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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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管理局からの通達

 夕食前に管理局の職員が二人やって来た。

 なんでもこれからの旅団のあり方について「旅団統合支援課」からお知らせがある、と言うのだ。

「旅団の規模について、ある一定の制限を設けるという話になりまして……」

「ああ、それはフレイマの『朱き陽炎かぎろいの旅団』団長から聞いた。旅団員の定数を定めたり、所有する建物の大きさなどを決めたいんだろ?」

「ええ、そのとおりです」

「うちはまだ、それほど大きな旅団ではないが」

「ですが所有する敷地面積はミスランの中でも五指に入るものです」

「そうなのか?」

 もしかすると鍛冶屋の店舗も面積に数えているのかもしれない。

 俺は鍛冶屋の二階には旅団員が住んでいない事を説明し、厳密には鍛冶屋は旅団とは別物だと主張した。


「旅団員の数は四十名まで。建物──主に宿舎の面積についても各旅団との協議に入っている最中です」

 まだ厳密には決定されていないようだ。──ミスランとフレイマでは扱いが異なるのかもしれない。


「しかしそうなると、すでに団員が四十名を超えている旅団は難しい選択を迫られる事になるな」

「そうですね。──それもあくまで旅団は『()()()()()()()()()、フォロスハートの為に働く冒険者の集まり』、でなければなりませんので。中堅以上の冒険者だけが集まった旅団などではいけません。そこは管理局と旅団が話し合っていかなければならないでしょう」

 そこまで説明すると、管理局の職員は「そうは言っても」と言葉を繋いだ。


「そうは言っても、若手を成長させられる優れた指導者も居れば、居ない旅団も出るでしょう。

 そこで互いの冒険者の育成方法や訓練など、必要な情報を管理局にも提供していただいて、それを参考に全ての旅団が、優れた冒険者を輩出する可能性を持った旅団になるようにする。それが我々の使命であると考えています」

「それは結構だが。管理局の意向にそぐわない活動をする者や旅団もあるだろう。──『黎明れいめいの白刃旅団』と管理局の職員が何やら揉めていたが」

「ああ、あの若造の……」

 俺と同年代の職員が口にした。


「あの旅団の理念──みたいなものは、『若者のみで強くなれる』という、子供じみた一点の目的意識のみが専行し、具体的な方策などはまったく無いも同然で、本当にお話になりません」

 二人の職員はあの旅団に扱いについて、管理局がある決定をした事を話してくれた。


「実はあの旅団は()()()()()()()事が決まりまして、それで別の職員が彼らの今後について話し合いを始める予定です」

 なるほど、先ほど見たのはその「話し合い」が、相手にまったく受け入れられていない場面だった訳だ。

「若者のみの旅団を」という思想の中心であるアンクバートは、いずれ自分が大人になり、若者を育成しなければならない立場になる事を理解していないのか。


 ──まさか自分は年を取らないとでも思っているのか──


 想像力の弱い人間とは時に、頭が弱いと言われても仕方がないほどに、単純な事実に気づこうともしないらしい。

 ここでは三人の溜め息が交錯してしまった。




 その後も数枚の紙を提示されながら説明を受け、今後も「旅団統合支援課」と協議しながら、旅団のあり方について考えていきましょう。という前向きな姿勢を見せる職員達。

 管理局も冒険者の活動に迫り、能動的に情報を集めるように変わっていっているらしい。

 二人の職員を宿舎の外にまで送り出してドアを閉めると、ばたばたと小さな足音が廊下に響いた。


 廊下を駆け回る子猫達。

 まるで取っ組み合いをしているみたいにじゃれ合っている。

 しばらくするとそれにも飽きて、それぞれの思う場所に向かって行き、転がったり、爪を研いだりしていた。

 一匹の白い子猫が俺の側にやって来て、足にじゃれついている。──抱っこしろという事なのか。

 少し大きくなった子猫を抱き上げると、肩に飛び乗って小さな頭を頬や後頭部にこすり付けてくる。

 人懐ひとなつっこい子猫を肩に乗せ、俺は階段のすみに腰掛けた。


 考える事がまた増えてしまった。

 旅団統合支援課──別名「旅団支援局」──から受け取った紙をレーチェにも見てもらう事にして、現状の金獅子の錬金鍛冶旅団の規模を考え、教官役に上級冒険者。中級冒険者と若手冒険者に振り分けて考える。

 俺は旅団長だが旅団専属の鍛冶師でもある、かなり特殊な立場だ。──管理局も、そうした人材を「二人分」に数え(カウントし)たりはしないだろう。


「やれやれ……」

 とか考えている間も、肩に乗った白猫は頭や体をこすり付けている。

 しかも気づかないうちに青毛の子猫が膝の上で丸まっていた。

 俺はその子猫の頭を撫でてやる。


「おいおい、もういいだろ?」

「ニャァ」

 肩に乗った背中を撫でてやると嬉しそうに鳴き声を上げる。鼻先に指を差し出すとくんくんと匂いを嗅いでから、ぶつかる勢いで俺の頬に頭をこすり付けてきた。


「猫の気持ちもよく分からん」

 グリグリと優しい頭突きを受けた俺は、二匹の子猫を膝の上であやす事にした。

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