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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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悩みながらの訓練で惨敗

 鍛冶屋に戻った頃には昼食の時間を回っていた。

 研究室の机を新しく購入しなければならないな、そんな事を考えつつ宿舎に戻り、昼食を食べようと食堂へ向かう。


「どうかしましたか? 浮かない顔で」

 食堂で後片づけをしていたエウラにそう言われてしまった。

 しかしそう口にした彼女の表情も陰りが見える。

「うんにゃ……まあ、色々あってな」

 曖昧あいまいに返答をして昼食はないかと尋ねる。

「『鶏肉のおじや』と『かし馬鈴薯じゃがいも』と『生野菜サラダ』なら」

「残っているならよかった」

 俺は鍋の中を見て残りのおじやと、温めたじゃが芋に牛酪バターを落として生野菜に暗生草と水玉葱みずたまねぎ調味酢ドレッシングを掛けた物を用意する。


 皿を洗い終えたエウラは「訓練に戻ります」と言って食堂を出て行った。

 代わりに食堂に入って来たのは二匹の子猫達。

 俺の姿を見つけると駆け寄って来て、椅子に座った俺の膝に上に跳び乗る。

「ニャァ──ゥ」

 白い子猫は甘えた声を出して丸まり、青毛の子猫はテーブルの上に乗って、皿に載ったじゃが芋の匂いを嗅ぎだす。

「こらこらテーブルに乗るな。また怒られるぞ」

 脇腹を押して離れるように言うと、青猫は「ウナァ~」と不服そうに鳴き声を上げる。

 だが子猫は言う事を聞いて床に降り、壁際に置かれた椅子に跳び乗ると、そこにちょこんと座り込む。

 遅い昼食を食べながら考え事をしていた為、味わっている暇もない。



 ずっと考え事をしながら──気づけば皿を洗っていた。

 その足下で二匹の子猫が足にじゃれついている。

「離れてろ、危ないぞ」

 皿を片づけて調理場を出ると、子猫達もついて来た。

 玄関先の廊下に白い母猫の姿があり、俺が子猫を引き連れているのを見るとその場に座り込んで、俺が近くまで来るのを待っていた。

「どうした、子供達を探していたのか」

 すると彼女ライムは「ニャァ~」と返事をして尻尾を大きく振る。

 俺は母猫に子猫を預けると庭に出て、仲間達と共に訓練を始めた。



 新人達の相手をしながら混沌こんとん結晶の事や、五日後のレーチェとの決闘について思い悩んでいると、大柄な新人の後で子供の様に小柄な人影が前に立った。

 ぼうっと木剣を構えていたが、目の前の相手がメイであるのに気づくまで数秒かかってしまう。

「え、ちょっ……ま──」

 木剣をはすに構えながら間合いを取ろうと一歩後退する。

 素早い動きで迫って来た少女に木剣を振り下ろす。


(──しまった!)


 下がりながらの曖昧な攻撃を繰り出してしまった。

 鋭くもなく、重くもない、目的の曖昧な攻撃。

 そんな攻撃を彼女は体をわずかにひねってかわすと、木剣を手袋グローブをした手で打ち落とし、俺のふところに飛び込んでくる。

「ちぃッ!」

 すかさず右足を振り上げ、少女に向かって膝蹴りをぶつけて引きがそうとした。

 ところが今度はその右足をがっちりと防御し、膝を抱え込まれて横に捻られると、あっさりと転ばされてしまう。


「ま、まいった……」

「団長。なにぼ──っとしてたの? ぜんぜん手応えがなかった」

 うつぶせになった俺の背中に膝を乗せ、尻をぽかぽかと叩いてくる少女。

「おい、もうどいてくれ。土で服が汚れる」

「もう一戦しよう」

 立ち上がった俺に彼女が言う。

「いや、やめておこう」

「もう一戦」

「やだ」


 俺が断固としてメイとの再戦を拒絶していると、彼女は不機嫌そうに頬を膨らませた。

 服に付いた汚れを払いながらメイから逃げようとすると、その背中に声を掛けてくる彼女。

「そんなだと、今度の副団長との訓練で負けちゃうよ」

「む……誰からそれを聞いた?」

「副団長から」

 理由を尋ねるとどうやら最近、俺が鍛冶場に居る時にレーチェは、メイとの稽古に励んでいたらしい。


「副団長もだいぶ動けるようになってきたからね。今日みたいなふぬけた感じじゃ、団長の負けかなぁ~」

 などと、らしくもなくあおってきた少女。

 俺は鼻で笑ってその挑発を吹き飛ばす。


「レーチェはどういった動きを練習していた? 打撃か? それとも組み技か?」

「打げ……あっと、詳しい話はするなと言われてたんだった。いまのは無しで」

 打撃の訓練か……レーチェがいかに鋭い殴打や蹴りを見舞ってきても、俺には防ぎようがある。

 メイのような小さな体から繰り出される初速の速い攻撃よりも、レーチェ相手なら対応しやすいし、反撃もし易いのだ。

 体格差があると有利な点はもちろん大きいが、小柄でいながら一撃が重く速いメイは、ある意味で俺がもっとも苦手とする相手かもしれない。


 蜂の様に舞い、蜂の様に刺す。と、モハメド・アリは言っていたが。

 メイは電光の様に走り、爆発の様に破壊してくるのだ。


 それは殺傷性能を下げたグレネード弾みたいな威力で。土手っ腹に一撃喰らえば、内臓が引っ繰り返ったみたいになって、ゲロを吐きながらのたうち回る羽目になる。

 防御魔法のお陰で犠牲者は出てないが、旅団の仲間内でも、メイの相手をするのを嫌がる者は多いらしい。

 最近ではリトキスすら、メイの相手をするのは骨が折れると言い出すくらいだ。


 俺はメイから得た情報を考えながら、鍛冶屋に戻ると言って少女から逃げ出した。

「そんなんだと負けちゃうよ!」

 メイはそんな俺の背中に厳しい言葉をぶつけてくるのだった。

やっと重い展開から軽いノリに。


感想などいただけると嬉しいです。

内容が難しい部分もあるので、気軽に感想を……という風にならないかもですが。

お気軽に「こういう展開が好き」とか、読者目線の感想をいただけたら幸いです。

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