若手冒険者の育成と研究開発
名前すら書かれない旅団の仲間も居ます。
わざとですよ(笑)
大所帯になってきたな──くらいの認識をもってもらえれば。
しばらく訓練と研究の日々が続いた。
転移門先でも通信を可能にする新たな技術開発の合間に、戦闘用義足をさらに実用的な物に改良する為の試行錯誤を加える。
訓練で新たな義足を披露すると、以前の板バネだけの義足よりも見た目が足っぽくて好評だった。
この義足を付けた俺と闘ったリトキスが言うには「これで冒険に復帰できますね」、という事だったが、俺は現役復帰には後ろ向きな反応を返してしまう。
今更以前の様に戦えるかと言ったら、決してそうではない。
伸び代の無くなった男が冒険に戻っても、たぶん大した役には立てないのだ。
それなら後進を育てた方がフォロスハートの為になり、意義深い。
フォロスハートに最も必要なのは、今後の世界を生き抜く若者たちの成長だからだ。
だからリトキスの言葉を俺はあっさりと躱して、以前加入した新米達の相手をする事にしたのである。
最近入った三人より少し前に、別の三人が加入していたが、はっきり言って彼らの実力はイマイチなのだ。
今回加わったセブ、アマン、ブーリットの三名は、若手の中でもかなり優秀な面子だったのだと思われた。
管理局から任されたこの三名は、どうも管理局上部の──具体的には黒獅子ヴォージェスの計らいであるようだ。
彼ら三人の才能を見て取った者が居て、その能力を短期間で伸ばすにはどこの旅団に任せるのがいいか。そんな検討がなされたらしい。
管理局員と交友関係があるリトキスから聞いた話だが。
俺はそうした事を考えながら、まだまだ未熟な技能しか持たない冒険者候補を相手にする。
木剣や大剣型の木剣を手にして、相手の得物によって対応を変える必要がある事を、一から教え込む。
このど素人達はやる気はあるのだが、いかんせん運動能力が低い者が多かった。
まず多くの者が身体が固いのに、筋力も無い。
筋肉があって身体が固いならまだ分かるが、今のままでは金属の胸当てを着けて行動していたら、一時間でへばってしまうだろう。その程度の筋力しか無いのだ。
「基礎訓練を続ける事だ」
ともかく体力と筋力を平行して付ける事を提案した。
新米の訓練を若手のニオに任せ、どうすれば新米が成長できるかを、身近な経験者から語ってもらう事にする。
物事を行うに当たって大切なのは、本人の「やる気」だ。
これがなければ、いかに素質や才能があっても仕方がない。
むしろやる気さえあれば、なんでもでき……
「はっ」
俺は気づいてしまった。
「やる気があれば、なんでも出来る!」
さすがに「元気ですか」とは口にしなかったが、若手の冒険者達にそう声を掛け、ぽかんとする彼らを放って別の場所に向かった。
俺自身の訓練もしなければならない。
訓練を終えると、転移門先でも使える新しい送受信機の開発に入った。
転移門を越えて繋がった情報を元に、さらに安定した結果が得られるよう術式に手を加える。
転移門の構造を理解し、その転移の力に合わせた波長を作り出し、向こう側とこちら側を繋げるのだ。
それは言葉で言うほど簡単な構造ではない。
何しろ空間を越えた二つの領域を繋ぐ力と合わせるのだ。──この神の力を正確に解明するのは、今の俺には出来ない事柄だったが、幸いにも、この転移の力に同調する波動を流し、複雑な秩序機構を解明する事なく、秩序機構の合間に入り込んで利用する事ができたのだ。
「小狡い手ではあるが、通信手段を確保するだけならこの手法以外に考えられないな」
こうして大本の機構は完成した。
この核となる部分には神貴鉄鋼と神結晶を使うと安定するが、偵察機などの機体部分には軽硬合金などで問題はない。
送受信を可能にする内部構造には貴重な二つの素材を使用するが、その他の部分には通常の金属で構わないのだ。
「よしよし、これでいいかな」
研究室で物が完成すると、それを確かめに転移門に向かう。──もちろん管理局の許可を得て、管理局員も同行してもらった。
「完成ですね! おみごとです!」
と、若い職員は喜んでくれた。
「量産と改良は管理局に任せるよ。それじゃぁ、メリッサによろしくな」
俺はそう言うと、その試作機をメリッサに届けるよう頼んだ。
これで一つの仕事が完了した訳だ。
後は──
そうだ。レーチェとの一戦があるのだ。
だがその前に、いくつかの神様に会いに行かなければ、そう考えた。
「地の化身エウシュマージアに聞きたい事もある」
転移門「緑の島と海の大地」についてと、後は他の大地に眠る神の力に干渉する方法について、詳しい話を聞いておきたい。
もしかするとなんらかの着想を得られるかもしれない。そんな期待を持っている。
帰りに水の都ウンディードに行き、女神アリエイラにも会っておこう。──火の神にも顔を出した方がいいか……
そう考えつつ宿舎に戻って行った。




