双子の勧誘
「ただいま戻りましてよ」
青く塗られた軽硬合金製の鎧などを着込んだレーチェと、軽硬合金の肩当てと胸当てを身に着けたエウラが入って来た。
「あら、可愛らしいお客さんじゃありませんの。双子? 双子ですのね? 初めて見ましたわ」
そう言ってまじまじと双子の顔を見比べて「姉妹揃って冒険者ですか、仲がよろしいのね」と言った。
「あ……いえ、ぼくは男です──」
「ぇ、あら。ごめんなさい……ですが──いいえ、なんでもありませんわ」
そうは言ったが、どちらかと言えば姉の方が男みたいだと思ったのは明らかだった。エウラもこっちが男の子なのかと驚いた様子を隠さない。
「この二人はゲーシオンの『黄土の岩窟旅団』という所を抜けて来たらしい」
レーチェに言うと、このお嬢様はこちらの意図を理解せず。
「(へぇ──)そうなんですの」
と興味が別の方へ向いているらしく、生返事で返されてしまう。
「ところで、こちらのお姉さん達は……?」
双子の弟が視線に耐え兼ねてそう口にする。
「この二人はうちの旅団員でね、まだ発足したばかりの小さな旅団だが」
「そうですわね、看板も拠点も小さな猫の額ほどの旅団ですわよね」
彼女がそう言った所にいつもの猫が鍛冶場にやって来て「にゃ──」と鳴き声を上げる。
「ひぎゃぁっ! ねっ、猫ですわ‼」
レーチェ(これでも副団長である)が猫から逃げながら、鍛冶場の奥へ後退りする。
「いい加減慣れろよ……」
エウラが猫を抱き上げて外へ連れて行こうとするので、俺は彼女に小魚の煮干しを持って行けと言って小箱を手渡す。
「え、ここって鍛冶屋じゃないんですか」
双子の姉が言うので鍛冶屋兼旅団だと説明し、良かったら旅団に入団するかと声を掛けると、姉は考え込んでいる様子だ。
「う──ん、旅団に入るのは少し考えますね。あんな事があったので」
「姉さん、ここの人達はあんな自分勝手な奴らとは違うと思うよ」
双子の会話を聞いていたレーチェが会話に割って入り、以前の旅団であった出来事を聞いて頷く。
「あら、それでしたら大丈夫でしてよ。この団長はそんな無粋な真似は致しませんわ。それに副団長である私がそんな横暴は許さなくってよ」
彼女はそう言うと、大きく迫り出した胸を強調するみたいに大見得を切った。
「とまあ、猫にすらビビるような副団長の意見は置いておくとして、『仮入団』という形で参加するのはどうだろうか。俺達も君らの実力がどの程度か分からないし、入団届けを提出するのは五日ほど一緒に行動してからでもいいだろう」
そうすれば宿に泊まらなくても旅団の宿舎を使えばいいしな、という言葉に惹かれた様子の姉は、「それなら……」という風に前向きになって双子は顔を見合わせると、「お世話になります」と頭を下げた。




