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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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魔法の銃とかなんとか

 久し振りに鍛冶場での作業に没頭し、徒弟達に今までよりも複雑な錬成について教えながら、実際に武器を作ってみた。

 さすがに手間取るかと思ったが、体で覚えていた作業はしっかりと感覚が残っていた。──長剣にいくつもの強化を鍛造たんぞうの段階で付与し、さらには錬金台を使って剣に別枠の能力を付与する。

 こうした作業が行えるように、頭だけでなく手先でしっかりと学び、経験する事が大切だと説明する。


「こうした職人の技術は感覚的な部分も大きいが、実はしっかりとした理屈を理解し、それを実践する行程が一番重要だ。頭で理論を組み、時には今まで習った事を除外して、新たに錬金鍛冶の発展に取り組んで欲しい」

「魔法の剣のような、ですか?」

「もちろんそうした物もそうだが。それ以外にも洗濯機や冷暖房装置など、生活に役立ちそうな物を開発すれば、管理局がその新技術に対して報酬を支払ってくれるぞ。そうした発想アイデアは早い者勝ちだからな、まだ作られていないような物があれば、管理局に売りに行くべきだな」

 なるほど~と、二人の徒弟は俺の話に耳を傾けている。


 実際、管理局から与えられる新技術開発報酬のお陰で、俺と旅団には潤沢じゅんたくな資金がしばらくの間は入り続けるのだ。


(ぶっちゃけ金なんか持っていても他にやる事があるし、こっちにはゲームなんかもないからなぁ……)


 自由になる時間があり、試したい遊びがあるならそれに金を使ったり、うまい物を食いに行ったりするのだろうが、俺は自分で料理もするし、いまさらどこかへ旅に行く気にもならない。さんざん冒険に出ていた所為せいか。


(もともと俺は、ゲームをやってても課金とかしない主義だったが)


 ああいうものは一度やり始めるとキリがないのだ。課金させる方はありとあらゆる手段を構築して、プレイヤーに金を延々(えんえん)と吐き出させるように作れるからだ。──もちろんそうしたゲームばかりではないが。

 そうした事を思い出していると、レースゲームやFPS(一人称(First)視点(Person)射撃(Shooter))物のガンシューティングを懐かしく思い出してきた。


「銃か」

 俺はそれをこちらでも作れるか試した事があった。かなり前の事で、未熟な錬金鍛冶能力しか持ち合わせていなかった頃だ。

 もちろん火薬で鉛玉を飛ばすような物ではなく、魔力を消費して魔法を撃ち出す銃の作製だ。


 ──だがそれは上手くいかなかった。


 いくつかの実験をしたが、銃に単純な攻撃魔法の術式を封入し、魔力結晶を活動力エネルギーとして魔法を撃ち出す銃を作ったが、そのまま使うと一発で銃が壊れたり、あるいは一発で魔力結晶の力を使い果たしたり。

 威力を弱めて使うと、今度は弱い火炎放射器の様になったり……

 なんとか小さな魔法の弾丸を射出し、対象にぶつかると爆発するような物を作れはしたが、お蔵入りにした。


 魔力結晶の消費量に対して、威力が弱すぎるのだ。

 それに、安易に魔法を武器とするのも危険だと理解していた。

 もしかするともっと簡単な方法で威力を制御コントロールしたり、強力でいながら魔力の消費が抑えられる物も出来るかもしれないが。──あれ以来、銃の作製は止めていたのだ。



 俺は徒弟達に鍛冶場の掃除を任せると、宿舎の方に戻る事にした。

 ──いかん。余計な事を考えて、変な郷愁きょうしゅうに捕われてる場合じゃない。

 数日後にはレーチェとの決闘も待っている。


 空の色は群青ぐんじょう色になっていたが、まだ夕食まで時間がありそうだ。

 宿舎の庭では十人近くが実戦形式の訓練を行っていて、そこかしこで木剣が硬い物を叩く音がする。

 メイの姿はなく、レオシェルドが新米ルーキーを中心に相手をしているようだった。

「反撃を恐れるな! もっと踏み込んでこい!」

 レオの厳しい声が飛ぶ。


 敵の攻撃をかわして安全に攻めたいのは理解できるが、反撃や回避を恐れて攻撃できないようでは上級にはのぞめない。

 白銀騎士ともなると、洗練された戦闘技術を持っている個体が多く、それなりの手練れになっていないと危険なのだ。

 中級でも死霊の騎士くらいになると、生半可なまはんかな腕では太刀打ちできない相手も出てくる。精鋭の死霊騎士には何種類か居て、騎馬で襲ってくる者や、重装備に身を包んだ者も出現する。──危険だ。


 だがいずれの戦いにいても、恐れを振り払っての一歩が必要になる。

 前に深く踏み込む一歩。それが勝敗を決定づける事もあるのだ。

 躊躇ためらいから弱い攻撃を放ってしまい、反撃で手痛い一撃を喰らう事も。──昼のメイとの戦闘訓練が思い出される──


 踏み込んでの重い一撃を防御させられれば、そう簡単に反撃には出てはこれない。

 そうした戦いの感覚を養うには、訓練と実戦でどれだけの数をこなせるかに限るだろう。

 普段からの厳しい訓練に耐えられてこそ、実戦でその訓練がきてくるのである。

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