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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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ゲーシオンで拠点選びを

 地の神ウル=オギトから渡された地図を持ち、この都市にある不動産を管理する者の所へ向かう。──それはつまり、管理局の一つの部署の事なのだが。

 街の建物を管理する施設は、小さな建物の中に入っていた。そこにはゲーシオンだけでなく、ミスランやシャルファーなど、他の都市にある建物の情報も取り扱っていた。


「内見ですか? ああ、この建物は……」

 二つの物件について示すと、受付の男は旅団の名前を尋ねてきた。

「ミスランにある金獅子の鍛冶旅団。──お待ちしておりました。神殿の方からも、すぐに案内するよううけたまわっておりまして」

 と言って立ち上がり、彼は外出支度を始める。

 俺とレーチェは顔を見合い、彼女は「どういう事ですの?」という風にまゆを寄せる。


「実は……この二つの物件を紹介してくれたのはウル=オギトなんだ」

「はい?」

 なんで神様がそのような事を。と考えているのだろう。

「とにかく、地の神は俺達の旅団の遠征拠点がゲーシオンに置かれる事を望んでいるって事さ」

「それはありがたい話のようですが、……何やら怖い気もいたしますわ」

「考えすぎだ」

 神は期待しているのさ、と副団長に告げ、俺達も「建築物管理課」を出て内見に向かう。



 * * * * *



 二つの建物を回り、管理局の局員には「なるべく早く決める」と告げて、帰ってもらった。

 俺とレーチェは正直どちらの建物でも十分過ぎるほどだと感じていた為、拠点となる建物の周囲にある物で判断しよう、という事になった。

「転移門への距離はどちらも大して違いはありませんわね。買い物は……」

「それも大して変わらないだろう。というか、この二軒はそれほど離れていないし」

「では、やはり鍛冶場が用意できそうな建物の方がいいのでしょうか」

「俺が遠征に来る訳じゃないからなぁ。──けど、錬金台くらいは置いた方がいいかもしれないな。将来の事も考えると、確かに鍛冶場があった方がいいかもしれない。……う──ん」


 街中を歩きながら、大通りから裏通りまで歩き回っていると、公園の横まで来た。


「お、ここは……」

 見覚えのある公園だった。

「あら、猫が居ますわ」

 レーチェが指差す方を見ると、芝生しばふの上で日向ひなたぼっこする茶色い二匹の猫の姿があった。

長椅子ベンチで一休みしよう」

 そう声を掛け公園の中に入ると、長椅子に赤茶色の丸っこい物が置かれていた。


「ぶにゃぁ~」

 その丸っこい物が動いて鳴き声を上げる。

「あら、この猫……まん丸で可愛らしいですわね」

「いや、どう見ても太り過ぎだろう」

 長椅子のど真ん中で寝ていた赤茶色デブ猫を挟んで座り、そんな話をする。

 丸っこい猫はレーチェが差し出した手に顔を近づけると、指先に鼻を近づけて匂いを嗅いで「ゥニャァ~」と精一杯の可愛い鳴き声を披露ひろうした。

 俺は後ろから猫を抱き上げ持ち上げてみる。


「おや? お前、少しせたか?」

「ぃニャァ~」

 ほんの少し、胴回りが細くなった気がする。

 上に持ち上げると、ビロ──ンと胴体が伸び、見た目よりもずっと長い身体があらわになった。

「ちょ、ちょっと。そんなに伸ばして大丈夫ですの?」

 レーチェは奇妙な心配事を口にした。

「猫って奴は背骨が曲がっているからな。伸ばすとこんなもんだ」

 胴体がちぎれるとでも思ったのか、猫を下ろすように訴えてくるレーチェ。


「はははは、大丈夫だよ……よいしょ」

「ニャゥぅ~」

 解放してやるとデブ猫は長椅子に腰掛けたレーチェの膝の上に逃れる。

 その丸い背中を撫でるレーチェ。

「この猫と会った事が?」

「ああ、以前もここで見たんだ。他にも──ほら、あの二匹の猫。あいつらも居た」

 芝生の上からこちらに歩いて来る二匹の猫。

 二匹が長椅子に跳び乗り、真ん中の温かい場所で身を寄せ合う。

「あら、この子達……兄弟なのでしょうか?」

「たぶんな」

 その背中を撫でてやると茶色い猫は目を閉じ、気持ち良さそうにしている。



「それにしても、どちらの建物にしましょうか。どちらも値段はそう変わりませんし」

「そうだなぁ。両方とも二階建てで地下室もあるし、立地的にも代わり映えしないしな」

「では、こうしたらどうでしょうか。──せっかく近くに公園があって、猫達も住んでいるようなので、この公園に近い方を購入するというのは」

「はは──そりゃいいな」

 ミスランでは宿舎で猫を飼い。

 ゲーシオンでも公園の猫を可愛がれる訳だ。

 そうした場所が、厳しい冒険から帰還した冒険者の安らげる場所になれば結構な事だ。


「それにしても、あの猫嫌いのレーチェからそんな提案が出るとは……」

「あら、そうですわね」

 彼女は事も無げに言って退けた。

 膝の上で丸まっている太っちょの猫を撫でながら。

「一度受け入れてしまうと、なぜ嫌っていたのかと不思議なくらいですわ」

「そりゃ結構」

 そう言いながらデブ猫の頭に手を伸ばす。

 デブ猫はかゆい所をいてもらっているみたいに、俺の指に撫でられている。


 レーチェが猫を嫌っていた理由など、きっと子供心に浮かんだ、些細ささいな幻想が原因だったのだろう。

 子供というのは間違った認識も、正しいものとして感じてしまうものだ。


 覗いていた猫の目が細くなるのを見た子供のレーチェは、その猫の中に()()()()()()()()()、──そんな誤解をしたのではないだろうか。

 たぶんそれは、子供の頃に親から話して聞かせてもらった怖いおとぎ話などが原因の、つまらない誤解だったに違いない。

猫が痩せたのには理由が……

二人がもう少し公園内を見ていれば気づいたはず。

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