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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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上級冒険者になる為に

「別に気配を消して戦うのは間違いじゃないだろう。それまで捨てる必要はない。問題は敵に見つかった時に、接近戦闘の動きに変えればいい」

 それはそうなんすけど、若者はそう言った。

「例えば魔影剣士みたいに腰を低くして、足捌あしさばきを中心にした戦い方をしたらどうだ。

 相手の攻撃を剣で受け流しつつ敵の横へ回り込み、胸や首を狙って──」

 そう説明しながら男に攻撃させ、それを剣をした手で受け流し、その流れから横に接近して首を斬りつけ、胴を突く。


「受け流す? 攻撃を弾くのではなく?」

「攻撃を弾くのは高い攻撃力を中心に組み立てる戦い方だ。──つまり一撃の攻撃力を高める為に相手に攻撃させ隙を作り、重い一撃を繰り出せる位置に足を置き、どっしりと構えている。

 あんたのように身軽に戦う場合は一撃の重さよりも、的確に急所を攻める事を考えた方がいい。だから攻撃を受け止めるのではなく、かわす為に足を使い、反撃で敵の手首を狙ったり急所を狙ったり。反撃から追撃を連続で打てるような足運びを考えるべきだ」

 男は「なるほど……」と真剣な様子でこちらの話に耳を傾けていた。


「というか、それくらいの事を教えてくれる上級の冒険者は居ないのか。お前さんの旅団には」

「いやぁ──、うちの旅団にも上級冒険者は居るんすが、そんな洗練された指導をしてくれるお人は居なかったっすね。何しろうちに所属している上級冒険者の多くは力業の戦士が多いんで」

「どこの旅団だそれは」

「『蒼髪そうはつの天女旅団』っす」

「なんだ、アラストラのところの冒険者だったのか……」


「アラストラさんを知ってるんすね」とだけ言う男。俺はこいつの名前すら知らないんだが……まあ放っておこう。

 確かにアラストラやレクトなどの戦い方は攻撃力中心で、一撃必殺を信条とする戦闘形式(スタイル)の冒険者が多そうだった。



「だが話を聞く限りでは、あんたの実力はそんなに卑下するようなものじゃないと思う」

 俺が強さを読めなかったのも、かなり優れた戦闘技術を持っているのだと考えられた。

「気配を消して接近し、急所を狙える冷静な攻撃を、敵と面と向かっている状態でも使えるようになればいいんだよ。

 攻撃を受け流された相手は大抵体勢を崩すだろ? そこを突いていけばいい。体勢を崩した相手の側面や背後に回り込んで、相手の防御の薄い部分を狙う。──基本だろう」

「言われてみれば……けど、敵と真っ向から向き合うと、なかなか思うようにいかないんすよ」

「訓練で相手の体勢を崩す練習を重ねればいい。攻撃してきた腕を引っ張って前のめりにさせれば、それだけで十分だろう」

 そう言って腕を伸ばさせた男の腕を引きつつ、くるりと回転して逆手で持った武器を心象イメージした攻撃を延髄えんずいに打つ。


 あるいは攻撃してきた腕を外側から内側に押すようにして、自分は相手の体の外側に回り込む動きを見せる。

「これで相手の視覚外から脇腹にも攻撃できる」

「回り込むように動けって事っすね」

「なんで今までやってこなかったのか、その方が不思議だぞ」

「正面から押しつ押されつつ、間合いばかり気にした戦い方をしてたかもしれないっす」

「間合いはもちろん大切だが、時には大胆に相手のふところに飛び込んだり、さっきのように回り込んだりする見極めができればもっと伸びるだろうな」

 やってみろ。そう言うと若者はうなずく。

「戻ったらさっそくやってみるっす」



 そんな話をしていると、男が連れて来た若手の冒険者達は購入する防具を決めたようだった。

 ケベルが細かい調整をして体に合わせている。

 装飾の無い地味な胸当てに籠手。だがそれらにはすでにいくつかの強化が施されており、それが購入の決めてとなったようだ。

 少々値は張るがそれだけの価値がある防具だ。防御性能を初期状態でもかなり高めに強化してあり、灰色亜人グリザールの武器くらいなら軽々と弾いてしまう。


 若手達はその防具を身に着けたまま、意気揚々(いきようよう)と店を出て行く。

「それじゃ、また来るっすよ」

 ご教示ありがとうございました。男はそんな言葉を残して仲間達と共に自分の旅団拠点に帰って行った。

剣で相手の攻撃を受け流し、そのまま剣を回すように斬りつける──そうした反撃方法は中世時代に生まれた剣技にもあります。

CGで作ったアニメの『ベルセルク』の中でも使っていたはず……

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