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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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月下の大要塞

新しく登場する転移門先「月下の大要塞」や、そこに登場する危険な敵の話など。

次話でオーディスワイアが月下の大要塞に何度も挑戦した話が語られます。

 階段に座って考え事をしていると、子猫達が俺の足下で追い駆けっこを始めた。

 狩りの練習を兼ねた取っ組み合いもして、廊下でごろごろと転げ回る。

「自由な奴らだなぁ」

 一匹の子猫が近づいて来て、俺のズボンを引っ掻き始める。その子猫を抱き上げると、膝の上に乗せてお腹をくすぐってやった。

 すると青毛の子猫は嫌がって指に噛みついてきた。──本気で嫌がっている訳ではないようで甘噛みだったが。


 そんな風に子猫達とたわむれながら黎明れいめいの白刃旅団について考える。

 あそこは若手ばかりで結成された旅団だと聞く。

 当然「旅団統合支援課」からすれば、そんな旅団の在り方を認める訳にはいかない。旅団自体を解体すると言っていた。もし存続させるとしても、先達せんだつの冒険者を旅団長に選出して、教官役なども参加させるだろう。

 それに対し、あの団長アンクバートが反発するのは目に見えている。


 若者だけで冒険に挑もうという気概きがいは買うが、そもそもそれは未熟の裏返しでもある。

 大人に反発して噛みつくだけでは成長は見込めない。


 今まであったものを受け入れて、そこから新たに踏み出す。そうした意識がなければ、有効なものを取りこぼしてしまう。

 そうしたものの中には技術についてはもちろん。その技術を獲得する為の最短経路(ルート)などの、学ぶ為の労力の短縮化についての知恵もあるのだ。

 そうした事を先達が学び、それを後生の為になると教えてくれるのだから。若者はその機会を投げ捨てるのではなく、受け入れて自分の力にするべきなのだ。


「どうしたもんかねぇ……」

 余所よその旅団の事とはいえ、同じ冒険者という関係にある。いつかはうちの冒険者とも共闘する場面もやってくる。「無限の混沌こんとん領域」が発生すれば、共に命を預け合って、強大な敵との戦いにのぞむ事になる。

 管理局に任せるべきなのだろうが、あの筋力バカの若者が、力の無い管理局の職員の言葉に耳を傾ける未来が想像できない。

 賢者ヴォージェスがなんらかの手段を講じるかもしれないが。


「なんとかならんかねぇ」

 なすがままに撫でられていた子猫が俺の手から逃げ出した。

 代わりに走り回っていた白猫が膝の上に乗って来て、ごろんと転がってお腹を見せる。

「よしよしよしよし……」

 甘えてきた子猫のお腹をわしゃわしゃと触っていると、玄関からカムイとレンネルが冒険から帰って来た。


「ただいま戻りました」

「ああ」

 二人は素材や入手した武器などを詰めた袋を背負っている。

「大量だな」

「今日はリゼミラさんやダリアさんらと『月下の大要塞』に行って来たんです!」

 と、やや興奮気味に話すカムイ。


「おいおい大丈夫だったか。上級難度の中でも戦士系の敵が多い、危険な領域じゃないか」

 見る限りでは大した怪我はしていないようだが、鎧には傷が増えているように思える。

「なんとかなりましたよ。──ラピスさんが回復魔法も使ってくれたので」

 レンネルは冷静に答える。──かなり危ない状況にもなったのだろう。そう表情が言っている。

 ラピスは多彩な魔法の使い手であり、かつて三人で戦っていた時には優秀な回復役だったという話だ。


「混沌の戦士。すごく強かったです」

「そうだな。『荒廃した都市と岩山』に出る奴とは違って──そう、攻撃力や一撃の重さは、リゼミラさんや団長みたいで。攻撃や回避の正確性はリトキスさんみたいな……」

「それはめられているのかなんなのか」

 褒めているんですよ。カムイはそう言いながらほっとした様子で溜め息を吐く。

 かなり危険な想いをしたのだろう。

 カムイもレンネルも表情には出さないようにしているが、混沌の戦士の話をする時に二人の身体から、気配が消えるみたいな感触を覚える。明らかに死を間近に体感した者の反応だった。



「黒騎士が出現する区画には行ったのか?」

「いえ、今回は行きませんでした」

「リゼミラさんもダリアさんも、今の俺らには危険だと言うので」

 そんなに危険なんですか? と尋ねる二人。


「黒騎士は『暗黒鉄ヴァルガーム』という特殊な金属で出来た装備に身を包んだ敵で、その金属は硬く、重いんだ。

 しかもその戦士としての技量も高く、レオシェルドでさえ、二体の黒騎士を同時に相手にするのは危険だと言うくらいだ」

 それを聞いて二人の若者は、()()()を飲み込んだような顔をする。

 俺は二人の様子を見ながら少し笑ってしまった。それほど二人にとって訓練教官としてのレオは大きな存在なのだ。


「それはそうと、どんな物を手に入れて来たんだ」

 見せてみろと、二人の背負っている荷袋を受け取る。

 そこに入っている武器や防具は、混沌の戦士が身に着ける強力な剣と籠手などだった。

 その中で、特別な剣が入っているのを見つけた。それは柄頭つかがしらを見ただけでも分かるものだ。

 柄頭に七色に光る水晶がめ込まれている。


「おいおい、これは『月光の騎士』が持っている魔法の剣じゃないか。奴と遭遇したのか」

「ええ、ですが僕達は戦いませんでした。先輩達三人が戦うのを見守っていました」

「見ていてめちゃくちゃ強いのは分かった」

 月光の騎士が手にする「月光の剣」は、半透明な刀身を持つ奇妙な剣で、これは魔法の効果を打ち消し、防御魔法などを貫通する性能を持っている武器だ。

 この魔法の武器の強みだけでなく、月光の騎士の強さは、多対一であっても受け流しと反撃を繰り出してくる点にある(らしい)。

 剣技という点では、レオシェルドに通じるものがある。──それほどに強いのだ。


「ただこの剣は魔力も気の力も通さないからな。斬れ味は鋭いが、斬破などが使えなくなるという欠点もある」

 俺がそう説明すると、二人はそろって「怖い武器ですね」と口にしたのだった。

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