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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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小豆と糯米

 金獅子の錬金鍛冶旅団の拠点へと戻った俺。

 すると門の上に白い物があるのに気づいた。日が傾き、空の色も朱に染まり始めた時間。

 門を支える柱の上に猫のライムが丸まっていたのだ。

日向ひなたぼっこでもしてたのか」

 俺が声を掛けると、白猫ライムは高い柱の上から下に居る俺を見下ろす。

「ニャァ」

 敷地を囲む壁に飛び乗り、柱の上に上ったのだろう。どうやって宿舎を出たのかは分からないが、外に出る事さえ出来ればライムは旅団から抜けて、野良猫に戻る事も出来る訳だ。


「逃げ出すなよ? なんだかんだ皆お前の事を気に入ってるんだから」

「ゥニャァ──」

 ライムの曖昧あいまいな返事を聞きながら扉を開けて中へと入る。すると母猫は柱から壁に、壁から地面に飛び降りて俺の横を歩き出した。

 庭ではまだ訓練をしている仲間も居る。



「ただいま──」と宿舎の中へと入ると、玄関先に大きな麻袋が四つ置かれていた。

「おかえりなさい」

 そう言ったのはリーファ。

 彼女は冒険に出ていたらしく、軽装ながら防具を身に着けていた。


「どこへ行っていたんだ?」

「『嵐の広野と鉱山脈』へ。新米達の実戦訓練に付き合っていました」

「そうか。それは助かる」

 徐々(じょじょ)にでも実戦に参加するようにしないと、いつまでっても上達しない。

 ()()()()()()()()()も言っていたではないか。「修業して達人になるのを待ってから戦場に出るのか」と、──そんなはずがない。

 完全に成熟してから就業する奴など居ない。

 俺の時もそうだった。

 経験ゼロからちょっとの戦闘訓練をて、気合いで冒険に出たのだから。


「採掘に取り組ませていたら灰色亜人グリザールの集団と遭遇そうぐうしまして、そこで大量の炭骨金属ダートマコンを手に入れられました」

「おお、それは助かる。そろそろ買い足しに行こうかと思っていたところだ」

 炭骨金属は灰色亜人が集めている事がよくある。奴らはそれと鉄を混ぜ合わせて、軽硬合金フラウレグムに似た金属の武器を作製するのだ。

 奴らは主に洞穴に棲息し、鉱石を掘り出す醜い亜人で……「ゴブリン」と呼ばれそうな見た目をしている怪人だ。──強くはないが、武器を持っているので新米には危険な相手でもある。



「ところで、この袋は……」

 と、袋を見ると、そこに「小豆あずき」と書かれていた。

「ああ、ウンディードからの贈り物か」

「ええ……って、なんで知っているんですか。ついさっき神殿からのつかいだと言う人が来て、届けてくれたんです」

「それにしても……」

 四袋もある──そう思って各袋を確認すると、二袋には「糯米もちごめ」と書かれていた。


 それにしてもかなりの量だ。乾燥小豆に糯米が二十キロ分ずつ。

 これを使ってあんまんを作ろう。

 大福でもいい。


「あの……一緒に食料庫に運んでもらえますか?」

「おう」

「ニャァ」

 何故か足下でライムも返事をする。

 俺はリーファと一緒に地下へと食材を運んで行った。

 十キロの袋を担いで運び、玄関に戻ると、メイとユナも冒険から帰って来て、運ぶのを手伝ってくれた。

 廊下を走り回る子猫達を避けながら、四つの袋を運び終えた。


「糯米と小豆を少し調理場にも運んでおこう」

 俺は大きな袋から小さな袋に移し替え、それを調理場に持って行こうとすると、ユナとメイが袋を持ってくれた。

「今日は『古びた城塞じょうさい都市』に行って来たんだよ」

「巨大な鎧武者と戦いたい、ってメイが言うんです」

「おいおい、ちゃんと仲間と連携して戦ったか?」

 俺の心配を余所よそに、メイは得意そうに語る。

「大丈夫だよ。レンネルにエアネル、それにフレジアも一緒だったんだから。楽勝だよ」

 例の巨大な騎士は倒すと数日間は復活しないらしい。その前に居る無数の死霊兵士なども数日に一度復活するのだという。


「残った巨大な鎧は管理局が回収してくれました。神騎兵の装甲に使う金属に加工するそうです」

 ユナがそう説明してくれた。管理局は巨大な鎧を回収し、その分のお金を支払ってくれたそうだ。

「あの大きな斧槍ハルバードも買い取ってくれました。──あんな大きな武器じゃ誰も扱えませんから」

 手強い相手だけに、報酬もかなり大きな金額になるらしい。もちろん数人で山分けするので、一人一人の取り分は減ってしまうが。


 メイはなんと、振り下ろされた武器から腕を駆け上がり、巨大騎士の頭に飛び掛かって兜を殴りつけたんだとか。相変わらず無茶苦茶な戦い方をする。──リゼミラあたりは喜びそうだが。

「大剣を背負った傭兵」──『ベルセルク』のガッツの事。

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