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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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ゲーシオンでウル=オギトと

 西海の大地での要件を済ませた俺は、双神と別れてすぐにフォロスハートに繋がる吊り橋を渡った。

  混沌こんとんの上をまたぐというのはどうにも慣れないものだった。──混沌によって何度も死にかけたのが、精神的外傷トラウマのような感覚を俺に与えているのだろう。

忌々(いまいま)しい奴。いつかお前らをぶちのめす武器を作ってやるからな」

 橋を渡りながら俺は足下の混沌に悪態を吐く。


 吊り橋を渡った先に馬車の停留所があったが、それはどうやら海産物を運び出す荷車用の停留所であるらしい。

「乗せてくれませんか?」

 荷車に乗ろうとしていた御者ぎょしゃに声を掛けると、市民の男は俺の顔を見て驚いた様子を見せる。

「あんたは……以前ここで、いかつい賢者に紹介されていた──()()()()じゃあねぇか」


 英雄⁉ ──そんな話に作り上げられているのか。俺は否定しようとしたが、御者のおっちゃんは気の毒そうな顔をしてから、うんうん、という感じでうなずき始める。


「無事だったんだなぁ、あんさんがパールラクーンの犬亜人ババルド討伐に参加して、そこで傷つき倒れたと聞いたもんだから、ペルムの連中も心配していたもんさ」

「心配させて申し訳ないです。。──ですが見ての通り、こうして復帰しました」

「ペルムにいるおいらのダチ公は、あんさんの旅団に()()()()()()()らしく、えらく心配していたさ──」

 娘……たぶんウリスの事だろう。


「ああ、それより、どこまで乗っけてってほしいんだい?」

「ゲーシオンまで」

「ああ、それならちょうどいい。そこに塩を運びに行くところさぁ」

 そう言って「乗った乗った」と荷台に乗るよう身振り手振りで示してくれる。

「ありがとう」

 荷台には塩が入った木樽きだるが二つ、大きな木箱が一つ乗せられているが、まだ空きがあったので、余裕を持って荷車で移動できた。


 移動の最中御者のおっちゃんは、パールラクーンでの戦いについて聞きたがり、俺はかなりの部分をはしょりながら、自分が倒れた場面をなるべく誤解を生じさせないように説明し、そうしながらゲーシオンまで辿り着いたのだった。




「ありがとう、助かりました」

「なんの、なんの」

 気の良いおっちゃんは馬を歩かせると、荷車を細い路地の方に向かって走らせる。

 街にあるいくつかの倉庫に塩などを届けに行ったのだ。


 御者と別れた俺は荷物を肩に背負い、神殿に向かって歩き出す。


 神殿に向かう途中の大通り沿いの歩道を歩いていると、何やら豪奢な装飾を施した馬車が道の脇に停められていた。

 どうやら神殿の馬車であるらしく、護衛や神官。それに見覚えのある巫女の姿もあった。

 ──その白い法服を着た女は、ねずみの姿をした地の神ウル=オギトの通訳の巫女アロエだ。

 彼女はこちらに気がつくと頭を下げて、俺が近づいて来るのを待っていた。


「お久しぶりです」

「ああ、久し振り。どうした馬車の前で突っ立って」

「あなたが来るのを待っていたのですよ」

 彼女はそう言うと、馬車のドアを開けて中に乗り込むよううながす。


 大きな馬車に入り込むと、向かい合う座席の一方に、黒い法服を着た巫女の膝に乗せられた、銀色の鼠が座布団に乗って座っていた。

「久し振りっちゅね」

 馬車に乗り込んだアロエが座席に座ると、「ちゅぅ」と鳴いた銀鼠の言葉を通訳する。……相変わらず語尾に「ちゅ」を付けてしゃべってくる。

 そんな彼女はやはり真顔だった。


「この後は暇っちゅか?」

「いえ、この後はウンディード、その後にシャルファーに行く予定です」

「そうっちゅか。なら手短にするっちゅ。本当は迎賓館げいひんかんの方で迎えるつもりだったちゅが」

 申し訳ありませんと伝えると、銀鼠が手をぷらぷらさせた。──すると馬車がゆっくりと走り出す。


「お前の旅団──『金獅子の錬金鍛冶旅団』が、遠征の為の拠点を探そうとしていると聞いたっちゅ。そこでゲーシオンにある管理局から空き家の情報を聞いておいたっちゅ」

 そう喋りながらアロエが数枚の紙を差し出してくる。

 それはゲーシオンの地図と、建物の情報が書かれた物だった。

「いくつかある中、これはという物件をこれから紹介するっちゅ」

 しばらく馬車に揺られていると、細い路地に入った所で馬車が停車する。

「ここが一番のおすすめっちゅね」




 ──────こんな感じで、通訳を介しながら二つの建物を紹介されてしまった。

 どちらの建物も外観しか見る事はできなかったが、小さな庭付きのしっかりとした建物だった。


「まさか神様から不動産屋の真似まね事をされるとは思いませんでしたよ」

 そんな俺の言葉を笑い飛ばすウル=オギト。

「お前の旅団がゲーシオンの転移門を冒険するのは望むところっちゅ。物件は管理局の方で押さえてもらっているっちゅから、なるべく早く拠点を決めるっちゅよ!」

 と、銀鼠は俺を馬車の停留所に降ろして行ってしまう。

 俺が意識を取り戻した事について説明する機会すらなかった。


 ここから次の目的地、ウンディードに向かう馬車を探す事になったのだった。

各都市から拠点の話を吹っかけられる──

オーディスワイアには旅団、鍛冶屋、管理局からの依頼(神騎兵の武器開発)など、多数の仕事が山積みに。

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