遠征拠点の使用について
遠征拠点を使用するに当たって、いくつかの決まりを皆で相談して決める流れになった。
冒険で得た素材などをしまう保管庫には毎回鍵を掛け、ミスランに帰る時には持ち帰るのを前提にし、高価な物なども鍵の掛かった場所に保管するよう注意する。
「部屋は個室と二人部屋がいくつか。大部屋もあるが、まだ布団などは用意されてない。次に拠点に行く者は、そうした品をゲーシオンで購入する必要があるな。……金は旅団の方から出す。心配するな」
「砥石とか、武器の手入れをする場所は」
「無い。──それも手配しないとな」
調理場に風呂場もあるが、調理器具は新たに購入する必要があった。当然、風呂場に用意する物もあるだろう。
「拠点での食事の片づけも重要だ。出たゴミは燃やすなど処理をして、庭に埋めるように。特に生ゴミを放置して腐らせた奴には罰金を科す」
肥料になるように土へと返すのがフォロスハート流だ。
「この宿舎と同じような扱いを、という事ですわ」と、レーチェが簡単に纏める。
「そのとおりだ。丁寧に、次に利用する人の事を考えて使う。思い遣りが大切だな」
団員達は「はい」と声を揃えて返事をする。
「移動費用は自腹で払ってもらうが、食事などは宿舎にある備蓄から、各自が日数分を持って行くように。もちろん遠征先の料理屋に行くのは止めないが、自腹だぞ」
自腹を強調すると、リゼミラ辺りから溜め息が漏れる。
俺はそれを無視して次の拠点について話を始めた。
「それで、ゲーシオンの次に拠点を設置するとしたらどこがいいか、皆で検討しておいてくれ。まだまだ先の話になるだろうが。……だがそれも、団員の頑張りによってはそれほど遠くはないだろう。一応フレイマにある旅団『朱き陽炎の旅団』の使っていた建物を購入しないか、という話は受けている」
「へえ──」と反応したのは「朱き陽炎の旅団」に在籍していたメイだった。
メイと同じくあちらの旅団から抜けてきたユナも、一瞬驚いたような顔をする。
「まだどうするかは未定だが、金額によっては受け入れようと思っている」
それでもいいか? と尋ねると、多くの団員は「団長に任せる」といった目で俺を見るのだった。
これから「錬金鍛冶の旅団」は各都市に拠点を設置し、存分に冒険者としての働きを支援する旅団となっていくだろう。
フォロスハートを支える大きな旅団。その一角を担う旅団へと変わりつつある。そう感じていた。
ここに集まった団員の顔を見れば分かる。
希望に満ちた顔。
そこには不安や惑いはひと欠片もない。
ここに満ちた空気を、俺は良く知っている。
金色狼の旅団。そこにあった空気と良く似ていた。──もちろん、俺が冒険者として活動していた頃の”金色狼”の話だが。
現在の古巣は……正直、いい噂を聞いた覚えがない。
レオシェルドが抜け、また一段と活躍する冒険者を減らしてしまった。
あの「調整役」とか言うカインツが取り仕切って以降、凋落の一途を辿った金色狼。
今回の管理局の旅団への対応で、また以前のような輝きを取り戻してくれたら。──そんな風に思う。
ここの仲間達はゲーシオンへの遠征について話し合って、早速明日にでも行こうという風向きになっていた。
「う──ん、なら予定していたとおり、俺も行こうかな」とカムイが言えば。
「そうだね。せっかく拠点ができたなら、行かない手はないよね」とレンネルが返す。
二人がそう決めたのは、リトキスが遠征に行かないかと声を掛けたのが理由だ。
「新しい拠点かぁ……おもしろそう。行ってみる?」
「え、うん……そうだね。行ってみようか」
メイがユナを誘うと彼女は頷いた。
新しい拠点にどういった物を用意すべきか。そこは他の旅団で活動していたリトキスやレンネルが、それなりの指示を出してくれるだろう。




