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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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ゲーシオンの拠点を購入

 俺とレーチェはその日のうちに内見(内部見学)をした建物を購入する事を決めた。

 公園からさほど離れていない、大きくもなく小さくもない建物と庭。旅団の外部拠点としては申し分ない。


 さっそく管理局の担当者の元に戻り、見せてもらった二つの物件の一方を購入する手続きを済ませる。

「それでは八百七十万ルキの代金支払い証明と、その控えを作成します」

 建築物管理課にも金融機関との連携が為されており、単純な文字と数字のり取りを通信機でおこなっているらしい。

 証明書の発行や残高などの記録は中枢となる金融機関で管理されているらしいが、通信機を使い、紙での手続き記録を残さなければならないので、手間は掛かるが。



「これで、あの建物と敷地は『金獅子の錬金鍛冶旅団』の物となりました」

「ありがとう」

 メリッサに電算機コンピュータ構造システムを教えるべきだろうか。それとも彼ら管理局員が自らの発想で、新たな構造を作り出すのを待つべきか……

 そんな事を悩んでいると、レーチェが「何か心配事でも?」と言ってきた。

「いや……なんでもない」

 話をらそうと考え、「まるで夫婦が物件を探しに来たみたいだな」とでも言おうと思ったが、フォロスハート(こちら)にはあまり「結婚したら家を出る」という習慣が無い。


 冒険者なら宿舎泊まりが多いし、一般の市民や農家でも両親と同じ住居に住む者が多いと聞く。

 そうした農家を継ぐ為の結婚には、あらかじめ本宅と小さな別宅を持っている農家も多いらしい。そうした風習があるのは、多くが昔から続く農家であり、田畑と共に家と土地を継承しているからだろう。

 貴族であるレーチェにとっては、結婚すればすでにある別邸などに住む事になるか。相手方の家に移り住む事になるのだろう。


 だから「新婚の二人が愛の巣を探しに~」みたいな言い方をしても、いまいちピンとこない可能性もあるのだ。

 フォロスハートは土地が限られているから、こうした風習は当然かもしれない。

「下手をしたら派手にすべって大怪我だぜ……」

「なんの事です?」

 建築物管理課を出た時につぶやくと、彼女は不審がってきた。

「いや、なんでも。早く宿舎に戻って、新しい拠点に必要な物をそろえる相談をしたいな」

「そうですわね」


 各部屋には寝台ベッド箪笥たんす、テーブルなどは残されているが、布団や毛布や枕などは無いし、細々(こまごま)とした生活必需品も用意しないといけない。

 地下の食料保存庫になる場所には、新たな棚やたるを用意しなければ。



 考え事をしながら馬車の停留所に向かって歩いていると、大通り沿いの歩道で私服姿のアロエとばったり出くわした。


「あら、あなたは……オーディスワイアさん」

「おう、珍しい所で会うな。──というか、白い法服ローブ姿以外の格好を初めて見る」

「珍しい所とおっしゃいますが、私はこの都市に住んでいますので。むしろあなたがここに居るのが珍しいのですが。──ところで」

 などと理屈を言ってから顔を近づけてきた通訳の女。

「もしかして逢い引き(デート)ですか」と小声で言う。

 「だったらよかったんだが」こちらも小声で応じ、こほんと咳払せきばらいをしながら離れる。


「こちらは?」

 と、レーチェを見てアロエが尋ねた。

「うちの旅団の副団長だ」

 と説明すると、彼女は「ああ」と納得したように声を上げる。

「言われてみれば……、いつもと雰囲気が違うので」

 レーチェの螺旋ドリル状の髪型しか見た事がなかったのだろう。真っ直ぐに伸ばした髪型だとだいぶ印象が違う。


 俺達はちょっとした挨拶を交わし、アロエが肩からげている買い物用のかばんを見て、何を買ったのか尋ねた。

「今日はウル=オギト様の()()()がないので、お菓子を買いに。パンやジャムもこうした日に買い溜めておかないと」

「食料品は神殿から配給されるんじゃなかったか?」

「それでは好みの物が手に入らないじゃないですか。特に甘いものなんて、神殿では滅多に出ませんよ」



 そんな立ち話をして別れようとした時、アロエは俺達がゲーシオンに居る理由を尋ねた。

「ほら、この前紹介された物件。あれの内見に行って来たんだ」

「そうですか。それで、購入を決められたのでしょうか。ウル=オギト様はあなたの旅団が拠点を構えるのを心待ちにしていましたので」

「ああ、もう購入してきたよ」

「それは何よりです」

 レーチェはそれとなくアロエが買って来たお菓子屋を尋ね、この大通りに面した店を紹介されると、そこへ行こうと言う。


「それでは私はこれで」

 アロエは荷物をかつぎ直すと、歩道を歩いて行く。

 俺とレーチェは紹介された店に行き、小さな店の中に入って行った。──そこはパンとお菓子を売る店で、甘い匂いと小麦粉の香ばしい香りが店内に満ちていた。

「美味しそうな匂いですね。旅団の皆に買って行きましょう」

「そうだな、──朝食のパンも買って行くか」

 小麦の収穫が多いゲーシオンだからだろうか、パンの種類が豊富で、果物や木の実を練り込んだ物も多い。


「それにしても、本当にウル=オギト様から拠点を紹介されていたんですか」

「そう言っただろ。信じてなかったのか」

 彼女は「そうは言いませんが」否定しながら小さな溜め息を吐く。

「あなた、本当に何者ですの? 神様に住居探しまで手伝ってもらえるなんて」

「まあ……あれだ。象徴しょうちょう武具を作製する依頼を受けたんで、ずいぶん信頼されたようだな」

 胡桃くるみ入りの丸パンを大量に取って木製の盆(トレー)に載せながら、いくつ買って行こうかと彼女に持ち掛けた。

少し前に『《外伝》登場人物設定』に「岩山の廃坑」などの情報を追記しました。

岩巨人は次話に登場します。

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