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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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水の神と雑談を

日常回(神様への復調行脚)が続きます。


「そうだ、アリエイラ様に聞きたい事が」

「なんでしょう」

「街で小豆あずきは売られていますか? 少し買っていこうと思いまして」

「小豆ですか──実は小豆はあまり市民の中に浸透していないそうなんです。限られた店でしか扱っていないと聞きました」

「そう──ですか。まあ向こう(地球)でも、甘く煮て使うのが一般的でしたから。甘味料の少ないこちらでは、あまり流通しなくても仕方がないかもしれませんね」


 困ったように聞こえたのだろうか、アリエイラはうなずくとこう言った。

「それなら、神殿に納められている小豆を分けてあげます」

 彼女はそう言って、壁に付けられた小さな小箱についたボタンを押す。

「これは管理局が用意してくれた、神官を呼ぶ為の装置です」と説明する。

 どうやら遠隔地に音や光で女神が呼んでいる事を伝える物(呼び鈴)らしい。

 しばらくすると誰かがドアを叩いてきた。


「失礼いたします」

 少女の神官が一人。ドアを開けて姿を見せたが、建物の中に入ろうとはしない。

「小豆を一袋。持って来てくれますか?」

「一袋……ですか? おそらく十キロくらいの重さになりますが」

「それでしたらミスランにある『金獅子の錬金鍛冶旅団』てに、二袋ほど送ってあげてください」

「かしこまりました」

 水の女神が言った事にまったく反論せず、神官は言伝ことづてを受けて下がって行った。


「申し訳ありません。なんか……催促したみたいで」

「いいんですよ。たぶんこのままでは余ってしまうみたいですから。料理長も小豆を使った料理を色々試作しているそうなんですが」

「食卓に出すとするなら米と一緒に炊いた赤飯か、南瓜かぼちゃなどと合わせて煮物にしたり……。そんなのしか思いつかないですね」

 他にも何かあったかな……そう考えつつ、別の方法で民間に広めるやり方に気がついた。


「市民に浸透しにくいのなら、神殿で流行はやらせるのはどうでしょうか。女神が小豆を使った料理や甘味を食べていると知られれば、神殿内での料理にも小豆を使った物が出されるようになるでしょうし。そうした噂を市民にも流せば、小豆を使った独自の料理が作られるかもしれません」

「なるほど。それはいい発想ですね。さっそく試してみる事にします」

 女神は即断即決の人のようだ。


「実は私。よもぎを入れた餅に甘いあんこを乗せた菓子が好きになりまして、よく食べているんですよ」

「それなら神殿内に広がるのもすぐかもしれませんね。……以前に食べさせてもらったような餅の中に餡を包む形のお菓子だと、見栄えもいいですし、手に取りやすいでしょう」

 俺はついつい余計な事を言ってしまう。

 できればこちらの人の創意工夫で、新たな料理を生み出して欲しいのだ。



「──ところで、小豆を使ってお菓子を作る予定ですか?」

「え? ええ──、胡麻の風味を加えた餡を蒸しパンで包んだようなお菓子を作ろうと思って。元々は中身の具材は肉や野菜などを使った料理なんですが、冬場はこのあんまんが食べたくなるんですよね……」

「胡麻餡……美味しそうですね」

「本当はアリエイラ様にも振る舞いたいところですが……、さすがにあんまんを持って来る訳にもいきませんから」

 そう言うと、彼女は何やら考え込む。


「旅団宿舎に来たらいけませんよ」

 俺は溜め息混じりに言う。


 あまり表沙汰おもてざたにはなっていないが、一部からは「あそこの旅団には何故か神々が足を運んでいるらしい」などという噂が立っているとか。

 火の神や地の神の馬車が、宿舎の前に止まったのを目撃した者が居たのだろう。


「ああ──それについて管理局から、神々の象徴しょうちょう武具を造る特別な錬金鍛冶師が居るのだ、という発表をする事を考えているみたいですね。ウル=オギトがあなたに象徴武具の作製を依頼したのが始まりだと言うので、あちらが先導して事に当たるつもりのようです」

 そんな裏話を聞いたところに神官がやって来て、小豆を送り届ける準備が整った件と、アリエイラが奥神殿のさらに奥にある湖で儀式をする時間が来たと告げるのだった。

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