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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第二章 集いし者達

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カーリア、両親を説得する

 旅団の皆に指示を出して、今回は回復薬の原料となる薬草や、魔力を回復する薬を作るのに必要な暗生草を集める班と、主に管理局に渡す岩塩などを集める班に分けて、探索へ向かわせる……

「旅団長」

 とメイが声を掛けてきた。俺はオーディスで構わないと言っているのだが、旅団の連中は大抵そうかしこまった呼び方をする。


「うん?」

「カーリアは剣を学びたいらしい。私では無理なので旅団長に教えてもらえば? と言っておいたので、今日辺り来るかもしれない」

「おいおい、俺も仕事があるんだが」

「それは彼女も分かってると思う」

 少女はそう言うと、ユナやエウラと出て行った。


 やれやれ、また厄介な事が増えそうだな。とはいえ一度カーリアとは、話をした方がいいかもしれない。旅団で雇うとは言っていないし、彼女の両親についても、話しておかなければならないだろう。


 午前中は鍛冶の依頼を受けたり、仕上げた品を受け取りに来た客の相手をして、時間が過ぎて行った。

 昼食を食べている時にカーリアは店にやって来た。彼女は突然頭を下げると「剣術を教えてください」と口にした。


「剣術なんて呼べるものを、俺は習っていないのだが」

「そ、そうなのか⁉」

「ほら、俺って、実戦を重ねて強くなった口だから。最初こそうろこ族(蜥蜴人リザードマンの事)相手に苦戦したりもした」


 そこまで言って少女に、父親が殴り込んで来た事を話し、両親の許可が無ければ何も教えられないし、仮に教えたとしても、旅団で雇うかどうかは別問題だと突き放す。

「わかっている、わかっています! 父には納得してもらうつもりでいる!」

「つもりじゃ困る、君は両親とよく話をし、納得させてから訓練するなり、なんなりすべきであって、両親すら説得できない様な覚悟では、到底冒険者など務まる訳が無い」


 少女は泣き出す一歩手前といった表情をして、鍛冶場を出て行く。厳しいようだが冒険は危険が付き物だ。死ぬかも知れないのに実力が足りていない者を、旅団に加えるなど俺にはできない。


 その日の午後。旅団の面々が帰って来るのと同じくらいにカーリアが現れた。少女は父親が書いたという誓約書を持参して、それを突き出して見せる。

 そこには娘カーリアに説得され、少女が二年間の間に冒険者になれなかったら、家業の鍛冶屋を継ぐ、という内容の誓約が書かれていた。


「ほう」

「だから私に剣を教えてくれ──ください!」

「訓練といっても場所が無い」

 俺がそう言うとメイが言う。

「宿舎の庭でやればいい、私達もそうしたし」

「あら、それでしたらお風呂場の給湯設備も、同時に作って頂きましょうか。あちらの机の上に書かれている物、あれは給湯設備の設計図ですわよね?」


 あがががが、こいつら揃いも揃って俺をこき使うつもりでいるな。──だがカーリアに両親を説得して来いと言った手前、後には引けなかったのである。

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