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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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ウル=オギトの提案

金曜日の更新からの~、本日も更新~


次話もなるべく次の日曜日に間に合わせたい……

「よく来たなっちゅ──」

 応接室にはすでに黒い法服ローブを着た女と、テーブルの上で座布団に座った銀色のねずみが居た。丸っこい鼠が手を挙げると通訳のアロエが彼の言葉を口にした。

 ウル=オギトを運ぶ役目を負った黒い法服の女は俺に頭を下げると、部屋を出て行ってしまう。

 どうやら今日のウル=オギトは、テーブルに座りっぱなしでいいとなったようだ。


「旅団の拠点をゲーシオンに置いたらしいっちゅね」

「はい。そのご報告に来ました」

 そう言うと銀色の鼠はぽんぽんとお腹を叩く。

「はっははは! 報告せずともいいっちゅ。それよりも積極的に冒険者を遠征させるといいっちゅ。神結晶を集めてくれれば、そろそろ新たな転移門をゲーシオンに開けるっちゅよ」


 一応神結晶は全て管理局に買い取られ、五つの都市に均等に分配されるらしいが、一番の優先権が入手した転移門が置かれた都市にあるとも言われている。そうした事がまことしやかにささやかれているだけかもしれないが。


「そこで提案があるっちゅ」

 と通訳が説明する。

「そろそろオーディスワイアが象徴しょうちょう武具を造る職人になった事を公表しようと思うっちゅ。──構わないっちゅか?」

「ああ、その事ですか。──まあ別に構いませんが、それが理由で鍛冶屋に発注してくる人が増えるとも思えませんし」

 俺がそう答えると、アロエが咳払せきばらいした。


僭越せんえつながら申し上げます。オーディスワイア様はその役職について、こちらが考える以上に軽くみていらっしゃるようですので。

 象徴武具を造れる人物は、一般的にはあまり知られていないのは確かですが。それだけの技量がある鍛冶師は間違いなく、錬金鍛冶師としての水準レベルが高いというのは疑いありません。つまりその職人が手掛ける武具は多くの場合、他の職人が作製する物よりも性能が高くなると考えて間違いないのです」


 ……なるほど。そう言われると確かにそうかもしれない。象徴的な力の和合を利用する事で属性の力を高めたり、強化錬成でも通常以上の力を引き出せるのだ。

 そうした技術的な事柄を理解させるべく、錬金鍛冶師向けに『錬金鍛冶技術手引き書』を冊子として管理局に発行させたりもしているが、そうした象徴を使った錬金鍛冶の技術について、冒険者はまだ細かく理解してはいないだろう。

 中にはそうした技術に気づく者も出るかもしれないが、一般的な認識ではないので、象徴武具の製作者=錬金鍛冶技術で強い武具が作製できる。──とはならないはずだ。


「まあ、今あなたが説明したような事が一般的な認識になったら、鍛冶屋に冒険者が殺到する事もあり得るかもしれませんが。──そうなると作製の単価を上げるなどして、発注の数を減らすなどの対処をせざるを得ないでしょうね」

 俺の言葉に鼠の姿をした地の神が何度もうなずく。

「一局集中は避けないといけないっちゅ。なんでもかんでも一つの所に集めようとすれば、それがなくなった時には、その技術やそれ以外の技術の進歩が失われてしまうっちゅ。

 多くの人々に理解され、共有され、次世代に繋いでゆく。より多彩で優れたものを残すには、多くの可能性に繋がる道を模索しないといけないっちゅ」

 地の神は冒険者の庇護者ひごしゃでもあるが、鍛冶職人達の崇拝を受ける神でもある。

 鍛冶技術の発展やその継承について、こちらが思うよりもずっと親身になって考えているようだった。


「ゲーシオンの鍛冶師にも発破はっぱを掛けないといけないかもしれないっちゅ。特に『魔法の剣』を作製出来る鍛冶師が、いつまで経っても現れないっちゅよ。管理局でも問題になっているっちゅ。なんとかならないっちゅか」

「いや──、それはなんとも……。魔法の剣を打つには、金属の中に流れる魔力を読み取る感覚と、それを金鎚で打ちながら全体に行き渡らせる技術が必要で。いくら知識を詰め込んでも、繊細な感覚的問題は一朝一夕いっちょういっせきには……──修練。それしかないかもしれません」

 俺の言葉に銀色の鼠は「ぢゅぅ~」と、なんとも悩ましげな溜め息を吐いていた。

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