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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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ウンディードでアリエイラと

 水の都ウンディードの歩道には大勢の市民が行き交っていた。

 馬車の停留所から見える街並み。

 ここの人々は物静かで、フレイマやゲーシオンの様な活気はないが、黙々とそれぞれの仕事に取り組んでいる姿が見られる街だ。


 神殿の方に向かうと、そこには二人の神官が周囲を気にするようにきょろきょろと見回していて、こちらに気がつくと早歩きで近づいて来た。


「オーディスワイア様ですか?」

 同じ日に似たような経験をした俺は半笑いを隠して「そうだ」と返事をする。

「アリエイラ様があなたをお招きしています」

 そう言って問答無用で連れて行こうと先導する二人の少女。

 彼女らに従って行くと、神殿の裏手にある森に案内された。


 森の入り口まで来ると彼女らはその森の手前で立ち止まり、先へ行くよう訴えてきた。

 森の中にある道を通り、奥神殿に向かう。

 白に青い色が浮かぶ壁。その建物のドアを叩くと、ドアは自然と開かれた。

「お久し振りですね」

 室内に居たのは女神アリエイラ。──まだ午前中にもかかわらず、男性的な特徴を持つ姿にはなっていない。

「ご無沙汰しています」

「まずは中へ入って」

 少女の姿をしたアリエイラは可愛らしく手招きする。


 そういえばここに来るのもずいぶん久し振りだ。

 水晶で出来た腕輪「水の護符」を持って来ていたのだが、無駄になってしまった。これがあると女神に会う事が許されるのだが。

 室内に入るとテーブルを囲む椅子に腰掛けるよう促され、俺は彼女に従って席に着く。


「今日来たのは、復調した報告を」

「知っています。この後シャルファーに行くのでしょう? けれどそろそろ昼食の時間。よければ簡単な料理を用意させますが?」

 一緒に食事を。という誘いを受け、俺はこころよ承諾しょうだくする事にした。



「私の力では、あなたの肉体を維持するくらいしかできませんでした」

 と、アリエイラは言った。

 俺が昏睡こんすい状態になっていた時に治療をしようとしたのだが、肉体の維持に協力するくらいしかできなかったと言う。


 人間の体の七割は水分から出来ている。それを利用して、体の調整をしてくれたらしい。水の精霊であった彼女には、人間の肉体に干渉かんしょうするような技術は本来、持ち合わせてはいないはずだ。


「助かりましたよ。それでなくても仲間達には迷惑を掛けてしまいましたからね」

「皆、懸命にあなたを支えてくれたようですね」

 アリエイラはそう言うと、改めてパールラクーンでの働きをねぎらってくれた。

「フォロスハートの友邦となり得る唯一の大地ですから。やはり彼らの危機には手を差し伸べなければ。──けれど、それであなたを失う訳にはいきません」彼女は不満を口にする。

 友邦の為とはいえ、何かを失うというのは耐えがたい。そんな言葉を口にする。


「幸いあちらの女神の力であなたを失わずに済みましたが……、もうあんな想いはごめんですよ」

 今にも泣き出しそうな女神を見て、俺は謝罪した。

 仲間の為とはいえ、誰かを悲しませるような事になるとは。……いや、それこそが戦いというものの本質なのだろう。

 傷つき傷つけ合うなど、本来ない方がいい。

 それでも悪意を持つ者や侵略者などに対して、反撃しなければならない時もある。

 自らの意志で戦いを選ばなければならない時が。


「命を持つ者はいつかは死ぬものです。

 それでも懸命に生きようと、時には戦わざるを得ないのも人の生。どうかそれを見守っていて下さい」


 そんな話をしていたところへ食事が運ばれて来た。

 神官達が運んで来た料理は、ウンディードで育てられている食材がふんだんに使われたものだった。

 水玉葱みずたまねぎはいかにも産地直送といった感じで瑞々(みずみず)しい。

 湖でれる魚や貝を使った汁物スープ

 木の実に果物。

 そして芋餅いももちに似た物が出された。


 丸いパンは完全に付け合わせ程度しか無く、中心メインとなる一皿の無い、質素な食事だった。

 何故か女神は食事を取らず、俺が食べるのを見守る格好になる。

 どの皿も料理も素材の味が濃く、風味豊かな──全体的に調和が取れた料理だった。


「なんだか精進しょうじん料理みたい……」

 ぼそりとつぶやいた俺に、女神はにっこりと微笑ほほえむ。──どういった意味の笑顔なのだろう……

 そんな事を思いつつ、出された料理に舌鼓したつづみを打った。

 少しばかり緊張しながら、女神の──何故か楽しそうな視線を向けられながらの食事を終えたのである。




御馳走様ちそうさまでした」

「はい」

 アリエイラは──まだにこにこしている。

「お口に合ったなら良かったです」

「どれも風味が強く、味が濃い感じでした」

「そうでしょう──!」

 気づきましたか。という感じで彼女は目を輝かせる。


「湖に棲む貝や魚に与える餌を変え、植物に与える水を変え。より生命力の強く味の濃い食材が手に入るようになったのです」

 どうやら女神自身も、水の性質を変えて栄養豊富な「恵みの水」を生み出し、川から湖に流す事に尽力したらしい。


「ウル=オギトの力も借りているのですが」

 と女神は付け足した。

 大地の栄養が溶け込んだ水が山から海に流れるように、二柱ふたはしらの神が協力して大地の恵みを育てられるようになったのだ。


 これは我々も頑張らなくてはならないだろう。

 愛だけが人々の生活を豊かにするのだと、女神の行動から──そう思えたのだった。

大晦日ですか。(早いなぁ~)

来年もよろしくお願いします。

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