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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第二章 集いし者達

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雑務と来客 ー双子の冒険者ー

 翌朝から旅団宿舎の庭でカーリアの剣の練習に付き合う──正直言って非力だし、基礎体力も低くて実戦から遠ざかっていた俺でも、片手で充分に相手ができてしまう。──それと並行して給湯設備の製造を行う。


 こちらは材料をレーチェが用意した物があるので、それを加工して宿舎の方に運んで組み上げることになった。完成してもちゃんと使えるかどうかは分からないが、おそらく失敗してもぬるいお湯が出たり、逆に凄く熱い熱湯が出たりするだけであろう。


 旅団の連中が帰って来た午後には、レーチェもカーリアも訓練相手となってしごいているらしい。──レーチェは俺よりも基本に忠実な教え方ができるので、初心者同然のカーリアには丁度良い相手であったようだ。


 そんな雑務と鍛冶の仕事をこなしながら日々を過ごしていると、午後に変わった冒険者達がやって来た。外見が良く似た二人の男女は、双子の姉と弟だという。どういう訳か姉は男勝りな感じで、弟は女物の服を着せたら女の子だと勘違いされること請け合いな、物静かでおしとやかな雰囲気を持っている、変わった双子の姉弟きょうだいであった。

 二人とも髪は栗毛色をしており身長や体格はそっくりで、胸の大きさも……非情な事に違いは判別できなかったのである。


「あなたがオーディスワイアさんですか、思っていたよりも若い方なんですね」と姉が言うと。

「か、鍛冶は年齢より技術で評価しろって怒る人も居るんだから……!」と弟が姉をたしなめる。

「……それで、今日はどのようなご用でしょうか?」


 双子は互いの顔を見合って頷くと、背負っていた背嚢はいのうから銀色の延べ棒を取り出して言った。

「これで『ちょやうりけん』を作ってください」と言ったのだ。

「ちょ……何だって?」

 姉が弟を小突いて「同時に言うなって言ったでしょ!」と怒る。


「長剣と槍を作って欲しいんです」

 姉が弟を押し退けて言う。二人が持って来た金属の延べ棒はクロム鉄鋼だった。美しい白銀色の延べ棒を見るとかなり上質な物と思われた。

 続けて双子は精霊石や硬化結晶などを取り出して、これで強化錬成もして欲しいと言う。双子は()()()()()金という感じを出しながら、頭を下げて金の入った皮袋を差し出す。


「これでどうか、どうかよろしくお願いします」

 皮袋の中身を見るとぎりぎりではあるが、規定額には届いている。

「まあ、これでもいいが。強化錬成で武器が失われる事もありえると承知しておいてくれ」

 そう言いながら、槍や剣の柄の材料と長さなどを決める。


 二日後には結果が出ると告げると、双子は分かりましたと言って軽くなった背嚢を背負う。

「二人はどこの旅団員なんだ?」

「私達は『黄土の岩窟旅団』に入っていたんですが、あまりに旅団長の横暴が酷くなったので抜けて来たんです」

「他の団員の人達も皆辞めるって言い出して、大勢が旅団を抜けたんです」


 なにやら新しい旅団長になった男が調子に乗って、責任量ノルマを一方的に決めて旅団員に押し付けたらしい。

「あ──、そりゃいかんな」

「そんな訳で、私達はあの旅団に愛想を尽かして出て来たんです。それで以前から貯めて置いたクロム鉄鋼と素材を持って、近頃耳にした噂の錬金鍛冶師に、新たな武器を作ってもらおうと思ったのですよ」


 都市ゲーシオンにも俺の噂が流れているのか、これは忙しくなりそうだ──そんな事を考えていると、入り口からレーチェとエウラが帰って来た。

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