伝えると、レーチェは白い猫の頭を撫でながら俺の顔を見つめ、一瞬眉を上げると、俺から猫に視線を落とす。
「それは明日、あなたが勝利すれば教えるつもりですわ」
彼女はライムの頭から手を放し「それでは明日に」とだけ残して、二階へと上がって行った。
俺とライムはそんな彼女の後ろ姿を目で追いながら、自室へと戻って行った。
風呂に入って出て来ると、廊下にはライムが待っていた。壁際に品良く座り、俺の顔を見るなり鳴き声を上げて近づいて来る。
「なんだ、今日は一緒に寝るか?」
「ニャア」彼女はそう返事をする。
ここ最近は寒い日が続いている。というか冬になったので、毎日の気温はほぼほぼ一定の寒さで固定されているのだ。
自室に戻って体が乾くまで椅子に座って作業していると、ライムが膝に乗ってきた。やはり寒いみたいだ。
猫の保存用餌について考えたり、管理局から依頼されたあれこれについて考えたりしていると、膝の上で丸まっていたライムが眠ってしまった。
「あらら」
俺の体が乾いたのを確認し、寝台に横になる事にした。
そっとライムを抱き上げ、布団の上に乗せてやり、その布団を俺の体の上に被せる。
ライムは丸まったまま寝息を立てていた。
俺はそれほど眠気を感じていなかったのに、その寝息を聞いていたら──段々と、眠気がやってきて、俺はお腹の上に乗った小さな体温を感じながら眠りに就いた。
次話は二日後の日曜日を予定してます。
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