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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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フレイマの街で再会を

旗日、という言葉を聞いたとき「最近はそんな言葉使いませんよ」などと言ったこともあったが、具体的にはその言葉の意味を知らないなぁ、と思ってちょっと調べてみた。

本日は勤労感謝の日。

 翌日、俺はすぐにミスランをでて、火の神の座す都市フレイマに向かう馬車に乗った。神に会う為の支度をしてからフレイマの街に向かうと、クラレンスを通過して──レーチェの実家がある場所だ──あっと言う間に馬車はフレイマに着いた。


 神殿前には歩いて行こうと考え、街の入り口で馬車を降りる。

 久し振りに降り立った街中には武装した冒険者の姿も見え、意気込んで転移門に向かう若者達を多く見かけた。──相変わらず活気に溢れている街だ。



「おや、あなたは」

 そう声を掛けてきた奴が居て、俺は振り向く。

「ん? ぁあ──ええと……」

 それはユナとメイが所属していた旅団の団長だった。

「『あか陽炎かぎろいの旅団』の団長──アブサウド。だったか?」

「ええ。お久し振りですね」

 アブサウドは私服姿で立っていた。

 朱色の強調部位アクセントのある黒い上着を着た彼は、武器も持たずに道端に立っていた。──まるで待ちぼうけを食ったみたいに。


「なんでこんな場所で突っ立っていたんだ?」

 思わず俺は疑問をそのまま口にしてしまう。

「え? ──ああ、実はここ……」

 そう言ってアブサウドは、通りに面した小さな二階建ての建物を指し示す。

「ここはうちの旅団の持ち物でしてね。──ところが最近、管理局の方から通達が来まして、旅団規模の均一化を計りたい、との事で」

「え? そうなのか? 具体的にはどんな内容を言っていた?」

「旅団が所有する物件と旅団員の数。あとは人材の能力評価ですか。これはだいぶ曖昧あいまいな感じでしたが……」

「なるほど──で、この建物がどうしたんだ?」

 そう言うと彼は困った様な顔をする。


「ええ、実は団員がこれからも増えるだろうと考えて、この建物を新しい旅団宿舎として購入したのですが……」

「ああ、なるほど。管理局からの要望があって、宿舎として使えなくなった訳か」

「ええ、そういう事です」

 俺は少し考え「それなら素材置き場や、旅団専属鍛冶工房として利用するのは?」と訴えた。

「それも考えたのですが──まあすでに、素材置き場も鍛冶屋も旅団にはあるので」

「そうか」

 そう返事しながらなんとなくひらめいたものがあった。


「……なら、うちの旅団で買い取ろうか?」

「え?」

「実はそろそろうちの旅団も、遠征用の拠点を用意しようかと思っていたんだ」

 するとアブサウドは考え始めた。

「そうですね……最近勢いのある『金獅子の錬金鍛冶旅団』がフレイマに拠点を持つとなれば、うちの団員も少しは緊張感を持って冒険に向かえるかもしれませんね」

 などと言う。


「なんだ、まだ旅団内で揉め事でも起きたのか」

 ユナと「朱き陽炎の旅団」の団員が起こした騒動で、火の神ミーナヴァルズによる「裁定の場」でのやりとりがあった事を思い出させると、彼はまた困った様に笑う。

「いや、あの時ほどではありませんが。まあ、ちょっとですね……」

 そう言い渋っていたが、どうも若手の冒険者と中堅以上の冒険者との収入格差が問題となり、ちょっとした揉め事が起きたらしい。

「うちではそんな事は起きていないが……注意しないといけないかもな」

 新入りが増えた分だけ新たな問題が発生する危険がある。朱き陽炎の旅団での出来事は対岸の火事ではないかもしれない。


「それはさておき、この宿舎を金獅子の錬金鍛冶旅団で購入してくれると言うのなら、ぜひお願いしたいところですね。内輪揉めしている場合じゃないんだと、そういった切っ掛けになるかもしれませんし」

「外部の旅団が参入して来たからといって、緊張感を取り戻すかは疑問だなぁ」

 そんな事柄について話し合ったが、具体的な内容については語らずにその場は別れた。

 一応アブサウドからは「この話は保留という事で、いずれ機会がありましたら、管理局を通してでもお話をください」と、宿舎の売買を押さえておくと言ってくれた。




 アブサウドと別れると、通りを歩いて神殿の方へと向かった。

 歩道を歩きながら散歩気分でいると、道の先から歩いて来た神官に呼び止められた。


「オーディスワイア様でしょうか?」

「え、ああ……そうだが」

 これは……前にもこんな事があったような。

「ミーナヴァルズ様がお呼びです」

 若い神官が言った。

 俺は肩をすくめて「分かった」とだけ言うと、神官と共に神殿へと向かう事になった。

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