あんまんを食べよう
見た目や言動はちゃらいが中身は割としっかりした冒険者が帰ると、俺は自分の仕事に取り掛かった。
鍛冶場の奥にある部屋に行き、あんまんの下に貼る紙を適度な大きさに裁断し、それを集めておく。
「二人にも甘い物を用意しておくから、昼になったら取りに来てくれ」
そう声を掛けると二人は作業の手を止め、分かりましたと頷く。
そうして鍛冶屋での仕事を一通りこなし、俺は早めに宿舎に戻って昼食に間に合わせる為、あんまんに紙を貼っていく。
全てのあんまんを蒸し上げる訳じゃない。
冒険に出ている仲間には夕飯に出すからだ。
ともかく昼に宿舎へ戻って来る仲間の分だけ蒸し上げる用意をしておく。
朝カーリアとフレジアと三人で用意したあんまんの下に紙を貼り、それを蒸し器に入れて蒸し上げる。
昼に宿舎に戻って来るのは十四人。それに徒弟二人分。──あと俺か。
昼食を作りに来たのはカーリアとフレジア。
昼食は各自が外食するなり、自分の分を作って弁当として冒険に持って行くなりするのだが──
「やっぱり料理人を雇うべきなのかな」
「大きな旅団では、料理をする専門の人が居ました」
とはフレジアの言葉。彼女もまた姉らと共に各旅団と冒険に出た事のある──玄人なのだ。
この年齢で玄人とはどうかと思うが、彼女の強さも他の旅団との関係性も、姉のダリアやその仲間のラピスに劣らないものがある。
この少女ほど才能に恵まれた者はなかなか居ないのではないか、そう思われるほどに。
「料理人──団員の数を考えれば、二人は必要かな?」
「そうかもしれない──です」
そう言うとフレジアはまたおどおどして、カーリアの陰に隠れてしまう。
しばらくすると訓練から戻って来た若手達がそれぞれの昼食の支度を始め、調理場は思っていた以上に混み始めた。大抵は「自分の分も作ってくれ」という流れになるのだが、今日は個人個人が料理を作ろうとしたようだった。
「団長はお菓子を作ってるらしいですね」
とアリスシアが話し掛けてきた。
「ああ。皆の分もあるからな」
「でしたら、団長の昼食は私が作りましょうか?」
「そうか? ならお願いしようかな」
「はい」
そう返事をすると、彼女はカーリアとフレジアの二人と共に料理を始めるのだった。
あんまんの下の部分に紙を貼る時に気づいた事がある。
胡麻あんを使ったこしあんまんは、生地の下の部分に黒い蜜が染みていたのだ。
これを見越していた訳ではないが、用意した紙は二種類あり、一つは正方形。もう一つは二ヶ所の角を切り落とした物になっているのだ。
「よしよし、こしあんを六角形。つぶあんを四角の紙で区別しよう」
そうして次々に蒸し器であんまんを蒸し上げた。
二つの大皿にそれぞれのあんまんを載せて食堂に運んで行くと、もう数人がそれぞれ用意した料理を食べていた。
「これお菓子ね。そんなに甘くはないけど……食べてみてくれ」
「なんですか? この白いパン」
「変わったお菓子ですね。名前はなんですか?」
団員達は興味を持ったようだ。
「名前──名前は……」
こっちの世界でなんと呼ぶか、それを決めていなかった。──蒸しパンの豆包み。とかでもいいのだが、今回はそのままの名前で呼んでみる事にする。
「あんまんだよ」
「あんまん?」
その発音を聞いた仲間達は首を傾げていた。
それぞれが「どういう意味だろ」とか「変な名前」だとか口にしている。
「食後に食べてみてくれ。二種類あるから、食べたい奴は二つとも食べていいぞ」
下の紙を剥がして食べるんだ。そう伝えると「は──い」と返事をする。




